知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
日本からアメリカに兄弟・姉妹を呼び寄せる場合
米国移民法は、米国市民やグリーンカード保持者の家族関係に基づくグリーンカード申請を認めています。日本からアメリカに兄弟・姉妹を呼び寄せる場合、以下の通り、2ステップのプロセスになります。
ステップ1:家族ベース移民ビザ申請 – スポンサーが米国市民であること、さらに申請する兄弟・姉妹との家族関係の証明
ステップ2:移民ビザ・グリーンカード申請 – 外国人の兄弟・姉妹の移民資格審査
グリーンカードが申請可能な家族関係は、主に年間割り当て数に制限のない非優先区分と、制限のある優先区分の2種類に分かれます。
非優先区分の対象となるのは、米国市民の配偶者や親、21歳未満で未婚の子どもなどです。このカテゴリに相当する米国市民の家族は、グリーンカードの年間割り当て制度の対象にならないため、待ち時間なくグリーンカードを申請することができます。優先区分には4つのカテゴリがあり、いずれのカテゴリもグリーンカードの年間割り当て制度の対象となります。グリーンカード申請には「プライオリティー・デート」、つまりウェイティング・リスト上の優先順位があり、その順番が来ないと、最終的にグリーンカード申請のプロセスには至りません(ステップ2)。そのため、待ち時間が発生します。
米国市民やグリーンカード保持者がスポンサーになれる家族の範囲には制限があります。今回のトピックである米国市民の兄弟・姉妹は、第4優先区分に相当します。グリーンカード保持者が兄弟・姉妹のグリーンカード申請のスポンサーになることはできないため、グリーンカード保持者が日本から兄弟・姉妹を呼び寄せたい場合は、グリーンカード保持者が帰化し、アメリカ国籍を取得した後、兄弟・姉妹のグリーンカードのスポンサーになる必要があります。
なお、アメリカ市民であっても、義理の兄弟・姉妹のグリーンカード申請でスポンサーにはなれません。たとえば、日本人が米国籍の人と結婚し、その配偶者が日本人である義理の兄弟・姉妹のグリーンカードのスポンサーになる、ということはできません。
グリーンカードの年間割り当て制度の対象となるカテゴリでは、グリーンカードを申請できるようになるまで、長期間かかるケースも見られます。その待ち時間は、カテゴリによっても異なりますし、突然大幅に前進したり後退したりすることも。一般的には、優先区分が下になればなるほど、待ち時間が長くなる傾向にあります。
自分がウェイティング・リストのどの辺りにいるか、プライオリティー・デートを調べるためには、米国務省が毎月出版している『ビザ・ブリテン』を確認します。ビザ・ブリテンは、グリーンカードのプライオリティー・デートを伝える公報で、自分のプライオリティー・デートが、 その記載されている日付より早いと、グリーンカードを申請することができるようになります。
たとえば、2021年11月のビザ・ブリテンを見ると、第4優先区分に当たる米国市民の兄弟・姉妹の申請は、さらに国別に設定されている以外は、2007年3月22日と記載されています。これは、2021年11月には、プライオリティー・デートが2007年3月22日より前の申請であれば、移民ビザ・グリーンカード申請(ステップ2)に進めることを意味しています。単純計算すると、第4優先区分の申請には現在、約14年かかっていることになります。ちなみに、家族関係に基づくグリーンカード申請の場合、移民局がI-130家族ベース移民ビザ申請を受理した日がプライオリティー・デートになります。
なお、日本からアメリカに兄弟・姉妹を呼び寄せる場合、兄弟・姉妹の配偶者、および21歳未満で未婚の子どもも申請に含めることができます。ただし、前述の通り、申請期間が長いため、その間に配偶者と離婚したり、子どもが成人して結婚をしたりと、申請開始当初から家族関係が変わる可能性があります。そのような場合は、このカテゴリでの申請資格を失ったり、あるいは、別のカテゴリへの移行を視野に入れたりしなければならないため、ケースバイケースのレビューが必要となります。