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特集 シアトルのホットな日本料理店

シアトルは今、日本食ブーム。今回は、この1年ばかりの間にオープンした注目の日本料理店4軒をご紹介します!

取材・文:小村侑子、寺島伶菜、長谷川麻由、小林真依子、越宮照代
写真: 越宮照代、小村侑子

 

 


航鮨

Sushi Wataru

2400 NE 65th St., Seattle, WA
営業時間:
☎︎206-525-2073
wataruseattle.com

ラベンナに伝統的な江戸前寿司を出す「航鮨」がオープンしてもうすぐ1年。寿司店激戦区のシアトルにあって、連日ローカルの寿司マニアが訪れる人気店だ。
「ネタは新鮮なものを築地などから仕入れています」と語るオーナーシェフの汲田航太郎(くみたこうたろう)さん。カウンターの下から出してくれたヒノキの箱には、コハダ、ゴマサバ、関アジ、サーモン、ヒラメ……きらきら光るネタがぎっしりと詰まっていて、まるで宝箱のよう。空輸で運ばれてくる獲れたての魚に、江戸前ならではのひと手間加えた”仕事”を施しているそうだ。ノースウエストは魚介の宝庫、もちろん輸入ものだけでなくビンチョウマグロ、ウニ、グイダック(アメリカミルガイ)といったローカルのネタも揃えている。

sushiwataru-4
ネタ箱

メニューには豊富な握り寿司や巻き物、アラカルトがずらり。その中でも同店の一番人気といえば「航のおまかせ(Wataru’s Omakase $55)」。前菜3点盛り合わせ、刺身、寿司7ピースに手作りのつみれ入り味噌汁がついた、ダイニング席のみで提供されるお得なセットだ。

前菜(Wataru's Omakase)
前菜Watarus Omakase

本日の前菜にはナスの煮浸し、スメルトの南蛮漬け、サーモンのきぬた巻き。きぬた巻きはさっぱりとした甘酢漬けの大根と脂の乗ったサッカイサーモンのコクがベストマッチ。

Wataru's Omakase
刺身Watarus Omakase

続いて刺身。九州のマダイ、ローカルのボタンエビ、藁でスモークされたサーモン、肉厚の中トロなど、目にも舌にもバリエーション豊かな内容。航太郎さんいわく「味のうすいネタから濃いネタへと移るのが、それぞれの味を楽しめる食べ方」なのだとか。トロに手を伸ばしたい気持ちをこらえ、ヒラメの昆布締めにレモンをかけていただく。はっとする爽やかな味わいに「トロの後ではこうはいかない、なるほど!」と合点。

寿司(Wataru's Omakase)
寿司Watarus Omakase

いよいよメインディッシュ。黒光りするゲタに乗って出てきた、色鮮やかな7ピースの握り寿司! ボストン産の本マグロのヅケは、お湯にくぐらせたあと氷水で締め、醤油、酒、昆布、鰹節で漬け込んだもの。江戸前の伝統的な技法だ。冷蔵技術のない時代に誕生した江戸前寿司は、こうしてネタに手を加えることで保存を可能にした。口に含むと、マグロの自然な甘みと凝縮された旨みが感じられる。酢締めにされた今が旬のコハダは、きりりと締まった分厚い身とほどよい酸味。大トロのリッチな脂もうれしい。最後にデザート感覚で楽しみたいのは、航太郎さん自慢の卵焼き。やさしい甘さとしっとりながらフワフワの食感は、大和芋と白エビが入っているから。その日の仕入れ状況によって内容が変わる、大満足の江戸前フルコースだ。

汲田 航太郎さん
汲田 航太郎さん

「アメリカで寿司を握るというのは、日本の文化を届けること」と笑顔で話す航太郎さんは、江戸時代から伝わる食文化を私たちに教えてくれる。来店の際は事前予約がおすすめ。カウンター席は午後5時半と7時半の2回制。店内改装のため11月1日〜14日は休業。

 


懐石料理店
Naka

Naka

1449 E. Pine St., Seattle, WA 98122
営業時間: 水〜日5pm〜12am
月・火 定休
☎︎206-294-5230
nakaseattle.com

キャピトルヒルにある落ち着いた雰囲気の懐石料理店「Naka」。広々としたモダンな雰囲気の店内は、堅苦しい懐石料理のイメージを取り去ってくれる居心地の良い空間だ。
若きオーナーシェフ、中島正太さんはワシントン州育ち。子どもの頃から日本の家庭料理が大好きだったそうで、18歳から大阪の名門辻調理専門学校で学び、ミシュランを受賞した北新地の割烹料理「さか本」での修行を経て2015年に同店をオープンした。

