子どもとティーンのこころ育て
アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。
不安の時代を生きる子どもたち
〜気候変動、世界紛争、過接続社会と
どう向き合うか〜
「動物や自然が失われていくのを見て悲しい」「将来のことを考えると不安になる」ーこうした声は、特定の家庭や性格の子どもに限られたものではありません。気候変動、経済格差、情報過多、不安定な世界情勢など、時代の空気が子どもや若者の心に影を落としています。こうした不安を個人の問題として切り離すのではなく、社会的な問題として理解することが大切です。個人の努力では解決できない不安にはどのようなものがあるのか。そして子どもとどう向き合えばよいのかを探ってみましょう。
気候不安(Climate Anxiety)
環境汚染や気候変動への慢性的不安は、若者層を中心に広がっています。ユニセフによると、世界各地の子どもや若者が環境問題に不安を感じており、睡眠や集中力、学習意欲への影響も報告されています。16歳から25歳を対象に10カ国で実施された国際調査(Hickmanほか、2021年)では、約59%が気候変動について「非常に心配している」と回答し、84%が少なくとも中程度の不安を感じていることが示されました。多くの若者が「将来が脅かされている」と感じ、「大人や政府が十分に行動していない」と考えています。こうした社会的不安は、「自分たちにはコントロールできない力に人生を左右される」という感覚を生み、悲しみや無力感、自己価値の低下につながります。
社会経済的疲弊(Socioeconomic Burnout)
さらに若者の心を圧迫しているのは、インフレや極端な富の不平等による将来への不安です。スイスの金融大手ユービーエス(UBS)が発行する「UBSグローバル・ウェルス・レポート2024」によると、2023年時点で富裕層上位1%が世界の富の46.2%、上位10%が82.4%を所有し、下位50%はわずか1.8%にとどまっています。「努力すれば報われる」という社会の前提が揺らぐことで、希望は大きく損なわれます。経済学者トマ・ピケティは著書「21世紀の資本」の中で、約300年分に及ぶ富と所得のデータを分析し、富を持つ者はますます豊かになり格差が固定化されやすい構造があると指摘しました。そのため「どれだけ努力しても報われない」という感覚を抱く若者が増えるのも自然な反応といえます。経済的困難は、抑うつや不安のリスクを2.5倍以上高めると報告されており、無視できない問題です。
過接続ストレス(Hyper-connectivity Stress)
現代の子どもや若者は、常に誰かとつながっている状態に置かれています。SNSやチャットを通じ、友人関係や学校、地域の話題から、犯罪や世界紛争に至るまで、情報が途切れることなく流れ込みます。「すぐに返信しなければならない」「何か起きていないか常に確認してしまう」といった状態は、休むことのない心理的負荷を生みます。過剰な情報につながり続ける社会では、人生を長期的に見通すための心理的安定感が損なわれ、自分でじっくり考える力を弱めていきます。
子どもの希望を取り戻すためにできること
1)不安は自然な反応だと伝える
社会の問題に心が圧迫されるとき、「あなたが考えても仕方がない」といった言葉は逆効果です。不安を感じることは自然な反応だと教え、子どもの気持ちにしっかり耳を傾けましょう。
2)一緒に考え、信頼感を強める
社会問題について話し合い、困難や課題への対処法を一緒に考えましょう。親が真剣に向き合うことで、子どもは親への信頼感を深め、不安な気持ちが和らぎます。不安定な社会の中でも、家族の絆が心の支えになります。
3)小さな「できること」を実行する
社会全体を変えることは難しくても、日常の小さな行動なら実行可能です。リサイクルや植樹、家族内のルール作りなど、身近なことから始めましょう。世界を大きく変えようとするのではなく、家庭で環境や人への優しさを実践することで、子どもは「自分にもできる」という自己効力感や生きる力を育むことができます。
1)不安は自然な反応だと伝える
社会の問題に心が圧迫されるとき、「あなたが考えても仕方がない」といった言葉は逆効果です。不安を感じることは自然な反応だと教え、子どもの気持ちにしっかり耳を傾けましょう。
2)一緒に考え、信頼感を強める
社会問題について話し合い、困難や課題への対処法を一緒に考えましょう。親が真剣に向き合うことで、子どもは親への信頼感を深め、不安な気持ちが和らぎます。不安定な社会の中でも、家族の絆が心の支えになります。
3)小さな「できること」を実行する
社会全体を変えることは難しくても、日常の小さな行動なら実行可能です。リサイクルや植樹、家族内のルール作りなど、身近なことから始めましょう。世界を大きく変えようとするのではなく、家庭で環境や人への優しさを実践することで、子どもは「自分にもできる」という自己効力感や生きる力を育むことができます。
人の心は、社会の現実から切り離せません。社会的不安は確かに子どもやティーンの心に影響を与えます。しかし大切なのは、大人が能動的に向き合う姿勢を示すことです。小さな行動や選択が、未来を少しずつ形作る力になります。「自分にできることは必ずある」と繰り返し伝え、子どもと一緒に一歩ずつ積み重ねていきましょう。
参考文献・URL
⚫︎ UNICEF (2023). Climate Anxiety
⚫︎ Hickman, C. et al. (2021). Climate anxiety in children and young people.
⚫︎ The Lancet Planetary Health
⚫︎ Key Insights from the UBS Global Wealth Report 2024
⚫︎ Thomas Piketty (2014). Capital in the Twenty-First Century