子どもとティーンのこころ育て
アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。
子どもとちゃんと会話できていますか?
~大切な親子のコミュニケーション術
ゆっくり過ごせる夏休みは、親子でいろいろなことを語り合って心の絆を深めたいものですね。だけど実際には、子どもが癇かんしゃく癪を起こしたり黙り込んだりして「こんなはずじゃなかった」とがっかりすることもしばしばです。今回は、心理学者のトマス・ゴードン博士が提唱する『親業』にもとづく、子どもの心を開くためのコミュニケーション術を紹介します。ゴードン博士は、親が子どもを変えようとして、以下の12の対応をすると親子関係が悪化すると述べています。「宿題」を例に挙げて、これらの12の対応を紹介します。
1)命令「宿題やりなさい」
2)警告「やらないとゲームできないよ」
3)義務付け「宿題はやるべきだ」
4)助言「簡単な宿題からしてみたら?」
5)正論「宿題やれば成績上がるよ」
6)批判「頑張れない子はダメね」
7)侮辱「お兄ちゃんはできたのにね」
8)分析「できないのはSNS依存だからかも」
9)同情「宿題たくさんで可哀想」
10)尋問「まだやってないの? 何度言わせるの?」
11)機嫌とり「やらなくてもいいよ」
12)皮肉「友だちと遊ぶ時は元気よね」
上記の対応よりも子どもを傷つけてしまう危険なコミュニケーションがあります。それが、以下の「無視」、「仕返し」、「嫌がらせ」です。
「無視」不機嫌な態度で、ため息をついたり聞こえないふりをする。
「仕返し」スマホやiPadを取り上げるなどの罰を与える。
「嫌がらせ」家族や友人に「この子は何度言ってもやらないのよ」と悪口を言う。
こうした対応を繰り返していると、子どもは腹を立てて反抗するか、親に何を言っても無駄と口を閉ざしてしまいます。また、自己肯定感が低下して無力感が強くなり、心の病気にもかかりやすくなります。
それでは、どういった対応をすればよいのでしょうか。それは「能動的な聞き方」をすることで、親が自分の話を理解してくれたと子どもが感じるように、子どもの話をしっかりと聞くことです。具体的には「相手の言葉を繰り返す」、「まとめて言い換える」、「相手の気持ちをくむ」ことです。次は、同じように宿題を例に挙げて、「能動的な聞き方」を使った親子の会話を紹介します。
子ども「宿題やりたくない」
親「そうなんだ、宿題やりたくないんだね」(相手の言葉を繰り返す)
子ども「うん。もう分かっている内容だからやっても無駄なんだ」
親「内容を理解しているから、やる必要がないと思うのね」(まとめて言い換える)
子ども「うん。それに出しても先生が点数つけ忘れることもあるし」
親「そっか、頑張って出しても点数がつかなかったらガッカリだね」(相手の気持ちをくむ)
能動的な聞き方と甘やかしは似て非なるものです。能動的な聞き方は子どもとの境界線を明確に引き、子どもを理解することに焦点を置きます。子どもは自分の気持ちを聞いてもらえるので、尊重されたと感じて自己肯定感が高まります。これにより、自分で物事を決め、その決定に責任を持つ自立的な思考が育っていきます。また、自分の気持ちを大切にできるので、相手の気持ちも尊重できます。その逆に、甘やかしは子どもとの境界線が曖昧で、子どもの気持ちに迎合して言いなりになっている状態。子どもが「宿題やりたくない」と言った時に親が「やらなくてもいいよ」と許可すると、子どもは自分の行動に責任を取らなくてもよくなります。
アドラー心理学では、問題の責任は誰に帰するかを考えて、その問題の当事者を見極める「課題の分離」を説いています。宿題をやらないことの結果は子どもに帰するので、宿題は子どもの課題になります。親が12の対応を使い子どもを操作すると、子どもの問題解決能力を奪い依存心を強め、その結果「とにかくやりなさい」、「自覚が足りない」などとさらに12の対応で追い詰めることに。親が子どもの話を否定せずにじっくり聞くことで、子どもは自分で考え行動するようになります。もし子どもの方から「宿題を手伝ってほしい」と言ってきた場合は、子どもが自分で問題解決しようと模索している証拠。必要に応じて手伝ってあげることで信頼関係が強まります。
