シアトルの食べ物といえば、やっぱりシーフード! 今回は話題のシーフードレストラン「クラブキング」と「フライング・フィッシュ」にお邪魔して、ゴージャスな海の幸をお腹いっぱい食べてきました。
- CRAB KING クラブキング
- Flying Fish フライングフィッシュ
CRAB KING
クラブキング
ベルビューのクロスロード・モールにある「クラブキング」は日本式のカニ鍋レストラン。北海道のグルメに惚れ込んだオーナーのチャオ・ペイペイ(曹佩佩)さんが、本格的な北海道料理をシアトルで提供しようと、昨年の11月に同店をオープンしたばかり。
取材・文:小村侑子 写真:寺島伶菜
生冷凍のフレッシュなカニ
カニ鍋と言ったら一番気になるのはカニの味。シアトル近辺のシーフードレストランでは「ボイル冷凍」——つまり一度茹でてから冷凍して出荷されるカニを使用しているところが多いのだとか。
その点クラブキングのカニはアラスカ産の「生冷凍」、獲れたてのカニを生のまま瞬間冷凍した状態で仕入れているので、味も鮮度もケタ違い。オープンにあたってペイペイさんが最も苦労したのがカニの仕入れ確保だという。「タラバガニとズワイガニ、どちらも獲れるのは1年のうちのほんのわずかな時期だけ。しかも生冷凍となると収穫分のほとんどを日本に輸出してしまうので、どの仕入れ業者も最初はまったく取り合ってくれませんでした。でもどうしても生冷凍のカニを出したくて、そこだけは絶対に譲れなかった」と語るペイペイさん。カニにかける情熱は計り知れない。
こだわりのローカルシーフード
本日いただいたのは「タラバガニ鍋コース(King Crab Hot Pot $58)」。
まずはマグロ、ハマチ、キングサーモンの刺身が笹の葉に乗って登場した。クラブキングのこだわりはカニだけではない。同店のシーフードはローカル産を中心に、選び抜いた新鮮なものだけを使っている。特筆したいのは、サーモンの中でもっとも美味と言われるキングサーモン。たっぷりと脂の乗ったやわらかな身は、サーモンの王様を語るのに相応しい。刺身と寿司の内容はその日の仕入れによって変わるため、季節に合ったシーフードを堪能できるのもうれしいところ。
続いては銀ダラの西京焼き。自身の脂によってキラキラと美しく輝く銀ダラが、品良く笹の葉に包まれている。そっと笹の葉を外して、ぷりぷりの身を箸で崩す。なつかしい味噌の香りがふわっと鼻を抜けて食欲は最高潮に。アラカルトでの一番人気メニューというのも納得だ。
アメリカンスタイルのジャパニーズなカニ鍋
ついにメインのカニ鍋の出番だ。一体どんなものが出てくるのだろうとワクワクしながら待っていると、ル・クルーゼのかわいらしいホーロー鍋が運ばれてきた。どーんと大きな鍋……ではなく、どんぶりほどのサイズの小ぶりな鍋がひとりひとつずつテーブルセットの上に置かれる。まるでアメリカンディナースタイルだ。これが本当に日本の鍋? はてなマークが止まらない取材班。
しかし鍋のフタを開けた瞬間、すべての疑問が吹き飛んだ。一同ワーッと歓声を上げる。真っ赤に色づいた大ぶりなタラバガニの足には、隅から隅までぎっしりと身が詰まっている。他の具材はニンジン、春菊、エノキ、豆腐、長イモ、ハクサイ、糸コンニャクと、まさに日本の鍋スタイルだ。黄金色の出汁は昆布、煮干し、鯖節をカリカリになるまで炒って粉末状にしたあと、酒、みりん、白だししょうゆでのばしたもの。強烈な磯の香りをふくんだ心地よい湯気があたりに広がる。
我慢できずにさっそくタラバガニの脚をわし掴みし、箸でぷりっと身を殻から押し出してそのまま口に運んだ。出汁に味付けがされているため、つゆをつける余分な手間いらず。具がなくなったらスープとして、濃厚なカニの旨みを思う存分味わえる。行儀が悪いと思いつつも、最後は鍋を両手で抱えてスープを飲み干してしまった。コースのラストは5種の寿司、和のデザートで〆。お腹も心も大満足のフルコースだ。
この一風変わった鍋スタイルは、オーナーが考案した同店オリジナルのもの。複数人でシェアする日本式の鍋に馴染みのないアメリカ人に、どうしたら鍋文化を受け入れてもらえるのか試行錯誤した結果、個別に提供できる小さな鍋を使うことにしたそうだ。すぐに食べられる状態で出てくるうえ、取り分ける必要もない。ローカルのお客様に大好評だという。従来の日本スタイルの大きな鍋をつつきたいという方は、オーダー時に伝えれば対応してもらえる。
北海道から来た熟練シェフ
腕をふるうシェフはもちろん北海道出身。料理長を務める館山正信さん、通称タテさんは和食の世界で43年の経験を持つ熟練のシェフだ。札幌で日本食屋を営んでいたタテさんはクラブキングからのオファーを受け、自分の店を手放しての渡米を決めた。オープン前の約4カ月間、シアトルのローカルレストランでシェフとして働きアメリカ料理を学んだという。「クラブキングで提供する料理は、日本食の伝統的な形式を守りながらもアメリカのスタイルに合わせています。日本とアメリカでは味付けや盛り付けの趣向が少し違うんですよ。今も毎日が勉強です」とタテさんは朗らかな笑顔で話す。
サブチーフの駒井瞬さんも同じく北海道出身のシェフ。かつては旅人として世界各国をまわり、オーストラリアの日本料理店で修行したという異色の経験を活かして、フレキシブルな発想力で料理長のタテさんをサポートする。「国境を越えた、世界中のみんなが楽しめる料理を作っていきます」と目を輝かせる駒井さん。強力なタッグだ。
