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移民局申請料の値上げ

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。

移民局申請料の値上げ

前回の記事で、移民局の申請料値上げをお伝えしましたが、10月2日より実施されることになりました。10月1日までは現在の申請料、10月2日以降の消印がある申請は新しい申請料を支払います。

移民局の運営予算の約97%は申請料から出ています。そのため、移民局は定期的に申請料と支出をレビューし、必要に応じて運営費をカバーできるように申請料を調整することになっています。現状の申請料では、年間約10億ドルが不足しているため、助成金が提供されない限り、移民局は8月末から70%(約1万3,000人)の職員の一時解雇を検討していました。これに伴い、審査の遅れや停止が懸念されていましたが、8月25日、移民局は一時解雇の撤回を発表しました。ただし、ジョセフ・エドロウ政策副部長は、今回の撤回は運営費用の削減によって実現したため、今後は審査が遅れる可能性があること、また、助成金なしでは将来的に一時解雇を避けられる保証はない、通常の運営に戻るには議会の介入が必要であると伝えました。

今回提案されている値上げに関して、いくつか例を挙げて説明します。今回の値上げは平均20%、2016年以来となりますが、中には値下がりする申請もあります。また、オンライン申請が可能な申請に関しては、オンライン申請により通常の申請料から10ドルがディスカウントされます。たとえば、グリーンカード更新申請は通常の415ドルに対して、オンライン申請の場合は405ドルになります。

今回の値上げで特に目立つのが帰化申請で、現在の640ドルから1,170ドルへと84%値上がりします。非移民就労ビザ申請に関しては、ビザのカテゴリによって申請料が大幅に変わり、H-1Bビザのベース申請料は現在の460ドルから555ドルへと21%の値上がりですが、Lビザのベース申請料は460ドルから805ドルへと75%も値上がりします。

また、現在のアジャストメント申請はバイオメトリックス料金を含め1,225ドルですが、これにはアジャストメント申請中の渡航許可や就労許可の申請料も含まれています。しかしながら、今回の発表によると、10月2日以降はアジャストメント申請にこれらの申請は含まれないことになっているため、アジャストメント申請中に渡航許可や就労許可が必要な人は、これらの申請料を別途支払わなければならず、申請料が現在の1,225ドルから2,270ドルへと85%値上がりします。また、アジャストメント申請が長引き、渡航許可や就労許可の更新が必要になった場合、新たに申請料が発生します。なお、現在のバイオメトリックス料金は85ドルですが、10月2日以降は一部の例外を除き、原則それぞれの申請料にバイオメトリックス料金が含まれます。

プレミアム・プロセスに関しては、すでに2019年12月より申請料が1,440ドルに値上がりしましたので、さらなる値上げはありませんでした。しかし、移民局はプレミアム・プロセスの審査期間を15カレンダー日から15営業日に変更しました。

申請の種類 現在の料金 変更後の料金
グリーンカードの更新申請(Form I-90) 455ドル 415ドル
家族ベース移民ビザ申請(Form I-130) 535ドル 560ドル
雇用ベース移民ビザ申請(Form I-140) 700ドル 555ドル
再入国許可申請(Form I-131) 575ドル 590ドル
アジャストメント申請(Form I-485) 1,140ドル 1,130ドル
就労許可証(Form I-765) 410ドル 550ドル
H-1非移民就労ビザ申請(Form I-129) 460ドル 555ドル
L非移民就労ビザ申請(Form I-129) 460ドル 805ドル
O非移民就労ビザ申請(Form I-129) 460ドル 705ドル
グリーンカード条件解除申請(Form I-751) 595ドル 760ドル
帰化申請(Form N-400) 640ドル 1,170ドル
フィアンセ・ビザ申請(Form I-129F)) 535ドル 510ドル
ステータス変更・延長申請(Form I-539) 370ドル 400ドル

COVID-19による就労許可証遅延に対する救済策

COVID-19は移民局の審査にも大きな影響を与えています。特に顕著なのは以前から遅れが指摘されていたEADカード(就労許可証)の作成においてです。EADカードとは、学生のOPT、EビザやLビザの配偶者、永住権申請のペンディング中に取得できる就労許可です。有効期間は申請資格によって異なり、EADカードの提示が就労許可の証明とされています。つまり、申請が認可されてもEADカードが手元に届かない限り、就労はできないというルールです。そのため、カードが手元に届かないことで就労や今までの勤務先での雇用継続ができないなどの問題が生じていました。そこで移民局はEADカードが手元になくても、2019年12月1日から2020年8月20日までに就労許可申請の「認可通知」があれば、雇用主に就労許可として提示できるように一時的にルールを変更しました。なお、このルール変更は2020年12月1日まで有効で、それまでにEADカードを雇用主に提示しなければなりません。

五十畑 諭
神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 カンザス州およびワシントン州弁護士協会会員、米国移民法弁護士協会会員。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118