シアトルの知恵ノート
知っておくと暮らしが豊かになるヒントを、シアトルで活躍するさまざまな専門家の方に聞きます。
「オンライン学習」という選択肢
近くに補習校がなかったり、週末は習い事があったりとさまざまな理由で十分な日本語学習ができない方へ。「オンライン学習」という選択肢を紹介します。
あおぞら学園
田崎真呂美■ロサンゼルス補習授業校あさひ学園の副校長として入社、7年以上マネジメントに携わる。2024年7月に退職。日課のお散歩後、手帳にご褒美シールを貼るのがささやかな楽しみ。自身のがん再発治療の経験を新たなエネルギーに変え、患者体験を生かしながら、がん患者や女性疾患に関するボランティア活動に取り組む。
AOZORA GAKUEN
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オンライン学習の可能性
近年、オンライン学習が急速に普及しています。現地校の学習や宿題、習い事、週末の試合、ボランティア活動など、多忙を極める子どもたちにとって、「場所や時間に縛られない学習のスタイル」が大きな魅力となっています。また、インターネットを通じて世界中のどこからでもアクセスできるため、他州や海外に住む友達と一緒に学ぶことができるのも大きな特徴です。
まず、オンライン学習のメリット、デメリットについて考えてみましょう。
1. さまざまな制約を超えたアクセス
オンライン学習の最大のメリットは、地理的・時間的・環境的な制約を超えた学びの機会を得られることです。日本人が比較的多く住んでいる地域で暮らしていても、補習校に通うには片道1時間以上かかる、時間的な余裕がない、集団の中で自分を表現しづらい、友達との関わりに疎外感を感じるなどの理由で日本語学習を諦めている例は多くあります。しかし、オンライン学習なら、それらの課題を抱える子どもたちにも平等に学習の機会を提供できます。
2.インタラクティブな授業
オンライン学習では、映像教材やチャット、学習用サイトを活用することで、効果的な授業展開が可能です。生徒が理解できない部分は即座に質問を受け付け、個別対応もしやすくなります。対面授業では手を挙げにくい場面でも、チャット機能を使えば、緊張やストレスなく質問しやすくなるでしょう。
3.コスト削減
オンライン学習は通学にかかる交通費や時間を節約できるため、経済的負担が軽減されます。また、移動時間が不要な分、学習時間をより効率的に活用できます。1セッションが短いオンライン学習では、移動中に車内で学ぶことも可能です。
1. 対面での人間関係が希薄になる
オンライン学習では、対面でのコミュニケーションの機会が少なくなります。特に、グループワークやクラスメイトとの交流を重視する場合は、この点は大きな課題となります。
2.自己管理が求められる
オンライン学習では、自分で学習環境を整えなければなりません。スマートフォンや漫画が近くにあると気が散りやすく、集中できなかったり、学習の進捗に遅れが生じたりすることも考えられます。自己管理能力が求められる点は、特に低年齢の子どもにとって難しい側面といえるでしょう。
3.技術的なトラブルのリスク
オンライン学習はインターネット環境や使用機器に依存します。接続が不安定だったり、機器の不具合で音声や映像に遅延が生じたりすると、学習に支障をきたすことがあります。
オンライン学習の必要性とこれから
新型コロナウイルスのパンデミックにより、学校が一時的に閉鎖され、オンライン学習が不可欠な手段となりました。この経験を通じて、オンライン学習の可能性と効果が広く認識されるようになりました。
また、オンライン学習はグローバルな教育機会を提供するツールとしても注目されています。日本語学習の機会が世界中に広がることで、国際的な交流の場が増え、より多くの人々に学びのチャンスが開かれます。オンライン学習が期待される理由のひとつは「アクセスの平等性」です。物理的・時間的な制約を抱える人々に教育を届ける手段として、オンライン学習は理想的な方法といえます。
さらに、技術の進化も大きな要素です。AIを活用した学習ツールや高品質な映像教材コンテンツなどの登場により、オンライン学習の質はますます向上し、魅力的な学習体験を提供できるようになりました。そして、これまで懸念されてきた友達とのつながりも、スクリーン上で考えや意見交換ができる便利なツールも多数生みだされてきています。こういった技術進歩により、オンライン学習は今後さらに進化し、学習環境の選択肢が広がり、より多様なニーズに応えることができるようになります。
課題はまだありますが、その可能性は無限大です。オンライン学習は、子どもたちの未来とともに進化し続けていくでしょう。