カニ鍋のコースは複数あり、予算に応じたアップグレードも可能。ホスピタリティあふれる店内で、大切な人たちと最高の時間が過ごせることは間違いない。まだまだ寒い日が続くこのシーズン、カニ鍋でほっこりあたたまってみては。
CRAB KING
15600 NE 8th St., Bellevue, WA 98008
営業時間: 毎日5pm – 11pm
☎ 425-429-6800
Flying Fish
フライングフィッシュ
取材・文:小林真依子 写真:渡辺菜穂子
写真一部提供:Flying Fish
ユニークで洗練されたシーフード料理
再開発で賑わうサウスレイクユニオンのシーフードレストラン「フライング・フィッシュ」は、ユニークでありながら洗練された料理が魅力だ。1995年に開店以来、多くの賞を受賞してきた名実ともなう店。地元ノースウエストの食材をベースに、タイ、ベトナム、メキシコ料理など各国のエッセンスを取り入れたメニューが揃う。「フレッシュ」「サステナブル」「オーガニック」をテーマとする同店の料理には、新鮮な海の幸と、ローカルの農産物がふんだんに使用されている。「開店当時の味を守りながらも、常に新しいアイデアを取り入れているんです」と語るエグゼクティブ・シェフのプリンセスさんに、同店の人気メニューを紹介してもらった。
「ノースウエスト×アジア」の出会い
まずはハッピーアワーで人気の「生牡蠣」。当日に仕入れた新鮮なオイスターが氷の上に乗ってサーブされ、みずみずしい表面がプルプルと艶めいている。小粒ながらクリーミーで甘く、プルンとした舌触り。レモンでさっぱりと、またはワサビを隠し味としたオリジナル・カクテルソースでいただける。ディナー時は「生牡蠣のプレート(Sampler of the day)」が12個で28ドル。
「銀ダラのスモーク(Smoked Sake Marinated Black Cod $29)」は、カリふわな食感が魅力。日本酒でマリネされた分厚い銀ダラが、クリスピーなネギ入りお焼き、葱油餅(ツォンヨゥピン)の上に乗っている。一緒に口に入れると、ふんわりとした銀ダラとカリカリとしたお焼きの異なった食感のハーモニーがたまらない。「タマリンド」のフルーティーな酸味がアクセントとなったコクのあるオリジナルソースも、料理との相性抜群!
ビンチョウマグロの肉厚なブロックに圧倒される「アヒツナのステーキ(Fresh Blackened Albacore Tuna $28)」は、食べ応えのある一品。粗めの粒こしょうがスパイスとなったジューシー
なマグロに、しょうゆ、ワサビ、パクチーオイルとライムを使用したソースが絡んでぱくぱくと食が進む。付け合わせのリゾットケーキも濃厚ながらしつこくなく、お酒にぴったりな一品だ。
アラスカ海で採れる白身魚で、新鮮なものは非常に価値がある「ハリバットのフィレ(Pan Seared Halibut Fillet $36)」は日本人好みの優しい味。付け合わせのズッキーニが鮮やかな緑を添え、コーンがベースのクリーミーなソースが柔らかな魚の身をふんわりと包んでホッとする逸品。
かの有名なカリスマ主婦、マーサ・スチュワートにレシピを尋ねられたという同店シグネチャーメニューの「ダンジネスクラブ(Salt & Pepper Dungeness Crab $55)」は大人数でワイワイといただきたい。中国山椒がピリッと効いた2パウンドもある大きなカニは、ライムとフィッシュソースを使ったオリジナルソースにつけるとエスニックな表情に変わる。サイドにはなんと日本のそば! ごま油で味付けされ、カニの身と一緒に食べたりオリジナルソースで食べたりと、斬新なそば食体験ができる。
常に新しく進化し続ける
クリエイティブなオリジナルソースや食材のマッチングなど、同店の料理にはそのユニークな組み合わせに驚く。
「スタッフみんなが常にアイデアを出し合っているんです」とプリンセスさん。これまで培ってきた人気メニューを保持しながらも、常に新しくより良い料理を提供するために定期的なレシピの見直しを行っているという 。料理のプレゼンテーションもクリエイティブで、美しく、食欲をそそる。これこそが開店当初からの顧客をはじめ、トレンドに敏感なシアトライトで連日賑わっている理由だ。
広く見通しの良い店内は、カップルから家族まで落ち着いて食事が楽しめる空間となっている。 50人まで収容可能なプライベートルームもあり、ちょっとしたパーティーにも使える。シアトルならではのノースウエストとアジアのコンビネーションがおもしろい同店に、ぜひ立ち寄ってみてほしい。
Flying Fish
300 Westlake Ave N, Seattle, WA 98109
営業時間:月~木 11am-10pm、金 11am-11pm
土3pm-11pm、日3pm-10pm
ハッピーアワー 3pm-6 pm/8:30pm- 閉店まで(日曜日は終日)
☎ 206-728-8595
flyingfishseattle.com
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