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特集 シアトルで日本を支える人たち

シアトルで活躍する日本人や日本企業を、陰ながらサポートしてくれる人たちがいます。今回は在シアトル日本国総領事館の小西領事、シアトル日本商工会の桂田会長にお話を聞きました。

取材・文:小村侑子、寺島伶菜

 

  • 在シアトル日本国総領事館 小西隆太郎領事
  • シアトル日本商工会(春秋会)会長
    日本航空株式会社(JAL)米州技術・品質保証部部長 桂田健さん

 

小西隆太郎 領事

こにし りゅうたろう
■ 1997年に国土交通省(当時:運輸省)航空局に入省。主に飛行機の検査やエアラインの監督業務に従事し、シアトル赴任前にはボーイング787のバッテリー発煙トラブルの安全対策や、三菱リージョナルジェット(MRJ)認証活動を担当した。2014年3月から在シアトル総領事館の経済・広報文化班に出向勤務。3児のパパとして子育てにも日々奮闘中。

国土交通省航空局から在シアトル日本国総領事館に出向し、まもなく3年の任期を終える小西領事。これまで行ってきた総領事館での活動と、シアトルで暮らす日本人として知っておきたい日本とワシントン州の関係について話を聞いた。

「日本とシアトルを最高のパートナーに」

産業のメッカ、シアトルの日本人を後押しする

私は「経済」と「広報文化」を主に担当しています。シアトルにはボーイング、マイクロソフト、アマゾン、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などの世界的企業や団体があり、航空、IT、医療などの「産業のメッカ」です。これらの産業に関連した日系企業もたくさん進出しています。それらの企業が活動できるようにサポートするのが「経済」の仕事です。「広報文化」では、日本文化関係のイベントをサポートして、日本の魅力をどんどん発信しています。
私の考える総領事館の基本的な役割は「後押し」です。「主役」である在留邦人、日系企業、日本関連団体の皆さんが活躍できる環境を一緒に作っていく。総領事館への出向前とは、仕事の内容こそ違いますが、皆さんを後押しすることでは同じです。違うのは、在留邦人の皆さんと話す機会がとても多いことですね。日本語補習学校に子供を連れて行った時に同じご父兄の方からご意見をいただいたり。日常的に色んな話をして、そこからアイディアが生まれたりもします。皆さんとの距離がすごく近いんです。やったことへの手応えはすごくありますね。

モノの売り買いを越えたパートナー関係

▲ MRJ1号機到着時モーゼスレイク港湾局事務局長とパシャリ

日本とワシントン州は深い繋がりがあります。ワシントン州の輸出相手国として、日本は中国に次いで2位。確かにモノの売り買いでは中国が上回っていますが、企業進出では180社を超える日系企業が進出していて、これは世界1位です。日系企業による雇用創出数は、アジア1位の14,700人です。投資をして現地雇用を生み出しているという点で、日本のワシントン州に対する貢献は非常に大きいと言えます。また産業連携も進んでいて、その最たる例はボーイング787。機体構造の35%を日本企業が製造していることから「メイド・ウィズ・ジャパン(Made with Japan)」と言われています。最近では、三菱リージョナルジェット(MRJ)の開発・飛行試験拠点がワシントン州に置かれ、ワシントン州の支援を受けて開発が進められています。このように日本とワシントン州が互いに協力してグローバル市場に展開していく。つまり日本とワシントン州は、単なる取引の相手を越えた「パートナー」なんです。この関係をさらに強くするため、昨年6月に「経済と貿易関係の協力覚書」の署名を行いました。

日本の強みとシアトルの強み

これからは「IoT(Internet of Things)」の時代と言われています。モノや製造プロセスにインターネットを組み合わせないとグローバル市場では勝てません。シアトルにはクラウドで世界シェア1位2位を占めるアマゾンとマイクロソフトがいて、IoTの「I」があります。では「T」はというと、ハードウェア、モノづくり。まさに日本が高い技術を有する分野です。協力覚書がシアトルの「I」と日本の「T」を結びつける「o」の役割を果たすことで、世界中で売れるモノができればと考えています。

日本の強みとシアトルの強みのマッチングですね。他にもシアトルには日本とマッチングできる産業がたくさんある。パートナーとしての価値をもっと高めていける可能性を秘めています。
私のシアトルでの任期はもうすぐ終わりますが、種は残せたし芽も出始めていると思います。協力していただける方もたくさんいますので、これから花が咲き実がなることを願っています。

