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世界最大規模の国際交流 「JETプログラム」

世界最大規模の国際交流 「JETプログラム」

開始以来、40年近い歴史を刻むJETプログラム。日本で小中学校時代を過ごした方は、自分の学校に外国人の英語の先生がいた記憶があるのではないでしょうか。その先生こそ「JETプログラムの参加者」だったかもしれません。

在シアトル日本国総領事館
迫本洋子■
在シアトル日本国総領事館 教育/JETプログラムアドバイザー
Consulate-General of Japan in Seattle
701 Pike St. #1000, Seattle, WA 98101
☎206-682-9107
https://jetprogramusa.org

JETプログラムは、「語学指導等を行う外国青年招致事業(The Japan Exchange and Teaching Programme)」の略称です。総務省、外務省、文部科学省及び、一般財団法人自治体国際化協会の協力の下、地方自治体が実施しています。海外から青年を招致し、地方自治体や教育委員会、全国の小・中・高等学校で国際交流業務や外国語教育に携わることにより、地域レベルでの草の根の国際化を推進することを目的としています。プログラムの招致国と参加者は、1987年の初年度、4カ国848人で始まり、2024年度には51カ国861人が参加するまでに拡大しています。これまでに延べ80カ国7万9,000人以上が参加しており、国際的な人的交流として高く評価されています。
主な職種は、外国語指導助手(ALT:Assistant Language Teacher)と国際交流員(CIR:Coordinator for International Relations)の2つです。ALTは教育委員会や小・中・高等学校等で外国語教員を補助し、CIRは地方公共団体で国際交流の企画運営や翻訳業務を担当します。また、スポーツ国際交流員(SEA:Sports Exchange Advisor)という職種もありますが、上記2つの募集サイクルとは異なります。応募条件は国や職種によって異なり、ALTの場合、日本語能力は必須ではありませんが、CIRには実用的な日本語能力が求められます。アメリカから応募する場合、市民権を保持し、来日までに学士以上の学位取得見込みであることが条件です。
2024年7月 日本出発前のレセプションにて
JETプログラムは、さまざまな観点から意義のある交流プログラムであるといえます。JET参加者が母国の文化を日本のコミュニティーに伝えることで、日本の人々に他国との接点をもたらすだけでなく、参加者自身も日本語や日本の文化、習慣など多くを学び、母国で共有することが期待されます。当館管轄地域のJET参加者が日本に渡航する際のサポートを行う旅行会社の担当者も、このプログラムの影響を受けた一人で中学時代、JETプログラムで来日したALTの授業を受けたそうです。プログラムが始まった当初は現在ほど多くの参加者を受け入れていなかったため、県内の限られたALTが各学校を回って、「特別授業」を行っていました。当時はインターネットが存在しなかった時代。音声教材も今ほど豊富ではありませんでした。クラスメートは皆、外国人の先生と初めて触れ合う授業に心を躍らせ、その日に学んだジェスチャーや表現の全てが新鮮だったといいます。その経験をきっかけに彼女は英語に興味を持ち、現在はアメリカでJET参加者を送り出す側として活躍しているのですから、JETプログラムが生み出す国際交流の意義と広がりを物語っています。
また、JET経験者の多くが帰国後も日本での思い出やつながりを大切にし、同窓会組織JETAA(JET Alumni Association)の活動に積極的に参加しています。同じ地域で活動した経験を共有する者同士の絆は強く、そうした集まりではよく「JETでどこに行っていたか」という話題が頻繁に挙がります。同じ地域に派遣されていたことが分かると、一瞬にして打ち解け、ローカルな話題で盛り上がる場面もしばしば見受けられます。こうした交流の様子を見ると、現代のように人間関係が希薄になりがちな時代において、JETプログラムが「人と人をつなげる重要な役割」を果たしていることを実感します。
2024年10月 帰国後の歓迎会にて
当館でもJETプログラム出身者が現地職員として活躍していますが、皆とても優秀です。JETコーディネーターを務めるメーガンさんもその一人で、高知県でALTとして5年間勤務していました。大学時代に日本語を学び、来日時には日常会話程度はできたそうですが、JETプログラムでさらに日本語力が鍛えられたといいます。周囲に英語を話す人が少なく、日本語でコミュニケーションをとろうと努力を重ねた結果でした。また、メーガンさんが日本に滞在していた時期は、ちょうどコロナ禍と重なり、決して容易な環境ではなかったはずです。しかし、高知県の学校で撮影された写真を見せながら高知弁を交えて話す様子からは、温かいコミュニティーの中で充実した日々を過ごしたことが伝わってきます。もちろん、外国で生活し働くことは楽しいことばかりではないでしょう。JETプログラムは留学とは異なり、フルタイムの仕事です。日々、文化や習慣の違いに直面し、その違いを受け入れ理解し、時には困難を乗り越えなければならない場面もあるかもしれません。しかし、そうした経験こそが何よりも得がたい財産となります。JETプログラムを終えた後のキャリアや人生においても、異文化の中で培った柔軟性や適応力は、大きな強みとなることでしょう。

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