シアトル近郊の専門家たちが、悩み多きバイリンガル子育てについて回答。子どもと楽しむ、子育てのヒント。
Q. 子どもをどの園に行かせるべきか迷います。日本式の保育、アメリカ式の保育の違いを教えてください。
A. シアトルは日本語を取り入れた園が多く、いいとこ取りできる環境。親同士で話し合いを重ね、子どもに合った園を見つけましょう。
アメリカのプリスクールにはたくさんの選択肢があります。モンテッソーリ式、屋外の自然ベースの園、遊び中心の園、シアトルではサイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、算数に力を入れるSTEMプログラムを採用する園も多数あり、スクールによって方針はさまざまです。
毎年、日本の幼稚園の園長先生や保育士の方を対象にアメリカで講演する機会があるのですが、よく聞くのは「先生たちがのびのびと働いている」「日本のように形式的な固さがない」といった声。アメリカの個人主義がクラスにも表れていて、先生によってクラスの雰囲気が違いますし、職員室さえありません。
いろいろな人種の子どもたちが混ざった環境で、ひとりひとりの個性が尊重されることも、アメリカの園ならではの特徴だと思います。アメリカの幼稚園で働いた経験から感じるのは、子どもたちも先生たちも個性が尊重され、違いを大切にしながらクラスが運営されているという点です。個々の違いが大切にされるので、子どもたちの自己アピール力が自然に育っていきやすい環境になっています。
若い頃、日本の企業で働いていた際に、約50の園を訪問する貴重な機会がありました。日本の保育園や幼稚園では、社会性=集団で同じことができる、ということを大切にした園が多かったように記憶しています。
今の日本では朗読が流行中と聞きます。みんなで声に出して本を一緒に読むことが、気持ちをひとつにすると考えられているようです。礼儀や食育にとても力を入れているのも素晴らしいことだと思います。また、当番制で給食の配膳をしたり、掃除を分担していたりと、集団での協力体制がクラス内に組み込まれているのも日本ならではと言えます。各クラスにピアノを弾く先生がいて、一緒に歌を歌うのも日本的ですよね。
幸い、シアトルには日本語で学べる幼稚園や教室がたくさん。とても恵まれた環境だと思います。私もハワイからシアトルに引っ越して、その多さに驚きました。
園選びの際は、まず子どもをよく観察して特徴を把握したうえで、親同士で家庭の教育方針を話し合うことが先決。それから各園を見学し、ぴったり合うところを見つけるのがいちばんです。入園は順番待ちとなる人気の園も多いので、子どもが小さいうちに動かなくてはなりませんから、大変ですね。当園にも妊娠してすぐに見学に訪れる方がいるほどです。
ピカケスクールには英語、日本語の2クラスありますが、言語が異なっても体得していくスキルや目的は、身体のコーディネーション(連動運動能力)、知性の目覚め、自立心、自信など全く同じです。どちらの言語のクラスでも、子どもたちが勇気付けられる温かな言葉のシャワーをそれぞれの言語を話す教師が積極的に投げかけていくことを心がけています。幼児期のポジティブな体験や人間関係は、子どもたちの今後の人生における大切な自信という基盤になると信じています。
日本式とアメリカ式、それぞれの良さや特徴がありますので、園選びは家庭の教育観について話し合う良い機会だと捉えてみてはいかがでしょうか。可能性が無限大の子どもたちです。将来の学びに大切な姿勢、自己肯定感が育つ大切な時期、子どもにとって最適な園環境を選びたいですね。
教えてくれたのは
ピカケスクール
斉藤カルコーヴァン智美さん
慶應義塾大学文学部とシャミナード大学院幼児教育学科を卒業。ベルビューにある日本語と英語のバイリンガル幼稚園、ピカケスクール園長。日本では株式会社オリエンタルランドが経営するチャイルドセンターの立ち上げに携わり、プログラム・マネジャーを務めた。渡米後はモンテッソーリの教員としてハワイとシアトルで約10年間勤務。2017年夏にベルビューでピカケスクールを創立。
⬛️Pikake School
1250 112th Ave. NE., Bellevue, WA 98004
☎425-453-1881
www.pikakeschool.com