シアトルに住む日本人として

シアトルは本当に住みやすいところですよね。ただ、このような環境は一朝一夕にできたものではなく、ここに住む皆さんがボランティアや寄付などをして必死に作り上げたものです。これは自らの反省も含めてですが、我々日本人も、恵まれた環境に住まわせてもらっている一員として、もっと地域に貢献するための努力をしていくことが大事だと思います。地域のイベントに参加してアメリカの文化に溶け込んだり、逆に学校行事などを通じて日本文化を広めたり。相手の文化を尊重しつつ、日本のことを発信して相手にも理解してもらう。それが個人レベルでもパートナーとして認められることに繋がるのではないでしょうか。

*総領事館ってどんなところ?*

在外邦人の保護や外交事務、情報収集や国際交流・広報の拠点となる在外公館。パスポート発給や証明書の発行、出生届などの届出書の受理を行う。現在アメリカにはシアトルの他、17の日本国総領事館が設置されている。

在シアトル日本国総領事館
Consulate General of Japan in Seattle
601 Union Street, Suite #500, Seattle, WA 98101
開館時間:月~金
領事部:9am〜11:30am、1pm〜4:30pm
広報文化センター:9am〜11:30am、1pm〜4:45pm
☎︎206-682-9107
www.seattle.us.emb-japan.go.jp
info@se.mofa.go.jp
www.facebook.com/JapanCons.Seattle

三菱リージョナルジェット(MRJ)は、シアトルとモーゼスレイクに開発・試験飛行拠点を置いて、ワシントン州の経験豊富なエンジニアと協働して開発が進められています。実はMRJの装備品・部品の半分以上はアメリカ製であり、受注の8割以上はアメリカからです。シアトルの開発拠点のオープニングセレモニーの際、三菱航空機と一緒に「MRJはアメリカ・ワシントン州と共に開発し、共に造り、共に運航する航空機」だと大々的にPRしました。セレモニーでは州知事、市長、連邦議員、米連邦航空局がMRJをサポートするとスピーチしてくださり、アメリカでのMRJの知名度が一気に上がったのです。昨年9月から試験飛行機も順次到着して、試験飛行活動が本格化しています。
(写真提供:三菱航空機)

シアトル赴任直後より、シアトル日本商工会の皆さんから「ワシントン州での運転免許取得が大きな負担になっている」と聞いていました。当時は日本とアメリカで運転免許試験の相互免除の事例はなかったのですが、メリーランド州との間で初めての事例ができたので、商工会と連携して取組みを本格開始し、11月にワシントン州との間で協力覚書が署名されました。今年1月から運用開始し、何とか任期中に間に合わせることができました。これもアメリカではメリーランド州に次ぐ2例目。これだけ早く実現できたのは、ワシントン州における日系企業の活躍の重要性が認められたということですね。

佐々江駐米大使と州知事との間で署名された覚書です。国と州との間の覚書なんてユニークですよね。
これはカリフォルニア州に次いで2例目なのです。企業同士の連携に加えて、最近では特に日本の地方自治体が航空分野でワシントン州との連携強化のために取り組んでいます。協力覚書により、これらの動きを日本全体の大きな流れとしてとらえることができ、ワシントン州側の対応も非常に協力的になっています。愛知県とワシントン州が新たな協力覚書を署名し、岐阜県各務原市が若手人材育成プロジェクトを開始するなど、すでに具体的な成果も出ています。

シアトル桜祭・日本文化祭、ジャパンフェア(イーストサイド日本祭り/秋祭り)、サクラコンなどのイベントを通じて、日本の文化・魅力を発信しています。サクラコンでは総領事館のスタッフもコスプレを着るのですよ。

また、川澄選手が所属するシアトルレイン(2014年)、渡嘉敷選手が所属するシアトルストーム(2015・2016年)でジャパンナイトの開催に協力しました。昨年のシアトルストーム・ジャパンナイトではハーフタイムでの太鼓の演奏が好評で、普段日本文化に接する機会のないアメリカ人が携帯で動画撮影をしていたのが印象的でした。昨年はリオ五輪もあったので、商工会の皆さんと一緒に渡嘉敷選手壮行会を開催しました。渡嘉敷選手の「シアトルの日本人代表として暴れてきます」とのコメントの通り、五輪での大活躍には興奮しました。

 

ワシントン州は日本語のドライバーズガイドを出しています。ダウンロードは無料なので、運転前に読んできちんと理解するようにしましょう!
ワシントン州ドライバーズガイド: www.dol.wa.gov/driverslicense/guide.html

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