この夏休みに能動的な聞き方を活用し、子どもの本音にとことん付き合って親子の絆を深めていけるといいですね。
1)命令「宿題やりなさい」
2)警告「やらないとゲームできないよ」
3)義務付け「宿題はやるべきだ」
4)助言「簡単な宿題からしてみたら?」
5)正論「宿題やれば成績上がるよ」
6)批判「頑張れない子はダメね」
7)侮辱「お兄ちゃんはできたのにね」
8)分析「できないのはSNS依存だからかも」
9)同情「宿題たくさんで可哀想」
10)尋問「まだやってないの? 何度言わせるの?」
11)機嫌とり「やらなくてもいいよ」
12)皮肉「友だちと遊ぶ時は元気よね」
上記の対応よりも子どもを傷つけてしまう危険なコミュニケーションがあります。それが、以下の「無視」、「仕返し」、「嫌がらせ」です。
「無視」不機嫌な態度で、ため息をついたり聞こえないふりをする。
「仕返し」スマホやiPadを取り上げるなどの罰を与える。
「嫌がらせ」家族や友人に「この子は何度言ってもやらないのよ」と悪口を言う。
こうした対応を繰り返していると、子どもは腹を立てて反抗するか、親に何を言っても無駄と口を閉ざしてしまいます。また、自己肯定感が低下して無力感が強くなり、心の病気にもかかりやすくなります。
それでは、どういった対応をすればよいのでしょうか。それは「能動的な聞き方」をすることで、親が自分の話を理解してくれたと子どもが感じるように、子どもの話をしっかりと聞くことです。具体的には「相手の言葉を繰り返す」、「まとめて言い換える」、「相手の気持ちをくむ」ことです。次は、同じように宿題を例に挙げて、「能動的な聞き方」を使った親子の会話を紹介します。
子ども「宿題やりたくない」
親「そうなんだ、宿題やりたくないんだね」(相手の言葉を繰り返す)
子ども「うん。もう分かっている内容だからやっても無駄なんだ」
親「内容を理解しているから、やる必要がないと思うのね」(まとめて言い換える)
子ども「うん。それに出しても先生が点数つけ忘れることもあるし」
親「そっか、頑張って出しても点数がつかなかったらガッカリだね」(相手の気持ちをくむ)
能動的な聞き方と甘やかしは似て非なるものです。能動的な聞き方は子どもとの境界線を明確に引き、子どもを理解することに焦点を置きます。子どもは自分の気持ちを聞いてもらえるので、尊重されたと感じて自己肯定感が高まります。これにより、自分で物事を決め、その決定に責任を持つ自立的な思考が育っていきます。また、自分の気持ちを大切にできるので、相手の気持ちも尊重できます。その逆に、甘やかしは子どもとの境界線が曖昧で、子どもの気持ちに迎合して言いなりになっている状態。子どもが「宿題やりたくない」と言った時に親が「やらなくてもいいよ」と許可すると、子どもは自分の行動に責任を取らなくてもよくなります。
アドラー心理学では、問題の責任は誰に帰するかを考えて、その問題の当事者を見極める「課題の分離」を説いています。宿題をやらないことの結果は子どもに帰するので、宿題は子どもの課題になります。親が12の対応を使い子どもを操作すると、子どもの問題解決能力を奪い依存心を強め、その結果「とにかくやりなさい」、「自覚が足りない」などとさらに12の対応で追い詰めることに。親が子どもの話を否定せずにじっくり聞くことで、子どもは自分で考え行動するようになります。もし子どもの方から「宿題を手伝ってほしい」と言ってきた場合は、子どもが自分で問題解決しようと模索している証拠。必要に応じて手伝ってあげることで信頼関係が強まります。
この夏休みに能動的な聞き方を活用し、子どもの本音にとことん付き合って親子の絆を深めていけるといいですね。
参考文献