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これから必要とされるプログラミング思考とは

毎月数十点が出版され、「教養」「時事」「実用」と幅広い分野を網羅する日本の新書の新刊を通して、日本の最新事情を考察します。


┃これから必要とされるプログラミング思考とは

2020年から、小学校でプログラミング教育が必修になる。文部科学省が想定する「プログラミング教育」とは、「プログラミング言語や、それを用いてプログラムを作るプログラミング技術を教えるもの」(狭義の「プログラミング教育」)ではない、と強調するのが『プログラミング教育はいらない/GAFAで求められる力とは?』(岡嶋裕史著、光文社新書)である。

プログラミング教育はいらないGAFAで求められる力とは岡嶋裕史著光文社新書

著者は、最近話題のブロックチェーンなどの著書も多数ある、情報セキュリティーの専門家。一見、タイトルとは矛盾するようだが、プログラミング教育の小学校への導入自体には積極的な立場だという。必修化の主な目的は「プログラミング的思考」(広義のプログラミング教育)である、と文科省も明言している。

プログラミング的思考とは何か、プログラミング的思考を導入すれば論理的思考能力や問題解決能力が身に付くというがそれはなぜなのか、既存の教育では何が足りないのかを解説する。「GAFA」(Google、Amazon、Facebook、Appleの4 社)ではこれからどんな人材が求められてくるのかも予測しつつ、これからの学校教育のあり方を考える。

『その情報はどこから?/ネット時代の情報選別力』(猪谷千香著、ちくまプリマー新書)は、膨大な情報があふれる現代に必須な、「情報の海の泳ぎ方」を指南する。本書でも、まさに今世界中で問題となっているGAFAに触れる。GAFAとは、前述のように世界中で情報インフラの大きなシェアを占めているアメリカ資本のIT巨大企業のこと。多くの人がこの4社のサービスを毎日のように利用し、世界の膨大な量の情報は、このGAFAのインフラ上でやり取りされている。生年月日など基本的な個人情報から趣味、家族構成まで知られているにもかかわらず、「何も知らないまま」こうしたサービスを利用することに警鐘を鳴らす。

日々、空気のように周りを囲んでいるネットからの情報群によって、知らず知らずのうちに行動や考えを決められてはいないか。情報の海に溺れないため、自分に必要で、かつ正しい情報をどう選べば良いか。流れてきた情報を鵜呑みにせず、どれが、どこから、何のために発信されたものなのか、見極めることが大事と訴える。

ものすごいスピードで技術革新が進み、世の中は、より便利に、より速く、より効率的なものを求めるようになり、自動化、AI化の道を突き進ん でいくように思える。そうした流れがあるからこそ、これからは「不便益の時代」だと言う研究者がいる。『不便益のススメ/新しいデザインを求めて』(川上浩司著、岩波ジュニア新書)では、数値化できない、定量化できないものにこそ価値があるのではないか、という世の趨勢(すうせい)とは全く逆の発想を提示する。手間がかかったり頭を使わねばならなかったりする、だからこその益がユーザーにもたらされる。著者はそうした発想と、それを元にしたデザインを、「不便益デザイン」と呼び、世の中の不便だけど楽しい「不便益デザイン」を探して、勝手に「認定」したり新たな不便益デザインを考えたりしているという。

不便益のススメ新しいデザインを求めて川上浩司著岩波ジュニア新書

 

┃ ゲノム編集ベビーの誕生

ゲノム編集の光と闇人類の未来に何をもたらすか青野由利著ちくま新書

『ゲノム編集の光と闇/人類の未来に何をもたらすか』(青野由利著、ちくま新書)では、「遺伝子を狙い通りに切り貼りできる技術」として、ゲノ ム編集の利益と問題点を検証する。2018年11月、中国の研究者が「ゲノム編集した受精卵から双子の赤ちゃんを誕生させたと発表した」という ニュースは世界中に衝撃を与えた。人間を対象としたゲノム編集の安全性の問題、倫理的な懸念について今後本格的な議論がされようという矢先、突然の「ゲノム編集ベビー」誕生を発表した研究者は、世界中から批判を受けている。

著者は新聞記者で長く科学分野を専門に担当し、著作も多 い。ゲノム編集により、先天性の難病を受精卵の段階で回避することは技術的にはいずれ可能になるだろう。しかし、先天性の難病や遺伝性の疾患を根絶しようという発想が、優性思想とは違うと言い切れるのか、慎重に議論していくべきだとしている。

『科学と非科学/その正体を探る』(中屋敷均著、講談社現代新書)は、科学と非科学のはざま、「光」と「闇」の間のグレーゾーンに焦点を当てる。「科学的」なものと「非科学的」なものは、簡単に分けられるのだろうか。科学的な正しさで、現実の問題は何でも解決できるのだろうか。科学の万能性・絶対性が「無邪気に」信じられているような現代社会でこそ、科学と非科学のはざまの、複雑で曖昧な部分を考えてみることを勧めている。

※2019年2月刊行から

湯原 葉子
連想出版編集部が出版する ウェブマガジン「風」編集スタッフ。新書をテーマで連想検索する「新書マップ」に2004年の立ち上げ時から参加。 毎月刊行される教養系新書数十冊をチェックしている。 ウェブマガジン「風」では新書に関するコラムを執筆中。