中島正太さん
中島正太さん

ダイニングでは6 品、10 品、12 品のコース料理($75、$120、$170) のみを提供。コースの内容はその日仕入れた食材によって変わるが、数少ない定番の卵料理は卵黄を温泉卵風に昆布出汁でアレンジしたもの。サンファン諸島にあるロペス島の農場で放し飼いにされている鶏からとれた、こだわりの卵を仕入れており、フレッシュで濃厚な味。添えられたキャビアとの相性は抜群だ。

卵料理のアレンジ
卵料理のアレンジ
松茸の茶碗蒸し
松茸の茶碗蒸し

秋の味覚の王様、松茸の茶碗蒸しは、ワシントン州産の松茸を使用。豊かな香りと肉厚の食感に満足すること間違いなし。今後、松茸の土瓶蒸しも加わる予定。

銀ダラのスモーク(Local Black Cod )
銀ダラのスモークLocal Black Cod $32

バーメニューとしても注文できる銀ダラのスモーク(Local Black Cod $32)は地元で水揚げされた銀ダラを使用し、特製の昆布塩を使って一手間かけた幽庵焼きだ。テーブルに運ばれてきた容器のフタを開けると、中から燻された香りとともに煙が出てくる楽しい演出もあり。

至極(Shigoku Oyster
至極Shigoku Oyster $2

バーでぜひ注文してほしいのがカキ。「至極」(Shigoku Oyster $2)は、ポン酢のジュレとフィンガーライムでさっぱりとした味わいを楽しめる。ハッピーアワーは半額の1ドルだというから驚きだ。

バーカウンターの棚にはワインから芋焼酎まで豊富な種類のお酒がずらり。「響30年」など、入手が難しいジャパニーズウィスキーが揃っているため、それを求めてくるお客さんも多い。バーテンダーは、世界のバートップ10で6位を受賞した名店「Canon」で6年間バーマネージャーを務めたダスティン・ハーステッドさん。一人一人の好みに合わせて作られたカクテルが賞味できるのも◎!
休日の懐石メニューは予約必須。170ドルのコースは事前に料理に関する相談があり、アレルギーの確認はもちろん、好みの食材のリクエストができる。

 


武藤 居酒屋レストラン

MUTO Izakaya Restaurant

19505 44th Ave. W. Suite K, Lynnwood, WA 98036
営業時間:
月〜金 ランチ11:30am〜2:30pm
ディナー 5pm〜9:30pm (金は10:30pm)
土 ランチ&ディナー12pm〜10:30pm
日 ディナー5pm〜9pm、
☎︎425-322-7599
mutoramen.com

リンウッドの「武藤居酒屋レストラン」は、寿司、ラーメン、焼き鳥、天ぷらなどの日本料理をリーズナブルな価格で提供する居酒屋スタイルのレストラン。各種日本酒・焼酎も取り扱う。
オーナーの武藤みつおさん(通称タカさん)は、日本、ロサンゼルス、シアトルで料理人としての経験を積み、昨年10月に同店をオープンした。

木目調のテーブル席に藍染めののれんが飾られた店内は、日本の居酒屋を彷彿とさせるレトロでアットホームな雰囲気。ミネソタ州ミネアポリス在住の画家、根岸優也さんによって壁に描かれたドラゴンが迫力満点で目を光らせている。「アメリカでは、和食はエンターテイメントでないと」と饒舌に話すタカさんの明るい人柄に、開店以来人気は上昇する一方で、リピーター客が後を絶たない。

店内
店内
本日のおすすめ
本日のおすすめ

「日本の居酒屋のようにバラエティ豊かなメニューを手頃な値段で提供したい」とタカさんが言うように、つくねなど串焼き10種、トリのカラアゲ、サバの塩焼き、枝豆、イカ焼き、揚げ出し豆腐、餃子、たこ焼き、寿司、天ぷら、丼もの、ラーメン、カレーはビーフカレーやカキフライカレーなど6種、おつまみからメイン料理まで幅広いメニューを提供している。
とはいえ同店は単なる居酒屋ではない。店内の最奥にどんと存在感を見せている寿司カウンターが物語るように、特に力を入れているのが新鮮な魚を使った寿司や刺身だ。

