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宿題・家庭学習はどうして必要?〜シアトルの知恵ノート

知恵ノート

知っておくと暮らしが豊かになるヒントを、シアトルで活躍するさまざまな専門家の方に聞きます。

宿題・家庭学習はどうして必要?

宿題と家庭学習は、子どもたちの学びにとって大切なものです。土曜学校・現地校の教育現場から、家庭学習のポイントとサポートについてお伝えします。

清水楡華■2000年にベルビュー・チルドレンズ・アカデミー(プリK~4年生)の現地校を生徒10人で創始。ウィロウズ・プレパラトリー・スクール(5~12年生)も加わり、現在は1,100人が通う。また、日本語で学習するBCA土曜学校には、年中から高校3年生までの450人が在籍。少人数制のクラスでひとりひとりを大切にした、きめ細やかな日本語教育を実践している。

BCA土曜学校
BCA Saturday School
14640 NE. 24th St., Bellevue, WA 98007
☎425-649-0791(内線7)
saturdayschool@bcacademy.com
www.bcasaturdayschool.com

そもそも学校の「宿題」って何?

宿題とは、学校教育等において、教師が授業時間外に児童・生徒・学生に課する自己学習の課題を指します。実は、文部科学省が定めた学習指導要領に、「宿題」なる項目は含まれていません。「家庭学習を視野に入れた指導」や「総合的な学習の時間」の一環として扱われているのが日本の現状です。

宿題は、学校の授業外の時間に個人で取り組むものであり、自己管理や自己責任を身に付ける意義もあります。学校教育法には「教育目的に応じ必要な範囲で宿題を課すことは肯定されるが、宿題の課題量が適切かどうかや、宿題を課す方法が教育上の観点から妥当かどうかについては、指導要録等に示された方針、指導計画等に基づき慎重に検討し適正な実施を行うことが求められる」と書かれています。つまり、教師が宿題について十分に検討し、適切に課すことが求められているのです。また、子どもの自主性や自主学習を促すため、自由課題や課外活動の提供なども行われます。

宿題と家庭学習の取り扱われ方は諸外国でもさまざまです。学校の宿題に家庭の時間を使うということが認められず宿題を禁じている国、子どもの塾通いの負担にならないように宿題の量に制限を課した国がある一方、国ぐるみで宿題を教育改革の重要な柱として組織的な取り組みを実施する国も存在します。シアトル付近ではそれぞれの多様性もあり、宿題における認識については、学校と教師、教師と保護者間でずれが生じているようにも見えます。当校でも、宿題の量とそれに費やす時間はいつも課題に挙がります。

宿題がもたらすメリットとデメリット

宿題により、その日その週に学校で習ったことを復習して学力を定着させ、もう一度自分の力でおさらいすることで記憶が確立します。同時に、実はよく理解できていなかったところも見えてきます。宿題の種類によっては、習ったことを深く掘り下げる応用練習を通して実力が身に付きます。

宿題は、家庭での勉強習慣の定着にも役立つことでしょう。近年、子どもたちのスケジュールも複雑化して忙しく、その中で時間を自分で見つけ計画を立て、宿題の提出期間までに仕上げ、見直して出すという、ひとつのプロジェクトを達成することになります。失敗しても、次回からは直す部分がおのずと見えて工夫できるものです。これは、宿題と家庭学習の持つ大きな利点かと思います。子どもによっては、自分の興味のあることをより広く調べたくなるかもしれません。そして、将来に大切な自主学習へとつながっていくのです。

ただ、宿題が引き起こすいろいろな弊害もあります。まず、教師の負担です。教師は毎回の授業準備に加え、宿題の作成と点検、添削に多大な時間を取られます。また、宿題の結果をどのように評価に反映させるのかも大きな課題です。

次に、子どもの宿題をサポートするための時間的余裕がない保護者が多くいることです。高学年にもなると、子どもに「ここがわからない」と聞かれても正しく説明すること自体が難しくなります。子ども自身の負担とストレスもあるでしょう。最近は放課後の塾通いや習い事、スポーツなどにより、宿題に時間が取れない子どもがたくさんいます。

家庭でサポートできること

では、どのように家庭で宿題をサポートしてあげるべきでしょうか? もちろん、家庭環境、子どもの年齢や性格によっても違ってきます。

まずは保護者が宿題についてよく知っておくことです。今は、学校の情報システム化により、オンラインで保護者も簡単にアクセスできるようになりました。情報を事前に把握し、なるべく大きなテストや課題の提出日などの日程が近づいた際には、時間的余裕を作ってあげたいものです。毎日、「宿題はしたの?」と尋ねるよりも、「あさっては算数のテストね、頑張ってね」といった会話のほうが、子どもはドキッとしてやる気が高まります。

また、できるだけ宿題や家庭学習、読書にかける時間帯を決めておくのも効果的です。家族そろっての読書の時間や家庭学習の時間も、子どもたちの励ましになります。家族で取り組む時間を持つことで子どもたちの興味や苦手な部分もよくわかり、日頃の会話やサポートをする際、役に立つでしょう。たとえば、子どもが「天体宇宙」の宿題で困っていたり興味を持っていたりすれば 家族で夜空を見上げてみる、プラネタリウムへ遊びに行く、というのも良いアイデアと言えます。

現在ではオンラインで宿題を見てもらうなどの代行サービスも登場しています。ですが、せっかくの家族での学び場をあえてなくしてしまうようで、少し残念です。これから先の子どもとの人生を考えると、一緒に宿題に取り組む時間は今しかありません。素晴らしい「家族の時間」と捉え、もっと楽しんでみてはいかがでしょうか。