シアトルの留学生を紹介
今回は異なるバックグラウンドを持つ2人にインタビューを行いました。2人が利用した株式会社ICCコンサルタンツのIBPプログラムは、9カ月間の留学と最短3カ月間から最長1年間の現地企業でのビジネスインターンシップを組み合わせた内容です。ワシントン州ではワシントン大学、シアトル・セントラル・カレッジ、ベルビュー・カレッジの3校と提携し、留学生活やインターンシップ獲得をサポートします。 主な留学制度である交換留学(学生を相互の学校に一定期間、派遣する制度)や認定留学(留学先の大学で取得した単位が在籍大学の単位として認められる制度)との大きな違いは、「米国でのインターンシップの機会があること」「社会人でも参加可能」なことです。
「International Business Professions Program」の略で、国際的な視点を養いながらビジネススキルを身に付けグローバルな職場で即戦力として活躍できる人材の育成を目的としたプログラム。
今田偲温さん(ウェブ限定全文バージョン)
「情熱を持って働く人を増やしたい」そんな思いを胸に、夢を追いシアトルへ。留学での経験を通じて見つけた新たな視点と成長の軌跡。紙面では紹介しきれなかった今田さんのインタビューの全編です。
Q:なぜIBPプログラムを利用して留学しようと考えたのでしょうか?
A: A:理由は主に3つあります。
1つ目は、高校の修学旅行で訪れたパラオでの経験です。パラオは第一次世界大戦開始から第二次世界大戦終了時までの31年もの間、日本の植民地でした。そのため、「パラオに住んでいる人々は日本に対して好ましくないイメージがあるのではないか」と考えていました。しかし、いざ現地に足を踏み入れると、その想像とは裏腹に友好的で驚きました。現地の人に日本から来たと伝えると「一緒に写真を撮ってほしい」と頼まれることもあり、敬意さえ感じたほどです。この「固定観念と現実とのギャップ」がその後の人生のターニングポイントとなりました。
2つ目は、幼少期の経験に由来する「夢」を実現したいという思いです。医療従事者の両親は多忙で、仕事に対しての愚痴をよくこぼしていました。そんな両親は私に「給料や福利厚生などの制度が充実していて休みがしっかりととれる会社を選びなさい」と、いわゆる「安定した道」を勧めました。子どもに自分と同じような大変な思いをさせたくないという親心があったのだと思います。しかし大学に入り、アルバイトやインターンシップで安定した道とは真逆を行く「好きなことに情熱を持って働く人々」と出会い、考えが変わりました。特に印象的だったのは大学1 年次から始めた議員事務所でのインターンシップです。そこでお世話になった人は人材系の会社を経て、議員の道を歩んでいました。常日頃から自分が成し遂げたい夢を語り、懸命に働く姿に感銘を受け、そのような人々を増やすサポートをし、ひいては日本の成長に貢献したいと考えるようになりました。幼少期に見た両親の姿とインターンシップで出会った議員の働く姿が相まって、「日本中に情熱を持って働く人を増やす」という夢へとつながりました。この思いから、日本での就職活動では人材会社を中心にエントリーしました。しかし、多くの社会人と接する中で、その夢を叶えることが想像以上に難しいと気づかされました。実際、自分と似たような夢を抱きある人材会社に入社した大学の先輩は、わずか3カ月目で「想像と違った」とのギャップを理由に離職してしまったのです。この出来事は、就職活動中だった自分にとって衝撃でした。さらに、当時目にした新聞記事も、それに追い打ちをかけました。その記事には、アメリカの調査会社によるレポートが引用されており、「日本では仕事への熱意や職場への愛着を示す割合がわずか5パーセント」というデータが示されていました。自分が掲げた夢との大きな隔たりを感じ、日本だけでなく海外の働き方を知ることで、解決策が見出だせるのではないかと考えるようになりました。具体的には、「アメリカではどのような働き方をしているのか?」「キャリアに対してどう考えているか?」といったことを知りたくなったのです。
3つ目は、IBPプログラム参加者の多様なバックグラウンドに魅力を感じたことです。このプログラムには現役大学生だけでなく、社会人経験者も多く参加しています。同世代が何を考えているかも重要ですが、多様なバックグランドを持った人々と時間を共有することは自身のキャリア構築にも良い影響を与えると考えました。 自然体験ツアーに参加したときの様子。参加者と談笑する今田さん
Q:シアトル・セントラル・カレッジの講義やアメリカ生活全体を通して成長を感じたことはありますか?
