ボランティアの盛んなシアトルでは、私たち日本人が参加できるイベントやプログラムがたくさんあります。今回は、日本語が生かせる日系団体のボランティアをしている方2人にインタビューしました。ソイソーススタッフのボランティア体験もご紹介します。
日系ボランティア団体 インタビュー
- アメリカの学校の子どもたちに日本を紹介する
日米協会主催プログラムJapan in the School 津岡昌子さん ←今ココ - 高齢者のアクティビティーを手伝う
アダルトデイケア「心会」 サムナー真規子さん
ソイソーススタッフのボランティア体験談
- 服が必要な子どもたちのために
クローズ・フォー・キッズ(Clothes For Kids) - ダウン症をサポートするウォーキングイベント
ピュージェットサウンド・バディ・ウォーク(Puget Sound Buddy Walk) - 北米最大の映画祭でボランティア体験
シアトル国際映画祭(Seattle International Film Festival)
アメリカの学校の子どもたちに日本を紹介する
日米協会主催プログラムJapan in the School
津岡昌子さん
取材・文:越宮照代 写真:越宮照代、山添史
津岡昌子さんがJapan in the Schoolのボランティアを始めたのは約10年前、同ボランティアのワークショップの情報を見て興味をもったのがきっかけだった。「子どもたちが小学生の頃だったんですが、アメリカの生活を知りたい、子どもがどういうことをしているのか知りたい、という好奇心からでしたね。しかも紹介するのが自分がよく知っている日本のことなので、自分の得意分野じゃないですか(笑)」と語る。
英語はまだよくわからなかったが、このボランティアは英語担当と日本語担当の2人1組で行うため、必ずしも英語が話せなくてもできる。当時は子どもが小さかったことから、親としてアメリカの学校環境について知りたいという思いも動機としてあった。
「ワークショップは、学校に行って実際にどういうことをするかを練習するという内容で、とてもわかりやすくて、日本語担当があるのでこれならできるかな、と思って」参加を決心。それから約10年になるが、今では英語担当を引き受けることもあるそうだ。
「参加は平均年に2、3回ですが、もっと頻繁になさる方もいらっしゃいます」と、それぞれのペースで関われる。
日本の小学生の1日を紹介
「ボランティアでは具体的にどういうことをするかというと、その日訪れたクラスがみんなで日本に飛行機で飛んでいく、という想定からスタートします」。訪れる先は日本の家庭。その家の子どもがこれから学校に行くところから、ランドセルを背負って黄色い帽子をかぶり、玄関で靴を履き、「行ってきます」「行ってらっしゃい」という親子の会話があって学校に行って……という、普通の日本の小学生の1日をシュミレーションしながらアメリカの子どもたちに紹介するというものだ。
「上履きに履き替えるとか、給食当番とか、お昼の後の掃除とか、授業の始まりと終わりの挨拶などアメリカではないような習慣を教え、どんな教科書を使っているか紹介して、国語の本で日本語の縦読みを紹介したり、簡単な漢字を書かせたりします」。英語はアルファベットが26文字なのに対して、日本語は平仮名とカタカタがそれぞれ46あり、小学6年生で漢字を1000字習うことを紹介すると「大変だ!」という反応が返ってくるそうだ。
こうした子どもたちの反応を見るのも楽しみの一つ。「絵手紙をもらったことがありまして、その中に『お箸が良かった』『掃除をするのにびっくりした』など書かれていたり、黄色い帽子をかぶって小学生が登校する姿が描かれていたり。こういうのを見ると、やっていて良かったなと思えますね」このボランティアを通して、日本の良さについて再発見することがしばしばだという。
「テクノロジーの分野を紹介しながら、『日本ってすごいじゃない』って思うことがありますね。日立のプロジェクターとか、任天堂なんて子どもたちみんなが知っているものが日本から来ているんだと紹介できるのは嬉しいですよ」
学ぶことも多く、「クラス内で子どもたちをマネージメントする難しさを学びました。喜ばせるだけではだめで、落ち着かせるのが大変だったりします。それと子どもたちの日本への関心の深さを感じました」。その一方で、「楽しすぎて時間が足りなくなった時、子どもたちが興奮しすぎて収拾がつかなくなった時、子どもたちが英語で何を言っているのかわからくて焦ったり(笑)」ということもあるが、それら全部ひっくるめてボランティアの醍醐味のようだ。
英語を学びたいと思っている主婦層や留学生におすすめ
ボランティアをしているのは、津岡さんのように子どもを持つ家庭の主婦が多い。「アメリカの学校の様子を知りたい方、英語を勉強中の方などには良い機会だと思います。 私のように、日本語から始めて、英語に移行することもできますし」。中には短期留学の学生もいるそうだ。
Japan in the Schoolには高校生向けのプログラムもある。「この場合、ボランティアは4人くらいですね。日本語を学んでいる高校生が対象なので、ごっこあそびのようなことをしながら、日本語で会話をするというものです」
津岡さんはこのほかにも、ベルビュー学校区で日本から来たばかりで英語がよくわからないという子どもたちのサポートをしたり、ジュビリーリーチセンター(Jubilee Reach Center)で英語初心者クラスのアシスタントをするなど、教育関係のボランティアにいくつか携わっている。
ボランティアをする理由についていて津岡さんは「ボランティアを通して学べること、いろんな人と出会えること、そしてそれを自分が出来ることに喜びを感じるからで
す」と言って微笑んだ。
Japan in the School
ワシントン州日米協会が主催するワシントン州の学校で日本を紹介するプログラム。年間120校を訪れている。アメリカにおける同種のプログラムの中では最も長く続いており、充実した内容であることから、日本政府から表彰された。また、その実績を買われ、昨年は日本政府からの助成金を得て日本の学校でアメリカの子どもたちの様子を紹介するプログラム「America in the School」がスタートした。
Japan-America Society of the State of Washington
3010 77th Ave. SE, Suite 102, Mercer Island, WA 98040
☎︎206-374-0180
website:jassw.org/program/japan-in-theschools
日本語ボランティア特別ワークショップ開催
先着8 名(要予約)
日時:5 月14 日(土)午後1 時~ 3 時
会場:ワシントン州日米協会
3010 77th Ave. SE, Suite 102, Mercer Island, WA 98040
申込み:jis@jassw.org
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アダルトデイケア「心会」 サムナー真規子さん