知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
新型コロナウイルスが与える移民法手続きや入国への影響
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、アメリカでは政府を中心に、さまざまな対策がなされています。新型コロナウイルスによる国内初の死者が発生したワシントン州では、学校の閉鎖、図書館や美術館などの休館、バレエ・演劇・コンサートなどの公演の休止が決まりました。新型コロナウイルスの影響は、移民法の手続きにも広がっています。面会の必要のあるサービスは3月18日から5月3日まで停止
3月初旬には、シアトルの移民局職員が、新型コロナウイルス感染による死者が出たカークランド市の長期療養施設を訪れた後、体調を崩したため、感染予防策としてシアトル移民局が一時閉鎖されました。その結果、その間にスケジュールされていた指紋採取やインタビューなどの予約がキャンセルされる事態が起こりました。その後、一時的に運営は再開されましたが、待合室の人数制限などにより、予約がキャンセルされるケースもありました。また、体調がすぐれない方、14日以内に渡航歴のある方、あるいはコロナウイルス感染者と接触した疑いがある方は、積極的に予約を再スケジュールするよう求められました。結局、3月17日に、移民局はインタビューや帰化宣誓式、指紋採取のアポイントメントなど、面会の必要のあるサービスを3月18日から4月1日まで停止することを発表しました。その後、この措置は5月3日まで延長されています。
これは、シアトルだけでなく、全米の移民局に該当します。この間にスケジュールされているインタビューや宣誓式の予約はキャンセルとなり、移民局が通常運営を再開した後、再予約通知を発送すると発表しました。指紋採取のアポイントメントは、自動的に再スケジュールされ、後日通知が発送されます。また、InfoPassで予約を確保した方の場合は、運営再開後、各自InfoPassから予約を取り直すようにとのことです。
米国大使館・領事館での通常ビザ業務の面接をキャンセル/停止
3月20日、国務省は、米国大使館・領事館の通常ビザ面接業務を停止することを発表しました。また、在日本米国大使館・領事館では、それに先立ち3月19日から外交・公用ビザを除く非移民ビザの面接を一時的に停止することを発表しました。
現段階で面接再開の目処は立っておらず、具体的な期間は発表されていません。この発表により、3月19日またはそれ以降に予定されていた非移民ビザの面接はキャンセルとなりますが、ビザ申請料金は支払い日より1年間有効ですので、面接が再開されたら新たに申請料金を支払うことなく改めて面接の予約を取ることができます。また、この日までにすでに面接を済ませている申請に関しては、引き続き審査は継続されるとのことです。
なお、この措置は、公証業務を除き、アメリカ人に対する業務には該当しません。13歳以下の子どもや80歳以上の高齢者のビザ、またはビザの更新など、面接の必要ないビザ郵送申請は引き続き受理されます。これに伴い、在日米国大使館・領事館は、郵送によるビザ更新の条件を大幅に緩和することを発表しました。郵送によるビザ更新の条件は以下の通りです。
- 日本に滞在している。
- ESTA申請を却下されたことがない。
- 2011年3月1日以降、イラン、イラク、北朝鮮、スーダン、シリア、リビア、ソマリア、またはイエメンに渡航していない。
- イラン、イラク、北朝鮮、スーダン、またはシリアの国籍を持っていない。
- 日本国内外において逮捕歴がない。
- 前回のビザに「Clearance received」または「Waiver granted」の記 載がない。
- 現在のビザがまだ有効である、または有効期限が切れてから12カ月 以内である。
- 現在のビザは、14歳以降に発給されたものである。
- 今回のビザ申請は、前回ビザが発給された同じ領事館で行う。ただ し、 前回に札幌の領事館で申請した場合は、東京の大使館へ、福岡の領 事館で申請した方は、大阪の領事館に申請書を郵送。
- 今回のビザ更新は、B-1/B-2、C1/D、I、J(プログラムおよび SEVIS番号が前回と同じ場合に限る)、E-1/E-2、O/P、Q、H、また はL(ブランケットL-1を除く)の更新で、それぞれのビザの申請条件を 満たしている。
また、ケースバイケースですが、緊急に米国へ渡航する必要のある場合は、例外的に面接が認められる場合があります。
今回のコラムでは、新型コロナウイルスが与える移民法手続きや入国への影響について説明しましたが、状況は毎日のように変わっていますので、最新情報を移民局または米国大使館・領事館のウェブサイトなどで確認してください。