Home アメリカ生活 断捨離でなりたい自分になる...

断捨離でなりたい自分になる<空間づくり編>

いよいよ平成も終わり、新しい元号に。断捨離でスッキリさせて、気持ち良く新しいスタートを切りましょう。

断捨離でなりたい自分になる

 

人生のステージに合う心地良い空間づくりで新しい運気が流れ込む

『断捨離』著者のやましたひでこ氏は、これまで4度シアトルを訪れ、講演会も行っています。それは「シアトル・ダンシャリアンズ」という断捨離仲間の存在があるからこそ。そのひとり、グリスウォルト信子さんに断捨離ライフの魅力を紹介してもらいました。
※断捨離はやましたひでこ氏の登録商標です。

取材・文:ハントシンガー典子

全力疾走の生活をやめたら楽になれた
体験談をシェアしてくれた信子さん現在も断捨離実践中で心と身体が喜ぶうるおいとゆとりある住まいを目指している

もともとは「あれこれ何でもやりたいタイプ」だったという信子さん。毎日、夫や娘のために家事やボランティア、仕事、セミナー通い、付き合いなどを一生懸命こなしていた。「家族のために、忙しく頑張ることが正しいと信じていました。でも、全力で頑張っているのに何かがおかしい、何かが足りない。今思えば、気力も体力も追い付いていなかったんでしょうね」。2011年10月、事件は起きた。9歳になる娘のために張り切って準備したスケート場での誕生会で右靭帯損傷を負い、突然、1歩も動けない生活になってしまったのだ。断捨離を知ったのは、ちょうどその頃だった。「ネットで断捨離を実践した家のビフォア・アフターの動画を見つけて、その違いに驚きました。以来、夏の日本帰省時に講演会場まで足を運び、ひでこ先生のシアトル講演準備で出会った断捨離仲間と共に断捨離を実践してきました」

2018年9月には断捨離検定1級も取得。モノを手放すことで、何でもかんでもやらなくてはいけないという思い込みも手放し、楽になれたと信子さんは語る。「断捨離とは、大事なモノを選び抜くこと。以前の私は物があるほど豊かで、多くのことをやるほど充実すると勘違いしていました。でも、家の中は散らかり、時間は常に足りず、閉塞感と疲労感を覚えていたんです」。モノを手放すことは、執着や恐れ、罪悪感、思い込みも一緒に手放すことになるのだという。まず、目の前の山を片付けるだけで、詰まりが取れたように、物事がスムーズに流れるようになる。「無自覚でしたが、家の中同様に、頭の中もガラクタが詰まっていたんだと思います。断捨離した今は、その代わりにゆとりと潔さが入ってきた気がします」

 

住まいを整える=自分を整える
ひでこ氏の著書断捨離シリーズ大切な箇所はマーキングして見返している

物量が圧倒的に多い現代、視覚から飛び込んでくるモノは常に心に影響を与え、気持ちを乱す。「家にいる間、散らかるモノを見ては、これ片付けないと、あれもまだ終わってない、あそこごちゃごちゃしてるなぁ、と四六時中うれしくないメッセージを受け取っていたんですよね。常に次にすべきことを考え、全然くつろげない状態で、昭和さながらの努力と根性の毎日(笑)。よく頑張っていたなぁと思います」

断捨離は、繰り返しモノと向き合いながら自分の内面を見つめ、より自分らしい生き方を探すプロセス。生きている限り、断捨離に終わりはないが発展はある。ひでこ氏からそう学んだと、信子さんは話す。「お金もかからず、今すぐ始められ、効果をすぐに実感できます。まず取りかかるべきは、身の回りのモノとの関係を問い直し、大切なモノを選び、役目の終わったモノを手放していく作業。実践するうちにいろんな気付きがあります」

その先にあるのは、気持ちの良い空間づくりだ。自分自身や家族をもてなす住まいを目指し、工夫するうちに家事が楽しくなってきたそう。家事を快適な暮らしのためのメンテナンスと捉え、「この家の空間づくりの時間とチャンスが自分にはある!」と視点が変わると、面白くなった。住まいと共に信子さん自身も変わると、家族との関係も自然と良くなっていった。

「子どもは日々成長し、スケジュール、健康、仕事、家族それぞれの優先順位も常に変わります。食に旬があるように住まいにも旬がある。身体と同じで、住まいも新鮮な空気と新陳代謝が大切だと断捨離から学びました」。家族との日常は当たり前ではなく、実はありがたいことだと気付いてからは、日々の些細な出来事まで深く味わえるようになった。時間も身体も有限。毎日の営みや大切な人とのつながり、出来事を大事にするために、信子さんはできるだけシンプルな暮らしを心がけている。

