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移民を規制する大統領布告令の延長

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。

移民を規制する大統領布告令の延長

昨年12月31日、トランプ前大統領は、2020年4月22日発表の大統領布告令10014号と、6月22日発表の大統領布告令10052号を、それぞれ2021年3月31日まで延長することを発表しました。それぞれの大統領布告令は、失効日が延長された以外、内容に変更はなく、対象となる外国人にも変更はありません。

10014号が対象とする外国人は、アメリカへの移民が対象であり、引き続き以下の通りです。

トランプ前大統領が署名した2020年4月22日の時点で:

  1. 米国外に滞在している人
  2. 有効な移民ビザを取得できていない人、かつ
  3. 移民ビザ以外の公式な入国許可書類を取得できていない人

また、10014号の対象外となる人は以下の通りです。

  1. グリーンカード保持者
  2. 国務省長官または国土安全保障省長官によりコロナウイルス対策に従事すると判断された医師・看護婦またはその他の医療関係者、およびその配偶者と21歳以下の子ども
  3. EB-5移民投資家プログラムを通してビザを申請している外国人
  4. 米国市民の配偶者と21歳以下の子ども
  5. IR-4またはIH-4カテゴリ・養子縁組を成立させるためにアメリカに入国する孤児
  6. 司法省長官の助言の下、国務省長官または国土安全保障省長官によってアメリカの法執行にとって重要と判断された外国人
  7. 米軍隊員、およびその配偶者と子ども
  8. SIまたはSQカテゴリ・特別移民ビザ、およびその配偶者と子ども
  9. 国務省長官または国土安全保障省長官により入国が国益につながると判断された外国人

10052号大統領布告令の対象とする外国人は、10014号で対象とする外国人に加えて、例外が細かく規定されていますが、基本的に以下の通りです。

  1. H-1B専門職者
  2. H-2B非農業季節・短期労働者
  3. L国際企業内転勤者
  4. J交流訪問者(インターン、研修生、教員、キャンプ・カウンセラー、オペア・プログラム、サマーワーク&トラベル・プログラム参加者)

上記に帯同する外国人も含まれるため、たとえば、H-1Bビザ保持者の配偶者や21歳未満の子どもで通常であればH-4ビザを取得できる外国人も含まれます。なお、大統領布告令の対象となるのは、布告令が施行された2020年6月24日時点で、(1)アメリカ国外に滞在していた、(2)有効な非移民ビザを取得していなかった、そして(3)ビザ以外で、アメリカへ入国するために必要な入国許可書類(Transportation Letter、Advance Paroleなど)を取得していなかった外国人となります。

10052号は、2020年6月24日にアメリカ国内に滞在していた外国人には該当しません。また、この大統領令によって、現在有効なビザが取り消されることもありません。「有効な非移民ビザを所持していなかった」の解釈に関しては、2020年6月24日時点ですでに取得していたビザを使って入国する場合のみ、大統領令の対象にならないということです。たとえば、2020年6月24日にアメリカ国外に滞在していたH-1Bビザ保持者は、有効なH-1Bビザを使ってアメリカに再入国することができますが、2020年6月24日にアメリカ国外に滞在していたF-1ビザ保持者が、H-1B申請認可の後、領事館のビザ・サービス再開時にH-1Bビザを申請し、H-1Bビザ保持者として入国できるようになるのは、大統領布告令失効後となります。

また、10052号は、以下の人には該当しません。

  1. グリーンカード保持者
  2. 米国市民の配偶者または子ども
  3. アメリカの食料サプライ・チェーンに重要な一時的労働またはサービスを提供するために入国を求める外国人労働者
  4. 国務省長官、または国土安全保障省長官により、入国がアメリカの国益に必要だと認められた外国人

これらの大統領布告令は、上記の特定の移民・非移民ビザ就労・訪問者のアメリカへの入国を2021年3月31日まで停止するというものなので、アメリカ国内でグリーンカード(I-485 Application for Adjustment of Status)を申請している外国人は引き続き対象にはなりません。

また、たくさんの例外が存在する中で、実際に大統領令に影響されるのはどのようなケースかという疑問を持たれた方も多いかと思います。一例ですが、米国市民の親、21歳以上の子ども、兄弟の家族関係に基づく移民ビザ申請、グリーンカード保持者の配偶者や21歳以下の子どもの家族関係に基づく移民ビザ申請、対象外にリストされている以外の雇用関係に基づく移民ビザの申請は引き続き移民規制の対象となります。


*同記事は、ワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得し、カンザス州及びワシントン州において弁護士資格を持ち、K&I Lawyersを琴河利恵弁護士と共に創業した五十畑諭弁護士が、在シアトル日本人の読者に向けて解説しているものです。詳細については、K&I Lawyersなど移民法の専門家へお問い合わせください。また、米国移民局ホームページ(英語)はこちらです。

五十畑 諭
神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 カンザス州およびワシントン州弁護士協会会員、米国移民法弁護士協会会員。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118