エンディングノートとは何か
人生の終末期に備えて自分の希望を書き留めておくエンディングノート。葬儀や相続の希望といった手続きを記す基本タイプのノート以外にも、愛する人たちへのメッセージを残すものや自分史を綴るスタイルなどいろいろ。法的効力はないが、団塊の世代が高齢化している日本において「終活(人生を締めくくるための活動)」の一環として注目されている。このほど日英バイリンガルのエンディングノート『Life Design Note(ライフデザインノート)』を出版した、シアトル在住のコンサルタント兼コーチの森山陽子さんに話を聞いた。
ライフデザインノートとは、万一自分が死亡した時や脳 死、認知症といった判断力・意思疎通能力の喪失を伴う状態になった時自分や周りの人が困らないように、必要なことを前もって書き留めておくノートです。作ろうと思ったきっかけは、一つには震災の経験。人は必ずしも歳を取ってから亡くなるわけではないので、いつ何があってもよいように準備をしておかなければと思いました。次に日系アメリカ人の友人から、お母さんが遺した日本語のメモが読めないから訳してと頼まれたこと。英語を第二外国語として勉強した人は、認知症になった時に英語が喋れなくなると聞いたこと、などですね。それに、私の夫は日本語が まったくわからないので、私に何かあった時に、両親への連絡方法やお葬式をどうするか などの情報を日本語と英語の両方で書いておいて、夫と日本の両親がきちんとコミュニケーションを取れるようにしておく必要を感じていました。既成のものには日英バイリンガルのエンディングノートがなかったので、では自分で作ろうと考えたわけです。
作る際に、コーチングの観点から、若い世代でもエンディングノートを準備する利点があると思って、名称を「エンディング」ではなく「ライフデザイン」にしました。ノートを書いておく利点として、万一の時に家族や周りの人を助ける、日常の備忘録、人生のプランニングの3つが挙げられます。
万一の時に家族や周りの人を助ける
万一の場合に連絡してほしい 人、延命治療を受けるか受けたくないか、埋葬方法、遺された物やペットの処遇、相続の分配など、本人の希望が分からないと、家族での意見の一致が難しく、家族間で 争いになるケースも。
銀行口座や不動産を含めた資産、遺族年金や加入している保険などの情報は、本人しか知らない場合がある。手続きをしないとお金はもらえないので「○○の保険に入っていて、こういう状況になったらお金がもらえるはずだから」ということを書いておく。その他、クレジットカードやローン、税金の支払時期や支払方法の情報なども書いておくとよい。
日常の備忘録
友人知人の連絡先、かかりつけの医療機関の情報、光熱費やローンの引き落とし日といった、日常生活に必要な情報を書き留めておくので、例えば住所録ならホリデーカードを書くときに便利だったり、昔の住所で登録していたものが探しやすくなったりと、日々の生活の助けになる。
人生のプランニング
これからの人生をどう暮らすか、というのが 見えてくる。例えば総資産額がわかれば、「あれもできる、これもできる」となるかもしれないし、もしくは「ちょっとリタイアメントを先に延ばさないといけないな」となるかもしれない。そうして考えていくうちに、人生のハイライトや子どもの頃の夢などを思い出して、やりたかったことを叶えるきっかけにできるかもしれない。目的をもって毎日を過ごせると同時に、死ぬまでにこれはやっておきたい「バケットリスト」を作っておくことができる。
*『ライフデザインノート』($30)購入希望の方は森山陽子さんまでお問い合わせください。
info@lifedesignnote.com
ライフデザインノート作成セミナー
書いておくとよいとは思っても、どこから手を付けてよいのか途方に暮れてしまうという人も多いだろう。そこでご紹介するのが、森山陽子さんのライフデザインノート作成セミナー(全2回)。
2回にわたって行われるこのセミナーでは、1回目にライフデザインノートとはどういうものかの説明と、日付を入れる意味やパスワードの記し方、アップデートの方法など、書き進めていくうえでのポイントを紹介。2回目は、各人が宿題として書いてきた内容を参加者同士でシェアし、気付きを得たり、情報交換に役立てる効果を目指す。
人生を見直すきっかけにもなるライフデザインノートは、高齢になる前に書き始めて、終末期までアップデートしていくのが理想。体が弱くなったり健康を損なってから書き始めると気分も暗くなりがち。できれば元気がある時に皆で集まってワイワイ話しながらトライすると、楽しく書き進めることができるもの。
