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日本帰国で注意したい税金の問題〜シアトルの知恵ノート

シアトルの知恵ノート

知っておくと暮らしが豊かになるヒントを、シアトルで活躍するさまざまな専門家の方に聞きます。

日本帰国で注意したい税金の問題

日本へ永住帰国をする際に気になるのが、税金の問題。永住権放棄や米国籍離脱をする際に必要な知識を早い段階で身に付けておきましょう。仕組みや手続きはとても複雑なので、困ったら会計士に相談することが解決の近道となります。

離脱税って?

離脱税(Expatriation Tax)は、米国出国税とも呼ばれ、アメリカに預金や株式、不動産などの資産がある人は、知っておくべき制度です。これは、永住権放棄や米国籍離脱と共に、米国にある保有財産を「売却」したものとし、その売却益に課税するものです。過去15年間で8年以上永住権や米国籍を保有していた人が、次のいずれかに該当する場合に課税されます。

放棄前5年の平均課税額が一定の金額以上である(2021年は17万2,000ドル)

放棄日時点で全世界での純資産額が200万ドル以上ある

さらに、放棄前5年の所得税申告書は必ず提出し、納税を全て支払っておく必要があります。申告期限は確定申告同様、通常は翌年の4月15日で、「Form 8854」を使用します。これを怠った場合、1万ドルという高額の罰金が発生するので、注意が必要です。

また、上記の項目に当てはまらない人でも、該当しないことをIRSに報告する義務があります。その際、証拠資料の提出を求められるので、金融機関から前もって保有財産の証明書を取得するなど、準備をしておきましょう。

過去5年の平均課税額は、既婚者が夫婦でジョイント申告している場合、その合計税額が対象になります。そのため、夫あるいは妻だけがグリーンカードなどの永住権、または米国籍を放棄する場合、前もって別々に確定申告をするというのは良い対策となるでしょう。

アメリカの確定拠出年金制度である401kの運用をしている人は、納税が延期されますので、最大限の財産を401kに入れておくというのもひとつの手です。401kはその資産を引き出した時点で課税対象となります。

FBARとFATCAについて

また、過去5年の確定申告には、FBAR(外国銀行金融口座レポート)やFATCA(外国口座税務コンプライアンス法)も含まれます。これらは共に、米国籍または永住権保持者の個人情報と全世界に持つ財産の把握、脱税防止を目的としています。申告状況を見直し、済んでいない場合は修正申告を行います。FBARは6年、FATCAは3年さかのぼって申請する必要があります。ミスがあれば、脱税の意図はなかった旨を記した説明文を提出します。

FBAR………確定申告と同時期に提出する海外銀行口座の詳細。アメリカ国外の各金融機関に保有もしくは財務上関与する総額が1年のうち1度でも1万ドル以上になった場合に申告する。申告しなかった場合、1万ドルを超える罰金が科される可能性がある。日本に永住帰国をしても、永住権や米国籍を保有している限り申告が必要。

FATCA………アメリカ国外の金融資産が年間最高残高5万ドル以上(独身)、または10万ドル以上(既婚)の場合、海外銀行口座の詳細だけでなく、社内貯金、財形、住宅貯蓄、株式、債券なども報告する義務がある。申告漏れや過少申告があれば、1万ドルを超える罰金が発生。確定申告と同時期に、「Form 8938」と「Statement of Specified Foreign Financial Assets」というフォームを、FBARとは別に提出する。

2021年度確定申告のポイント

● 締め切り

ワシントンDCでの祝日、イマンシペイション・デーが、今年は振り替えで前日の4月15日(金)に祝われるため、4月18日 (月)が期限。何らかの理由で申請が遅れる場合は、この日までに延長申請を。

※パンデミックの影響により変更になる可能性あり。

● クレジットの拡大・緩和

チャイルド・タックス・クレジット ……SSN(ソーシャル・セキュリティ・ナンバー)保持者対象。受給資格年齢が昨年度の16歳から、17歳(2021年12月31日時点)までと変更されました。クレジットも、0歳から5歳で3,600ドル、6歳から17歳で3,000ドルと大幅アップ。また、昨年度までは一部のみ還付可能でしたが、条件付きで全額還付となりました。

チャイルド・アンド・ディペンデント・ケア・タックス・クレジット……子どもを保育園などに預けた際の費用を部分的にクレジットとして税額から控除でき、2021年度の確定申告に限り、養育費用申告限度額が最大35%から、最大50%に拡大されています。控除額は子ども1人の場合、1,050 ドル(2020年度)から4,000ドル(2021年度)、子ども2人以上の場合、2,100 ドル(2020年度)から8,000ドル(2021年度)に変更。

● エコノミック・インパクト・ペイメント

SSN保持者対象。アメリカ政府から3度目の給付金の満額(1人1,400ドル)を受け取っていない場合、確定申告での申請が可能に(所得制限あり)。

尾崎真由美■全米各地に個人・法人の確定申告、ペイロール業務、経理代行、税務コンサルティングの総合的な会計サービスを提供しているシアトル国際会計事務所の代表。ワシントン州CPAとして、国際的な税金問題を専門に長年の経験を持つ。

シアトル国際会計事務所
Seattle Kokusai Kaikei

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(参考資料)