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俳句のグループ レニア吟社

取材・文:杉崎奈紗 写真提供:レニア吟社

アメリカで俳句に親しむ

1934年に結成され、今年82年目を迎えた俳句のグループ、レニア吟社には、現在22名が在籍。そのうち数人は、日本およびイギリスから参加しているそうだ。毎月第一土曜日にシアトルの藤見荘の会議室で句会が行われ、当日出席できない人はEメールで寄稿するようになっている。シアトルに来て初めて俳句を詠んだというメンバーも多いそうで、取材当日も新メンバー2人が参加していた。
句会とは、俳句グループ(正式には結社と言う)に所属する人が集まり、みんなの作った俳句を鑑賞し、評価し合う場のこと。レニア吟社では毎回、兼題と呼ばれるテーマに沿って作った俳句を各人が5句ずつ作ってくることになっている。取材で参加した3月の句会の兼題は「雪解」だった。参加者は会の始めに自作の俳句を一句づつ紙に書いて無記名で提出。その中から、各人が良いと思うものを選んで、意見を交換をするのが通常の会の流れ。

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▲︎80周年記念基調講演白百合大学 粂井輝子教授

視野が広がる醍醐味

俳句の楽しみ方にはいくつかのポイントがあるそうで、そのひとつは視野の広がり。「俳句を始めてよかったことは、視野が広がったこと」とみんなが異口同音に語る。何気なく自然を見る中で、些細なことに気が付くアンテナを張ることができるようになったという。また、美しい日本語や日本文化の再発見もひとつに挙げられた。「ふたつ目は詠み手(作った人)と読み手(鑑賞する人)の関係です。俳句というのは読み手が完結させる文学であり、感じ方や俳句から浮かぶ景色は完全に読み手に委ねられているんです」と幹事を務める茂木ひさをさん。同じ句であっても読む人によって頭に浮かぶ景色が異なる。意見を共有するのはそのためで、そこに楽しみがあるようだ。

五・七・五で作り出す世界

「投句」とか「清記」など専門的な言葉が飛び交う中、少し緊張しつつの参加だったが、お茶を飲み、お菓子を食べながらの句会は、想像していたよりも和やかでアットホームな雰囲気。選句の間は楽しそうに語り合いながら、笑いが絶えない。特選になった作品が発表されると、作者の嬉しそうな笑顔にこちらまで嬉しくなる。私は、晴れ上がった色鮮やかな春の情景を想像させられた「蒼穹の忙しく花芽鳥揺する」を特選句に選んだ。
歳時記と漢和辞典を片手に言葉を調べながら俳句を読んでいる人が何人もいて、勉強熱心なのに驚かされた。歳時記は俳句の季語を解説した辞書のようなもので、俳句を詠む人には必需品だとか。俳句の花辞典というものまであると、この日初めて知って、日本語の語彙の豊富さを再認識させられた。限られた文字でひとつの世界を詠むには、どの言葉を選ぶのかがとても大切になってくる。俳句初体験の私には、漢字や旧仮名遣いなど難しいことが多かったが、俳句の奥深さとその魅力が少しわかったような気がする。

▲︎3月の定例句会の様子 撮影:ソイソース
▲︎3月の定例句会の様子 撮影ソイソース

俳句は座の文学

「俳句は、仲間で集まって、作品を共有することから座の文学と呼ばれています。詠み手とそれを鑑賞する読み手の交流が句会の一番の醍醐味なんですよ」と、茂木さんは言う。俳句を社交の場として楽しむメンバーも多く、日本から遠く離れた地で日本語の素晴らしさを語り合い、俳句を詠むスキルとしても仲間と切磋琢磨しているそうだ。月に一度の句会のほかにも様々なイベントが行われる。年に一度、遠出して俳句を作る吟行は、いわば「大人の遠足」。2014年には結成80周年を記念して、貸し切りバスでレニア山へ出かけた。句会の集まりを超えて、メンバー同士で吟行することもあるそうで、仲の良さが伺える。写真家としても活躍する茂木さんの写真に俳句を加える写真俳句も同社ならでは。新しい取り組みにも積極的で、4月にはシアトル日本庭園で開催される俳句イベントに参加し、日英バイリンガルの俳句朗読を行う予定だそうだ。

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レニア吟社80周年記念レニア山吟行(上下)
▲︎レニア吟社80周年記念レニア山吟行上下

レニア吟社
定例句会:毎月第1土曜日12:30pm~
場所:藤見荘(1400 S. Main St., Seattle)
連絡の上、見学可。初心者大歓迎
年会費:$60
問合せ:☎︎ 425-343-9648(茂木)
☎︎ 206-325-9285(高村)
✉ rainierginsha@gmail.com