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特集 2016アメリカ合衆国大統領選を読む!

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アメリカ合衆国大統領選をテーマにした映画
解説:村田晃嗣

最期の勝利者
(英題:The Best Man)

1964年アメリカ 監督:フランクリン・シャフナー

最期の勝利者 選挙をテーマにした映画は多いが、大統領選挙を直接に描いた作品は限られている。
この作品では、大統領予備選がテーマで、アドレイ・スティーブンソン(1952,56年の民主党大統領候補)またはジョン・F・ケネディを髣髴させるリベラル派の候補を、ヘンリー・フォンダが演じている。フォンダは実生活でもリベラル派で、ケネディを熱心に支持していた。タカ派の対抗馬はリチャード・ニクソンを連想させる。つまり、60年のケネディ対ニクソンの激戦が下敷きになっているのである。両陣営の間で熾烈かつ醜い戦いが繰り広げられる。はたして、「最期の勝利者」は?ソ連の観客にアメリカ政治を誤解させると、国務省が危惧したほどである。しかし、シャフナー監督は、ソ連には(選挙を前提にした)政治はわからないと、一笑に付したという。

スーパー・チューズデー ~正義を売った日~
(英題:The Idea of March)

2011年アメリカ 監督:ジョージ・クルーニー

スーパー・チューズデー 2004年の民主党大統領予備選を戦ったハワード・ディーン元バーモント州知事のスタッフが、原作を提供している。クルーニーはバラク・オバマ大統領とも親しく、民主党支持のリベラル派セレブとして知られる。今は亡きフィリップ・シーモア・ホフマンをはじめ、ポール・ジアマッティ、ライアン・ゴズリングら、共演者も豪華。クルーニー演じる大統領候補をめぐって、権謀術数が繰り広げられる。原題は古代ローマの暦で3月15日を意味し、ジュリアス・シーザーが暗殺された日として記憶されている。つまり、実際のスーパーチューズデーが実施される時期に近く、政治的英雄(理想)の死という隠喩でもある。本作は政治映画ではないとクルーニーは語ったが、これが政治映画でなくてなんであろうか。

クリントンを大統領にした男
(英題:The War Room)

1994年アメリカ 監督:D.A.ペネベイカー/クリス・ヘジダス

クリントンを大統領にした男 二人の監督はかつて『ドント・ルック・バック』などでロック・スターたちを描いてきた。1992年の大統領選挙で現職の共和党ジョージ・ブッシュ(父)を破った民主党ビル・クリントン陣営を、彼らが9カ月にわたって取材したドキュメンタリー映画である。ニューハンプシャーでの最初の予備選から、アーカンソー、リトルロックでの当選祝賀パーティーまでを辿る。この間、クリントン、ブッシュ、ロス・ペローという3人の候補者をはじめ、アル・ゴア副大統領候補、ジェームズ・カーヴィル(クリントン陣営の選挙参謀)、ジョージ・ステファノポロス(クリントン陣営の報道部長)らが次々に登場する。カーヴィルはその後、イギリスやイスラエルの選挙でも活躍し、『オール・ザ・キングスメン』のリメイク(2006年)の制作も手がけた。原題が示すように大統領選挙が戦争であり、いかに複雑であるかが、よくわかる作品である(つまり、予備知識がないと、なかなか判りにくい)。

パーフェクト・カップル
(英題:Primary Colors)

1998年アメリカ 監督:マイク・ニコルズ

パーフェクトカップル こちらもクリントン陣営の大統領選挙をテーマにした作品である。南部の州知事ジャック・スタントンが大統領選挙に出馬するが、次々にスキャンダルが巻き起こる。それをスタントン夫人や選挙参謀たちが必死にもみ消していく。ジョン・トラボルタとエマ・トンプソンがスタントン夫妻を演じ、特にトラボルタはクリントンを強く連想させる演技で高い評価を得た。ポピュリストとは、まさにスタントン夫妻のことである。この映画が公開された頃には、実際にクリントン大統領は様々なスキャンダルに見舞われていた。ヒラリー・クリントンが大統領選挙を戦っている今日、この映画は改めて注目されるべきであろう。