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▶寄稿:紀伊國屋書店シアトル支店文具売り場店長
アメリカに来て知った日本の文具の素晴らしさ
アメリカに来て知った日本の文具の素晴らしさ
真喜子スノーディーさん
紀伊國屋書店シアトル支店文具売り場店長
アメリカの鉛筆は、芯は折れる、消しても消えない、消しゴムを使うと紙が黒くなる。紙質も悪くて、万年筆を使うと下に移ってしまうし、ノートの種類は少ない。うんざりしていた時に紀伊國屋書店に文具売り場があると聞いて、日本のペンとノートを買いに来るようになったんです。それで日本の文具は性能もデザインもすばらしいことに改めて気付きました。
お客さんはアメリカ人の方が大半で、日本人の学生さんも多いですね。日本の文具を扱っているのは、このあたりではここしかないですから。今、ネットで情報が得られるので、お客さんの方がよく知っていて、日本のペン、ノート、万年筆、インクを求めていらっしゃるようです。
私自身も万年筆にはまってます(笑)。母に、ライフっていう会社のかわいい便箋を使って万年筆で手紙を書いたら、今どき(笑)手書きの手紙だったからびっくりしたって、すごく喜んでました。
それを書いている時に、文字に濃淡があって光っているのに気づいたんです。日本の技術ってすばらしいと思いましたね。
万年筆のインクっていうと、黒、ブルー、ブルーブラックくらいしか知らないと思うんですけど、実は青と黒だけでも、各社でこれだけ違いがある(自作のカラーチャートを見せる)。それぞれ個性と味があって、ピッキーな人は、そういうところもちゃんと選ぶ。それに加えてパイロットは、色雫という24色もチョイスがあるインクを出しています。
紙もブランドとシリーズによって質が違うし、同じ会社でも、黄色い紙、白い紙、線のあるもの、ないもの、ドット、グラフと、それぞれ顔がある。ここにおいている日本製のノートは、万年筆を使うことを照準にしてセレクトしているので、裏移りしにくいものばかりです。特に有名なのがトモエリバーという紙で、これはとても薄いのにインクが下に透らない。紙を買って自分でノートを作る人もいるくらいです。日本で大人気の「ほぼ日手帳」に使われている紙としても知られています。私はこの手帳をハッピー日記と呼んで、毎日、万年筆で楽しかったこと、よかったことだけを書いて1日を終えるようにしています。
あるお客さんが「紙に向かって、自分の好きな万年筆とインクで字を書くというのは、メディテーションになる」っておっしゃっていました。
真喜子スノーディーさん
◆日本で約20年ストックブローカーをしていたが現在の夫と知り合って結婚しシアトルへ。2011年から紀伊國屋書店文具売り場で働く。職場で万年筆の素晴らしさに目覚め、個人でも10本の万年筆を所有。