「終末医療やお葬式にはどんな選択肢が?」「銀行口座や遺産はどんな書き方をしたらい い?」など、考えなくてはいけないことはたくさんある。セミナーでは具体的な書き方に関する質問はもちろん、「パートナーや両親にもすすめたいけどどうやって話を切り出したらいいか」、「書くことが多すぎて何を優先したらよいのか」、といった悩みにも的確なアドバイスがもらえる(ただし、法律に関わるアドバ イスはライセンスの関係上できない)。
参加者からの「こんなことで困った」といった体験談を聞くことで「あ、これやっておいた方がいいんだ」という気付きを得た
り、普段は切り出しにくい万一の事態を、夫婦や家族で話し合うきっかけにもなったりと、一石何鳥にもなるセミナー。
【1回目】
内容:ライフデザインノートとはどのようなものか。
書き方のポイント。
日時: グループA 6月11日 10am~11:30am
グループB 6月24日 10am~11:30am
【2回目】
内容:参加者同士の体験のシェア。情報交換。
日時: グループA 6月25日 10am~11:30am
グループB 7月8日 10am~11:30am
場所:JCCCCW(Japanese Cultural & Community
Center of Washington)
1414 S. Weller St., Seattle
jcccw.org
参加費:$100(ライフデザインノート代$30を含む)
申込み:
lifedesignnotes.com/page/seminarjp
問合せ:☎206-310-9636
info@lifedesignnotes.com
エンディングノートのいろいろ
発行元:ディスカヴァー・トゥエンティワン 著者:ひすい こたろう/648円
著者のベストセラー『あした死ぬかもよ?』から生まれた自分の本心と向き合うための書き込み式ワークブック。死を題材にした32の質問に答え、書き込んむことによって、自分の本当に大切にしたいことが明確に。
発行元:K&Bパブリッシャーズ /1296円
懐かしい時代を思い出しながら自分の人生を記録できる「自分史年表」と、これからの夢や生き方、もしもの時の備えと意思を書き記す「エンディングノート」を1冊にまとめている。人生設計に活用できる「100年カレンダー」付き。これまでとこれからをトータルに考えられる。
発行元:星雲社 著者:東 優/1512円
全国で終活セミナーを開催する人気行政書士の東優が、うまくいく終活のノウハウを紹介。「相続」でもめないために、「終末医療」はどうする、「お墓」は今から選んでおこうなど、人生の終い支度はこの1冊で完結。切り離して使える「エンディングノート」付き。
発行元: プレジデント社 監修:武内 優宏(弁護士)/1080円
弁護士が監修したエンディングノート。自分のこと、お金・財産のこと、家族・親族・友人、自分の「もしもの時」、自分の大切なもの、の全5章に分かれており、暮らしの中のさまざまな「もしもの時」に備えて、自分の大切な情報を記すよう構成されている。5月末発行予定。
発行元:共同通信社 著者:尾上 正幸/1944円
著者は多くの著名人の最期を知るお葬式の専門家。その経験から、どのような葬儀であっても、残された家族の不安を軽減させるには事前相談が有効であるという確信を得る。本当に必要なエンディングノートの決定版。
発行元:コクヨ/1512円
銀行口座や保険、クレジットカードなど、年齢を問わず今日からすぐに書き込める項目を、多数盛り込んでいる。コクヨオリジナルの「コクヨ帳簿紙」を中紙に採用。CD-R1枚を保管できるディスクケースを付属。ポケット部分には証明写真やお気に入りの写真の保管ができる。
発行元:集英社/1575円
1276人が参加したFacebook「未来に残すエンディングノート」の編集委員会から生まれた、女性のための新しいカタチのエンディングノート。大切な人へのメッセージなど、自分を文章やイラスト、写真などで自由に記せるパートが充実。
発行元:主婦と生活社 著者:やました ひでこ/950円
断捨離のやましたひでこが温めてきた終活メソッド。自身の体験や断捨離セミナーの受講者から投げかけられてきた「老い」や「死」にまつわる不安や悩みに対してまとめた1冊。従来のエンディングノートとはひと味違った「生き方見直しノート」。