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10年間有効のグリーンカード更新時における注意点〜知っておきたい身近な移民法

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

10年間有効のグリーンカード更新時における注意点

グリーンカード(米国永住権)は10年に1度の更新が必要です。今回は、グリーンカードがスムーズに更新できるよう、更新時に気を付けておきたい点についてお話しします。なお、このコラムの内容は、10年間有効のグリーンカードの更新に限ったものです。2年間有効の条件付きグリーンカードからの更新が必要な方を含め、その他の状況には該当しない内容も含まれますので注意してください。

アメリカ人やグリーンカード保持者との結婚を通してグリーンカードを取得した外国人配偶者は、結婚後2年以内にグリーンカードを取得した場合に限り、当初2年間有効の条件付きグリーンカードが与えられます。条件を削除するためには、条件付きグリーンカードの有効期限が切れる90日以内に、外国人配偶者とそのスポンサー配偶者は共同で条件を削除する申請(Form I-751:Petition to Remove Conditions on Residenceを使用)を行います。そのプロセスを終えた方は、10年ごとにグリーンカードの更新申請(Form I-90:Application to Replace Permanent Resident Cardを使用) をすることになります。現在、オンライン申請と郵送申請の2種類があります。すでに10年間有効のグリーンカードを持っている方の更新申請はグリーンカードの条件削除申請とは異なり、使用する申請書も違うため、要注意です。

10年に1度の更新が必要なグリーンカードは、その有効期限が切れる6カ月前から申請できます。審査期間はケースバイケースで、数カ月から1年ほどかかっている場合も多々あります。申請後に移民局が発行する申請受理書をまず受け取りますが、そこにはグリーンカードの有効期限が切れても12カ月間は延長すると記載されています。もし新しいグリーンカードが届くまでに有効期限が切れてしまっても、その申請受理書があれば、期限切れのグリーンカードと合わせて永住者であることを証明できます。

グリーンカードは永住者であることを示す証明書に過ぎませんので、グリーンカードの有効期限が切れてしまったことを理由に永住者としてのステータスを失うことはありません。ただし、グリーンカード保持者は、常に移民上の身分を証明できる状況になくてはなりません。グリーンカードの有効期限が切れていることによって、雇用や出入国、運転免許証の更新、不動産の購入、住宅ローンの手続きなどに問題が生じる可能性があります。有効期限が切れてしまったことに気付いたら、直ちに更新申請を行うべきです。

グリーンカードの更新申請は、アメリカ国内で行います。海外の米国大使館・領事館では申請できません。そのため、アメリカ国外に滞在している場合は、アメリカに戻って更新を申請する必要があります。もし、アメリカ国外に滞在している間にグリーンカードの有効期限が切れてしまったら、アメリカを出国して1年未満の場合、パスポートと期限切れのグリーンカードで渡航は可能となる場合があります。しかし、飛行機の搭乗や米国入国審査にて問題が発生することも考えられますので、なるべくこのような状況にならないように注意しましょう。

アメリカ出国からすでに1年以上が経過していて、再入国許可証(Reentry Permit)も取得していない状況ですと、問題はもっと深刻です。最初からグリーンカードの申請をし直すか、あるいは帰国居住者ビザを申請する必要があります。後者の場合、「アメリカ国外での滞在は、アメリカを出国した時点では短期間の予定で、アメリカに戻る意思があって出国したものの、出国後、自身のコントロール外の理由でアメリカに戻れなかった」ということを証明しなければなりません。

移民局は、更新時にもバックグラウンド・チェックを行います。重・軽犯罪いずれの場合も、犯罪歴がある方は専門家に相談することを勧めます。犯罪のレベルによっては、国外追放となる可能性が高いものもあります。年間を通して長期間、アメリカ国外に滞在している場合、生活の基盤がアメリカにあるのかどうか、移民局が疑問を持つことが考えられます。なるべく6カ月以上の出国は避けるか、アメリカを長期間離れる場合は再入国許可証を取得するべきでしょう。

永住者は、常にグリーンカードを携帯する義務があります。グリーンカードの紛失、盗難、破損が起きた場合には、10年の更新時を待たず、直ちにグリーンカードの再発行手続きを行わなければなりません。再発行手続きにも、通常の更新申請書(Form I-90)を使用します。

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118