サンマを片手に話をするタカさん
サンマを片手に話をするタカさん

中でもタカさんの自慢は、「ミステリーボックス」。毎週一回、北海道根室港でその日の朝に獲れた魚がシアトルへ空輸され、箱を開けるまでどんな魚が届くのかわからない。そこでこの名が付いた。魚によっては下処理に時間を費やすこともあるというが、「日本から直接届いた鮮魚をお客様に提供できる喜びは何にも代え難いですね」と笑顔で話す。
今週のミステリーボックスに入っていたのは、今が旬のトビウオ、サンマ、イワシ、ゴマサバ、タイ。どの魚も目が透き通って見るからに新鮮。「ほら、活きがいいでしょ!」とタカさんは魚以上に目を輝かせて、届いた魚をひとつひとつ見せてくれた。

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マグロ

その他にも地元の漁師からカキ、ミルガイ、ウニなどを、メキシコからは約18kgの本マグロを直接買い付け、様々な旬の活魚を週変わりで提供している。ミステリーボックスは毎週木曜に届き、週末にはすべて完売してしまうそうだ。

刺身盛り合わせ
刺身盛り合わせ

その日のおすすめの魚は、寿司バーの奥にあるホワイトボードとテーブル席エリアに置かれたブラックボードに表示。おいしさを最大限生かすために、握り寿司、刺身、タタキ等、魚の種類に合わせた調理方法で提供している。リクエストも受け付けているが、おまかせでオーダーするのがおすすめ。

 


からあげ刹那

Karaage Setsuna

2421 2nd Ave., Seattle, WA 98121
営業時間:
ランチ 月~金 11:30am~2pm
ディナー 月~土 5pm~9:30pm
☎︎206-448-3595
詳細:Facebook

ベルタウンにジャパニーズ×ハワイアンのフュージョン料理レストラン「からあげ刹那」が先月オープンした。刹那と聞いて気づかれる人もいるだろう、オーナーシェフはノースゲートで人気だった「刹那」の松本好直さんだ。「普通の日本食だけの料理にはしたくなかったんですよ」と、松本さんはにこにこしながら語ってくれる。そこで同店の人気メニュートップ3を試食させてもらうことにした。

カラアゲプレート(.50 ランチ/.50 ディナー)
カラアゲプレート$950 ランチ$1150 ディナー

まず最初に同店一番人気でもあるカラアゲプレート(Karaage Plate $9.50ランチ/$11.50ディナー)。オリジナルの巨峰グレープソーダ(Kyoho Grape Soda $3.75)で喉をうるおしながら待っていると、厨房から熱々のカラアゲが運ばれてきた。サイドにこんもり盛られたマカロニサラダとふりかけ海苔がかかったご飯(ふりかけ無しも可)が付いている。多くの店では骨と皮を取り除いた肉を仕入れるそうだが、「うちではチキンのうまみを逃がさないように骨・皮つきのまま仕入れているんです」。それを丁寧にさばき、自家製のタレに漬け込んで揚げているのだ。香ばしいにおいに食欲をかきたてられながら一口ほおばると、サクッとした食感のあとジュワーっと肉汁が流れてくる。衣に使われたショウガとニンニクの隠し味がうまさを引き立てて、これぞ日本のカラアゲ! アメリカでチキンの皮を食べられるのは珍しいので皮好きの人には朗報だ。

ロコモコ( ランチ/ ディナー)
ロコモコ$11 ランチ$13 ディナー

次はロコモコ(Loco Moco $11ランチ/$13 ディナー)。本場のハワイではご飯の上にハンバーグ、その上に目玉焼きが乗っているが、同店では一つの皿にご飯とハンバーグ、そして味付きのゆで卵が並んでいる。このアレンジがジャパニーズ×ハワイアンたるゆえんだ。見た目の楽しさもさることながら、ひき肉、豆腐、タマネギを使用したぶ厚い自家製ハンバーグは、自家製ソースの味わいと相まって、食べ始めると箸が止まらなくなる。日本の洋食屋さんのハンバーグを思い出してしまった。
%e3%83%9d%e3%82%ad%e4%b8%bcs-min 最後が、これもハワイ名物のポキ丼(Poke Bowl $15)。タレに漬け込まれたマグロが酢飯の上にゴロッと乗っている。スプリングミックス・サラダと海藻が一緒についており、ボリュームのわりにヘルシー感がある。

 

笑顔が素敵なオーナーシェフの松本好直さん
笑顔が素敵なオーナーシェフの松本好直さん

ほかにも、日本のラーメンとハワイ発祥の麺料理サイミンをミックスさせたラーミン(Ra-Min Noodle Soup $11ランチ/$13ディナー)など、同店ならではのユニークなメニューが楽しめる。ビールにグレープエキスをミックスしたオリジナルドリンクのグレープビール(Grape Beer $7.50)は、女性に人気。