知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
外国人がアメリカで STEM 関連職に就く際、移民ビザのオプションも
前回のコラムでは、外国人がアメリカでSTEM 関連の職業に就職する場合の選択肢として、非移民ビザ(一時的にアメリカに住み、働くことを可能にするビザ)について取り上げました。今回は移民ビザのオプションについてお話しします。
この場合の移民ビザとは、永住権(グリーンカード)のことです。非移民ビザとは異なり、無期限にアメリカに住み、働くことができます。雇用ベースのグリーンカード申請は、外国人労働者の能力・学歴・経験によって5つのカテゴリがあり、さらにその中でサブカテゴリに分かれます。ここではSTEM 関連職に就職する際に適したカテゴリについて説明します。
申請基準は、カテゴリによって異なりますが、基本的には、外国人労働者が専門分野でトップレベルに達した極少数の傑出者であることを証明する実績ベースです。または、オファーされている仕事がアメリカ国内で不足していて、外国人労働者の雇用が、同様に雇用されたアメリカ人またはグリーンカード保持者の労働条件に悪影響を与えないことを証明する求人募集がベースとなります。
●Extraordinary Ability:
科学・芸術・教育・ビジネス・スポーツの分野で、卓越した能力を持っている外国人労働者
上記の専門分野でトップレベルに達した極少数の外国人労働者に適合します。専門分野での学歴、経験、実績と、グリーンカード取得後も専門分野での活動を続ける意思があることを証明できれば、自己申請も可能です。つまり、労働認定証(レーバー・サティフィケーション)も雇用主のスポンサーも必要ありません。
●Outstanding Professors and Researchers:
著名な大学教授や研究者
このカテゴリは、専門分野で著名な大学教授または研究者として、国際的に認められている外国人労働者に適合します。専門分野で少なくとも3 年間、大学教授として、あるいは研究者としての経験があること、また、スポンサーが大学の場合は、オファーされたポジションが終身雇用の大学教授、あるいは研究者であることが条件となっています。スポンサーが私企業の場合は、その企業が専門分野の研究者を3 人以上雇用していること、さらに専門分野に貢献していることを証明しなければなりません。労働認定証は求められませんが、雇用主のスポンサーは必要で、自己申請はできません。
●Multinational Managers and Executives:
多国籍企業重役・管理職者
海外で過去 3 年のうち最低 1 年間、マネジャーまたはエグゼクティブでの就労経験がある多国籍企業に属する外国人労働者が、アメリカの関連会社でマネジャーやエグゼクティブとして働く場合に適合します。学歴や過去の経験から、マネジャーやエグゼクティブ職に就く能力があることの証明が求められます。労働認定証は不要ですが、スポンサー企業は必要です。
●Advanced Degree Professionals and Persons of Exceptional Ability:
修士号またはそれ以上の学位を持つ専門職者や優れた能力の保持者
このカテゴリは、専門分野で修士号以上の学位を持っている外国人労働者(専門分野で学士号を取得し、さらに最低 5 年間の専門分野での就労経験がある場合でも可能)、あるいは科学・芸術・ビジネスの分野で非常に優れた能力を持っている外国人労働者に適合します。 このカテゴリの申請には、労働認定証とスポンサー企業が必要となります。ただし、申請者の能力や技術・技能がアメリカの国益にとって有利であると判断された場合は、 国益に基づく免除申請(National Interest Waiver)ができます。これが認められると、労働認定証もスポンサー企業も不要です。
●Professionals and Skilled Workers:
専門職者と技能労働者
専門分野で学士号以上の学位を取得している外国人労働者、あるいは2 年以上のトレーニングまたは経験を要する職に就く外国人労働者に該当します。このカテゴリでは、労働認定証とスポンサー企業が必要です。
就労ビザで数年働いた後にグリーンカードを申請するケースが多いのですが、初めからグリーンカードを申請することもできます。また、グリーンカード取得後 5 年で、帰化申請が可能になります。