 

子どもや仕事にもうれしい変化

現在は高校生の娘の衣服、おもちゃなども、手放すモノは娘の選択に任せ、干渉はしないように努めてきたという信子さん。「取っておけば良かった」と失敗もあるが、試行錯誤するうちに子どもが自分の決断を信頼できるようになることが大切だと考えている。親はサポートをするだけで押し付けない。モノにとどまらず、学校、習い事、スケジュールなど、徐々に子どもの領域を尊重できるようになったと信子さんは明かす。断捨離では、モノ自体というより、モノと自分の「関係性」に向き合うことに意味がある。たとえ家族でも、人のモノと領域は侵害すべきではない。「実践していくうちに、他人を非難したり、自分のために相手が変わることを要求したりしていた自分に気付きました。他人は変えられないし、変えられるのは自分だけ。断捨離を通して、自分の幸せは自分の責任だと腑に落ちました」

自宅でピアノ教室を開いている信子さんは、断捨離に出合ってから仕事のやり方、コンセプトも変わったと話す。「生徒さんひとりひとり、学習スタイルもスケジュールも違い、ピアノと個々の関係性があります。技術の上達は大切ですが、生徒さんが忙しい中でレッスンをする意味や意義を考え、それを尊重しています。美しいピアノの音色と自分で演奏する喜びをサポートするレッスンをしようと、これまでと視点が変わりました」。自分で練習曲を選んでもらうようにしてから、チャレンジングな曲を弾けるようになった生徒もたくさん。うれしい効果が出てきている。「昔は練習せずにレッスンに来るとは何事だと思っていたんですけれどね(笑)」

自分が満たされていない時ほど、相手に対する要求も多くなるもの。心境が変わってくると自分の機嫌が良くなり、人間関係で相手に対する不満も減ってきたと信子さんは感じている。周囲との関係性が変わると、良い出会いにも恵まれるようになった。「断捨離は全て解決する魔法ではなく、相変わらず親子バトルも夫婦バトルもあります。そんな中でも気持ちを軽く、愉快に人生を進んでいきたいものです」

 

信子さんが実践した断捨離あれこれ

財布
以前は入れっ放しのレシートやポイントカード、クーポンなどでパンパンだった。日常的に点検している今は、必要最低限の物だけが入り、軽く、使いやすい状態。

 

衣服
高かった、まだ着られる、痩せたら着るなどと執着し、服を溜め込んでいたクローゼットも断捨離。つい先日、産後に履けなくなったままだったジーンズもやっと手放したところ。

 

冷蔵庫

中身を全部出して、賞味期限切れの物、傷んだ物、誰も食べない物は処分。ひと目で何が入るかわかるように収納すると、パッと取り出せて、買い物や献立作りに迷いがなくなる。

 


亡くなった元新聞記者の父に影響を受けた大量の本は最も執着の強いアイテム。断捨離を始めたら、父との関係性のわだかまりと共に手放すことができ、驚くほどの解放感を味わった。

 

キッチン&ダイニング

テーブルやキッチン・カウンターの上は、いつでも使えるように空けておく。物が少ないと掃除が早く、掃除ロボットも大活躍。居心地の良い空間で料理するのが楽しくなった。

 

信子さんが実感した断捨離効果

①ゆとりができる
空間、時間、思考の風通しが良くなり、余裕ができて、住まい、心身共に軽くなった。

 

②今大切なことに集中
過去や未来を心配する時間とエネルギーを、今の自分や家族、大切な物に使えるように。

 

③モノ、お金、資源を、大切に扱える
これまでいかにゴミを出してきたか自覚した今は、本当に必要な物だけを取り入れている。

 

④自分と折り合いを付けられるようになる
空間とモノ、家族と仕事、時間や体力と行動、経済面など調和を考え、豊かな生活が実現。

 

⑤自分自身を大切にすると、人間関係も向上
モノと向き合い、手放すと、心も解放された。自分を大切にできると、周りとの関係もよくなる。

 

断捨離のコツ
  • 今の自分にとって必要かどうか
  • 今の自分にとってふさわしいかどうか
  • 今の自分にとって心地良く感じるかどうか
断捨離では、自分を主体に考えて自分で決断する自分軸、今現在を考える時間軸を大切に! 物を増やすのではなく、「引き算」すると考えます。モノの片付けは入口に過ぎず、モノと向き合い、選択していく中で、不思議と人生全体が整っていきます。

 

断捨離でなりたい自分になる