A: 多様なバックグランドを持つ人たちと出会えたことです。アメリカ人をはじめ、他国からの留学生との交流を通して新たな価値観に触れることができましたし、日本人学生との出会いも大きな財産となりました。高校までは広島、大学時代は関西で過ごしていたため、これまで関東圏で育った人の考え方や価値観に触れる機会がほとんどありませんでした。シアトルに来て、「日本人でありながら異なる環境で育った人々」と交流したことで自分の視野が広がったと思います。また、シアトルに来て多くの社会で活躍する人々と出会う中で将来の夢から逆算して今するべき行動を考えるというアプローチではなく、「今、目の前にあることを全力でやる」ということの重要さにも気づきました。この姿勢は、自分の成長において非常に大切な教訓となっています。
Q:アメリカに来て困難だったことは? また、それをどう乗り越えましたか?
A: これはアメリカの話ではないのですが、12月にメキシコ南部にあるベリーズという国に1
人で旅行したときの体験が印象的でした。現地ではアジア人がほとんどおらず、人生で初めて「マイノリティ」としての立場を経験しました。周りはヒスパニック系や黒人、白人ばかりで、現地の人に声をかけるのにも勇気が必要でした。結果的には多くの人と友だちになることができたのですが、マイノリティとしての立場に置かれたときに自分がどのように振る舞い、行動すべきかを考えるきっかけになりました。とても貴重な体験だったと思います。
交流の深いシアトル在住の夫婦と
Q:アメリカで得たことを活かし、今後どのような道を歩んでいきたいですか?
A: インターンシップ後の進路についてはまだはっきりと決まっていません。ただ、自分の夢である「日本中に情熱を持って働く人を増やす」という目標は変わっていません。その夢の達成には、ヒューマンリソースに関する知識だけでなく、マーケティングなどの幅広い知識も重要だと考えています。将来から逆算して考えるのではなく、今この瞬間にある目の前のことに全力で取り組む。その積み重ねが最終的に自分の道を切り開いていくことにつながると信じています。
櫻井龍一さん
Q:櫻井さんは、大学卒業後に保険業界で5年間働いたあと、留学という道を選びました。なぜ留学しようと考えたのか、また、ワシントン大学に決めた理由は?
A:元々、海外で働くことに興味があり、いずれマーケティング関連の職に就きたいと考えていました。ワシントン大学のプログラムは提携校の中でもマーケティングに特化していることが決め手となりました。
Q:ワシントン大学の講義やアメリカ生活を通して成長を感じたことはありますか?
A:ワシントン大学では期待通り、マーケティングに関する知識を得ることができました。特に、実在する企業を題材に海外向けのマーケティングプランを考えプレゼンテーションする講義は、実践的で非常に役に立ちました。また、グループワークが充実しており、アウトプットの機会が多かった点も魅力でした。大学の外ではミートアップやネットワーキングイベントに積極的に参加し、インターンシップ情報を得るなどキャリア形成につながる経験が多くありました。
Q:アメリカで困難だったことは? また、それをどう乗り越えましたか?
A:やはり、語学力です。特にスピーキングに苦労しました。言いたいことをうまく表現できずミスをして恥をかくこともありましたが、その失敗が原動力となり、日々の勉強に一層力を入れるようになりました。その後は積極的にネイティブスピーカーとのミートアップに参加し、英語を話す機会を自ら増やし語学力に磨きがかかるよう努力しています。
Q:アメリカで得たことを活かし、今後どのような道を歩んでいきたいですか?
A:幸いにも、マーケティング関連のインターンシップを獲得できたので、ワシントン大学での学びを武器に、今後のキャリアに向けて充実した時間を過ごしていきたいと考えています。先のことは未定ですが、マーケティングの知識や観点は汎用性が高いため、このプログラムで得たことを活かし、次のステップを歩んでいきたいです。
シアトルの企業やコミュニティーで活動する人の中には、IBPプログラムの参加者と交流したことのある人も多いのではないだろうか。参加者は、インターンシップを通して実践的な経験を積むだけでなく、学校のイベント運営や地域のボランティア活動に携わりながら地域社会に貢献する。また、これらの活動の中でコミュニケーション能力を向上させ、多様な価値観を尊重する姿勢を学ぶことで知見を広げることも可能だ。このような「プログラムを通じたつながり」が地域社会に新しい視点や活力を与えているのかもしれない。