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第39回 英文法の参考書を訳してみよう(2)〜技あり! 機械翻訳達人への道

機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。

第39回 英文法の参考書を訳してみよう(2)

【今回の例文】

Ageism
Ageism, also called age discrimination, is described by the World Health Organization (WHO) as “stereotyping, prejudice, and discrimination against people based on their age”.

Quick Tips:
− Don’t use women or an older relative as a substitute for ‘novice’ or ‘beginner’. For example, don’t say “something is so simple to use your mother (or grandpa) could do it”.
− ‘Older persons’ or ‘seniors’ are usually preferred terms over saying ‘the elderly’.
− Avoid negative terms such as ‘over the hill’, ‘little old lady’, ‘grandfathering’, ‘fogey’, or ‘geriatric’.


(出典:Inclusive Language: A Writing Guide on Respecting Diversityより一部抜粋)

【機械翻訳】

エイジズム
エイジズムは、年齢差別とも呼ばれ、世界保健機関(WHO)はこれを「年齢を理由とした固定観念、偏見、差別」と定義しています。

ちょっとしたヒント:
「初心者」や「初級者」の代用として、女性や年配の親族を例に挙げるのはやめましょう。たとえば、「お母さんや(おじいちゃんでも)できるくらい簡単なもの」などと言わないようにしてください。
「高齢者」や「シニア」という言葉は、「お年寄り」という言葉よりも好ましい表現です。
「老いぼれ」、「お婆さん」、「おじいさん」、「老いぼれ」、「老人」などのネガティブな表現は避けるべきです。


(DeepL翻訳)

【修正後】

エイジズム
「エイジズム」とは年齢差別を意味し、世界保健機関(WHO)によると「年齢に基づいた固定観念、偏見、差別」と定義されています。

役立つヒント:
novice(初心者)やbeginner(初級者)の代用として、女性や年配者を例に挙げるのはやめましょう。たとえば、「お母さん(または、おじいちゃん)でもできるくらい簡単なもの」という言い方は避けるようにしてください。
the elderly(お年寄り)は、older persons(高齢者)やseniors(シニア)に置き換えた方が好ましい表現になります。
over the hill(老いぼれ)、little old lady(お婆さん)、grandfathering(既得権を認める)、fogey(老いぼれ)、geriatric(老人)などのネガティブな表現は避けましょう。

英文法とは少し違いますが、「ダイバーシティとインクルージョン」を考慮した英文ライティングの参考書から「エイジズム」の項目を取り上げました。

今回のポイント✅

① Ageismとは?
ageismとはage(年齢)+ism(主義)を合わせた造語で、年齢による偏見や差別のことです。「エイジズム」と訳され、日本語としても定着してきているでしょう。○○+ismの組み合わせで代表的なものに、人種差別を意味するracism(race+ism)があります。近年では、見た目で人を判断したり、容姿に基づいて差別したりする「ルッキズム(lookism)」もよく目にします。

② the elderly、older person、senior……どの言葉を使うべき?
例外的な措置ですが、今回は「日本人向けに訳された英作文の参考書」と位置付け、原文の英語はそのまま残すことにしました。the elderlyには多少、差別的な意味合いが含まれるようで、older personやseniorに置き換えることが推奨されます。

③ grandfatheringの使用には特に注意
grandfatherが動詞になると、「既得権を認める」「特例として免除・除外する」という意味になります。語源は南北戦争にまでさかのぼり、黒人の投票権をはく奪し、白人には特例を認めるという人種差別に根差した表現ですので、使用は避けた方がよいでしょう。

まとめ

英語、日本語を問わず、「言葉は生き物」といわれるように、時代に即したマナーが求められます。知らずに差別用語を使ってしまうことのないように、語彙のアップデートに努めましょう。

シュレーゲル 京 希伊子
フリーランス翻訳家・通訳。外務省派遣員として、92年から95年まで在シアトル日本国総領事館に勤務。日本へ帰国後は、政党本部や米国大使館で外交政策の調査やスピーチ原稿の執筆を担当。キヤノン元社長の個人秘書、国連大学のプログラム・アシスタントなどを経て、フリーに転身。2014年からシアトルへ戻り、一人娘を育てながら、 ITや文芸、エンタメ系を始めとする幅広い分野の翻訳を手がける。主な共訳書は、金持ち父さんのアドバイザーシリーズ『資産はタックスフリーで作る』など。ワシントン州のほか、マサチューセッツ、ジョージア、ニューヨーク、インディアナ、フロリダにも居住経験があり、米国社会に精通。趣味はテニス、スキー、映画鑑賞、読書、料理。