10月3日、カークランド・パフォーマンスセンターで草月いけばなパフォーマンス「スカルプチャーいけばな」が開催された。同企画は、新しい生け花の ありかたをより多くの人に見てもらいたいと願うシアトル周辺の草月流の有志が、グループ「Ikebana Power」を結成して実現したものだ。
開演30分前、会場のロビーは入場を待ちかねる観客でごった返していた。いけばな草月流の本部講師であり、インスタレーションアーティストとしても 世界的に活躍する川名哲紀氏のダイナミックなパフォーマンスが見られるとあって、心待ちにしている人々だ。観客の約半数は日本人以外の人のように思 えた。日本の文化の素晴らしさはグローバルに受け入れられており、時には日本人よりも外国の人々のほうが関心が強いのではないかと思わされることが しばしばあるが、今回もそれを感じさせられた。開演時には、約400席の会場はほぼ満席だった。
草月流いけばなの解説と川名氏の紹介がアナウンスで流れた後、リズミカルな音楽をバックに川名氏と5、6人の助手が人の丈ほどもある大きな枝や花木 を持って舞台上をスピーディーに動き回る。川名氏の動きに合わせて、舞台上の花器に生けられた裸のようだった枝木に、さまざまな植物がつぎつぎと入 れられ、それにつれて刻々と姿を変える様子を、観衆はほとんど息を飲むようにして見入っている。「地球の鼓動を聞きながら自然界の生命体を理解し、 創造力に結びつける」。 川名氏のモットーが舞台の上で現実となって披露されていた。気が付くと、ノースウエストの夏を思わせる緑豊かな作品、オリ ンピック国立公園を思わせる苔を生かした作品、冬を思わせる枯れ木で構成された作品、そして豪華な紅葉をふんだんに使った秋の作品と、4つもの巨大 な作品が作りあげられていた。
最後に、十数名の助手全員が4つの作品を舞台上でぐるぐる移動させ、観客から驚きの声が上がった。それは、まるで作品がダンスでもしているかのよう だった。あっと言う間の1時間半だった。