機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。
【今回の例文】
So here I stand… one girl among many.
I speak – not for myself, but for all girls and boys.
I raise up my voice – not so that I can shout, but so that those without a voice can be heard.
Those who have fought for their rights:
Their right to live in peace. Their right to be treated with dignity. Their right to equality of opportunity. Their right to be educated.
(出典:マララ・ユスフザイ、2013年国連本部にて)
【機械翻訳】
私はここに立っています…多くの女の子の中のひとりです。
私は自分のためではなく、全ての女の子と男の子のために話します。
私が声を上げるのは、私が叫ぶためではなく、声のない人たちが聞くことができるようにするためです。
自分の権利のために戦ってきた人々。
平和に暮らす権利。尊厳をもって扱われる権利。機会の平等を得る権利。教育を受ける権利。
(DeepL翻訳)
【修正後】
ですから私は今、この場に立っています。多くの少女のひとりとして。
私は声を上げます。私自身のためではなく、全ての少女と少年のために。
私は声を上げます。私の主張を聞き入れてもらうためではなく、声なき人々の声を届けるために。
平和に生きる権利。尊厳をもって扱われる権利。機会の平等を求める権利。教育を受ける権利。そうした権利を求めて闘ってきた人たちのために、私は訴えます。
今回はパキスタンの女性人権活動家、マララ・ユスフザイさんのスピーチを取り上げます。2013年、わずか16歳で「全ての子どもに教育を」と国連本部から訴えたマララさん。翌年、史上最年少でノーベル平和賞を受賞します。マララさんの力強いメッセージと格調の高さを表現できるように工夫して訳しましょう。
今回のポイント
① 格調高い文体
今回ばかりは、機械翻訳の完敗です。通常の文体とは違うため、文章の流れがつかめなかったようですね。平易な表現ですが、非常に格調高く、リズムも良い文章です。日本語でも、聞いていて余韻が残るように訳せるといいですね。
②「声のない人が聞くことができる?」
「those without a voice can be heard」における機械翻訳の例は、誤訳です。can be heardですので、(自分たちの声が)「聞いてもらえる」、「届く」の意味になります。
③ スピーチに合わせた単語選びを
girlsとboysは、機械翻訳では「女の子」、「男の子」と訳されていますが、このスピーチでは「少女」、「少年」としたほうがふさわしいですね。また、shoutも「叫ぶ」ではなく、文脈上、「声高に権利を主張する」と捉えるのが自然でしょう。
まとめ
16歳という若さで、英語が母国語でないマララさんが、世界中の人々に教育の大切さを訴えました。言葉の持つ威力を改めて感じます。この力強さをぜひ訳文に反映させましょう。