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第 10 回 ADHDを正しく知る
子どもでも大人でも、「ADHD」という言葉を耳にする機会が非常に多くなりました。園や学校で集団生活が始まると、「落ち着きがない」「先生の話を最後まで聞けない」といった様子が気になり、ADHDではないかと心配になることがあるかもしれません。また大人でも、「やるべきことが分かっているのに手につかない」「締め切り直前にならないと動けない」「物をよく失くす」といった経験から、「自分はADHDなのでは」と考えることもあるのではないでしょうか。今回は、ADHDとは何か、その診断の考え方、そして支援の実際について整理します。
ADHDとはどのような状態か
ADHDは「注意欠如・多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder)」の略称です。「SNSの『ADHDあるある』を見て自分もそうかもと思った」といった声をよく聞きます。確かに、誰にでも多少の不注意はあるためADHDを身近に感じやすい一方で、実態を正しく把握しづらいのも事実です。医学的には、ADHDの診断は明確な基準に基づいて行われます。その基準が記載されているのが、アメリカ精神医学会が発行する『精神障害の診断・統計マニュアル 第5版(DSM-5)』 です。DSM-5では、症状は大きく以下の2群に分けられています。
①不注意症状(一部のみ紹介)
細かいミスが多い、課題や活動に集中し続けることが難しい、物をよく失くす、上の空でよく話を聞いていないように見られる、など
細かいミスが多い、課題や活動に集中し続けることが難しい、物をよく失くす、上の空でよく話を聞いていないように見られる、など
②多動・衝動性症状(一部のみ紹介)
じっと座っていられない、不適切な場面で動き回る、順番を待つのが苦手、他人の会話に割り込む、など
じっと座っていられない、不適切な場面で動き回る、順番を待つのが苦手、他人の会話に割り込む、など
これら2群の症状が一定項目数以上みられ、かつ生活に明らかな困難が生じている場合に診断が検討されます。
診断で特に重要なポイント
ADHDの診断において重要な条件が二つあります。 一つ目は、「12歳以前から上記のような症状が存在していること」です。ADHDはあるタイミングで突然発症するものではありません。生まれつきの脳の特性であり、幼少期からその傾向がみられます。ですから、ADHDは「しつけの問題」で起こるようなものではありません。
二つ目は、「二つ以上の環境でみられること」です。たとえば、特定の人との相性やストレス負荷が大きい職場のみで症状がある、といったものではなく、学校や家庭、他のコミュニティーなど別の環境でも同様の症状や困難がみられる必要があります。ただし、環境との相互作用や、不安症やうつといったメンタルヘルスの症状が重なると、ADHDの特性による困難さがより顕著になることはあります。
また、興味深い点として、ADHDは遺伝的要因の影響が非常に大きいことが分かっています。研究では遺伝率は70%から80%にのぼると報告されています。つまり、子どもがADHDの場合、親にも同様の特性がある可能性は決して低くありません。
ADHDへの三つのアプローチ
ADHDの支援には、大きく分けて三つの柱があります。
①ペアレンタルトレーニング(親への支援)
特に未就学児や小学校低学年の子どもでは、最も重要とされるのがペアレンタルトレーニングです。先述のように、親自身もADHDの特性を持っていることが少なくありません。その場合、家庭内ルールが一貫しない、感情的に叱ってしまうといったことが起こりやすくなり、子どもが混乱したり、行動を改善しづらくなったりすることがあります。ペアレンタルトレーニングでは親が子育てに関わるスキルを体系的に学びます。これにより子どもへの関わり方が安定し、行動も改善しやすくなります。
特に未就学児や小学校低学年の子どもでは、最も重要とされるのがペアレンタルトレーニングです。先述のように、親自身もADHDの特性を持っていることが少なくありません。その場合、家庭内ルールが一貫しない、感情的に叱ってしまうといったことが起こりやすくなり、子どもが混乱したり、行動を改善しづらくなったりすることがあります。ペアレンタルトレーニングでは親が子育てに関わるスキルを体系的に学びます。これにより子どもへの関わり方が安定し、行動も改善しやすくなります。
②薬物療法
学童期以降になると薬物療法が選択肢に入ります。代表的な薬は中枢神経刺激薬や非刺激薬です。親としては「子どもに薬を飲ませること」に抵抗を感じるのは自然なことです。しかし、現在使用されている薬は長年の研究と安全性評価を経て処方されています。適切に使用された場合、学習への集中力向上や衝動性の軽減、対人関係の改善などの効果をもたらすことがあります。その結果、子どもの自尊心や意欲が守られ、長期的な成長に良い影響が期待できると報告されています。不安を感じることは当然ですが、「薬も一つの選択肢」として柔軟に考えることも大切です。
学童期以降になると薬物療法が選択肢に入ります。代表的な薬は中枢神経刺激薬や非刺激薬です。親としては「子どもに薬を飲ませること」に抵抗を感じるのは自然なことです。しかし、現在使用されている薬は長年の研究と安全性評価を経て処方されています。適切に使用された場合、学習への集中力向上や衝動性の軽減、対人関係の改善などの効果をもたらすことがあります。その結果、子どもの自尊心や意欲が守られ、長期的な成長に良い影響が期待できると報告されています。不安を感じることは当然ですが、「薬も一つの選択肢」として柔軟に考えることも大切です。
③認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy: CBT)
これは小学校高学年以降や大人に有効とされる心理療法です。ADHDでは、先延ばし、ネガティブな自己評価、計画の立てにくさといった問題が生じやすくなります。CBTでは、物事の捉え方(認知)と行動のパターンを整理し、より機能的な方法を身につけていきます。単独でも一定の効果はありますが、薬物療法と併用することで、より高い効果が期待できるとされています。
これは小学校高学年以降や大人に有効とされる心理療法です。ADHDでは、先延ばし、ネガティブな自己評価、計画の立てにくさといった問題が生じやすくなります。CBTでは、物事の捉え方(認知)と行動のパターンを整理し、より機能的な方法を身につけていきます。単独でも一定の効果はありますが、薬物療法と併用することで、より高い効果が期待できるとされています。
ADHDは、神経発達特性に基づく発達障害の一つであり、明確な診断基準があります。本人の努力不足や育て方によるものではありません。一方で、適切な支援によって生活の質を大きく改善できることも事実です。特性を正しく理解し、環境を整えることは、子どもにも大人にも大きな助けになります。私の外来でも小児のADHD診療を行っています。もし不安を感じた場合は、かかりつけ医や専門家に相談してみましょう。
『発達障害を正しく知る』(幻冬舎新書)
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