米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
トランプ大統領の移民法政策
2025年1月にトランプ大統領が就任。トランプ政権では移民法政策が重要な課題となっており、就任と同時に多くの移民関連の大統領命令に署名しました。具体的には、米・メキシコ国境警備の強化、不法移民の強制送還、出生地主義の見直し、不法移民への人道的支援に対する連邦政府資金の打ち切り、外国人登録制度の施行強化などが挙げられます。今回は、これらの移民政策の一部について紹介します。
出生地主義
アメリカの憲法修正第14条では、出生地主義が保証されています。これは、アメリカで生まれたすべての人にアメリカ国籍を与える制度です。そのため、両親がアメリカ市民でなくても、観光ビザや学生ビザなど、非移民ビザで一時的に滞在している妊婦がアメリカで出産した場合、その子どもにはアメリカ国籍が与えられます。
トランプ大統領は、就任前からこの制度の廃止を強く訴えており、就任と同時に出生地主義に関する大統領命令に署名しました。この命令では、次の2つのケースに該当する子どもにはアメリカ国籍を与えないとしています。
1. 出生時に母親が不法滞在者であり、父親がアメリカ市民またはグリーンカード保持者ではなかった場合
2. 出生時に母親が合法的に滞在していたものの、その滞在資格がビザ免除プログラム(Visa Waiver Program)や観光ビザ、学生ビザなど一時的なものであり、父親がアメリカ市民またはグリーンカード保持者ではなかった場合現在、この大統領令は一時的に差し止められています。
ゴールドカード
トランプ大統領は、富裕層の外国人を対象に、500万ドルでグリーンカード保持者と同等の権利を取得できる「ゴールドカード」を販売する計画を発表しました。実質上、これは現在のEB-5移民投資家ビザと置き換わる制度とされ、近いうちに販売開始予定としています。
外国人登録要件
移民国籍法第262条に基づき、外国人登録制度の施行が強化されます。今回、新たに登録が必要となる外国人は次の通りです。
1. 14歳以上で、ビザの申請時に指紋採取または登録がされておらず、30日以上アメリカに滞在するすべての外国人(入国後30日以内に要登録)
2. 14歳未満で、30日以上アメリカに滞在する外国人(入国後30日以内に親および法定後見人が要登録)
3. 以前に登録されているかどうかにかかわらず、14歳の誕生日をアメリカで迎えた外国人(誕生日から30日以内に要登録)
登録後、何らかの特別な理由で免除されない限り指紋採取がなされます。その後、国土安全保障省(DHS)から登録証明が発行され、18歳以上の外国人は常にこれを携帯することが求められます。登録を怠った場合、罰金や禁固刑が科される可能性があります。
ただし、アメリカに滞在しているほとんどの外国人は、すでにこの要件を満たしています。以下のような人は改めて登録する必要はありません。
• グリーンカード保持者
• I-94またはI-94W (紙版・電子版を含む)を取得した非移民
• アメリカ入国前に移民または非移民ビザを取得した人
• 合法的な永住権の申請者 (Form I-485、I-687、I-698、I-691、I-700を提出した人)
• 就労許可カード (EAD) 保有者
国土安全保障省は、外国人が登録要件を完了するための申請書と手続き方法を発表しました。2025年2月25日以降、登録対象者は登録手続きの準備として移民局(USCIS)*1のウェブサイトで オンラインアカウントを作成する必要があります。登録手続き開始後は、USCISオンラインアカウントを通じて申請書を提出します。
自分の権利を理解する
在留資格に関係なく、アメリカでは憲法の下で一定の権利が保証されています。 現在、『Know Your Rights』 という出版物が非営利団体や教会などで配られています。これはアメリカ移民法弁護士協会が発行したもの*2です。移民としての権利を理解するための参考資料として活用してください。
*1.USCIS https://www.uscis.gov/alienregistration
*2.Know Your Rights
www.aila.org/aila-files/20036845-F2B6-4749-9E38-E47CBA77C3EE/Know-Your-Rights-2025-Update-2.pdf