Home アメリカ生活 知っておきたい身近な移民法 2024会計年度のH-1B...

2024会計年度のH-1B登録〜知っておきたい身近な移民法

知っておきたい身近な移民法

米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) 五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。

2024会計年度のH-1B登録

H-1B ビザのスポンサー企業は、電子登録システムに申請を希望する外国人労働者を事前登録し、当選した場合にのみ申請できることになっています。

移民局は、2024年度のH-1B登録期間中、合計78万884件の登録があったことを発表しました。2021年度の27万4,237件、2022年度の30万8,613件、そして2023年度の48万3,927件と比較して、2024年度は登録数が大幅に増加したことがわかります。

このうち、登録条件を満たしていたのが75万8,994件で、残りの2万1,890件は、重複登録など登録条件を満たすことができなかったケース、あるいは登録期間終了前にスポンサー企業が登録を削除したケースなどと考えられます。

また、登録条件を満たしている75万8,994件のうち、40万8,891件は複数のH-1B登録を持つ外国人労働者であることも判明しています。これも、2021年の2万8,125件、2022年の9万143件、そして2023年度の16万5,180件と比較して、大幅な増加になります。

現在のシステムでは、1社のスポンサー企業が1人の外国人労働者に対して複数の登録をすることはできません。しかしながら、正当な採用通知(Job Offer)を複数のスポンサーから受けている外国人労働者に対して、それぞれのスポンサー企業が登録を行うこと自体は違法ではありません。ただし、この抜け穴を利用し、当選確率を高めようと違法行為をする企業の存在が確認されています。

移民局は、2023年度と2024年度の証拠に基づき、すでに詐欺調査を実施し、一部の申請を却下したり取り消したりしたことを明かしています。また、犯罪の可能性があるものに関しては、連邦警察に付託したことも公表しました。

登録に当たり、スポンサー企業は、登録に含まれる情報が真実であること、実際に正当な採用通知が存在すること、また、当選確率を不当に高めるために第三者や組織と協力していないことを供述しなければなりません。移民局は、引き続き登録の不正防止に向けて取り組んでいくとコメントしています。

なお、登録条件を満たしていた75万8,994件の中から、すでに11万791件が当選しています。H-1B発給の上限は8万5,000件ですが、当選者の中から実際に申請を提出しなかったり、申請を提出したものの却下されたりするケースがあることを考慮し、上限よりも約2万5,000件多く当選させています。

そのほかの移民法最新事情

●非移民ビザ申請料の値上げ
米国務省は2023年5月30日(火)より、一部の非移民ビザ申請料を値上げすることを発表しました。
-B-1商用・B-2観光ビザや、FやM学生ビザ、J交流訪問者ビザの申請料 160ドル→185ドル
-H、L、O、P、Q、Rといった非移民就労ビザの申請料 190ドル→205ドル
-E-1貿易駐在員ビザ・E-2投資駐在員ビザの申請料 205ドル→315ドル

●OPT就労許可申請でプレミアム・プロセスが利用可能に
以下のカテゴリに該当するF-1ビザを持つ学生は、OPT就労許可申請にプレミアム・プロセスを利用できるようになりました。
-(c)(3)(A) – Pre-Completion OPT
-(c)(3)(B) – Post-Completion OPT
4月3日以降、上記いずれかのカテゴリでの申請時、Form I-765(Application for Employment Authorization)とForm I-907(Request for Premium Processing Service)を同時に提出する場合にのみ、プレミアム・プロセスが適用されます。この発表前にすでに上記のカテゴリでOPT就労許可を申請していて、現在も審査期間中である場合は、Form I-907を提出することによって、申請をプレミアム・プロセスにアップグレードすることができます。
なお、プレミアム・プロセスは、申請のカテゴリによって料金が異なりますので、注意が必要です。このカテゴリでのプレミアム・プロセス料金は1,500ドルで、これはForm I-765の申請料に追加されます。

●在福岡米国領事館が非移民ビザのサービスを終了
在福岡米国領事館では、2023年4月20日をもって非移民ビザのサービスを終了しました。非移民ビザ申請は引き続き、東京、大阪、那覇、札幌で受け付けられます。

神戸市出身。明治大学卒業。大手外資系コンピュータ会社でのシステム・エンジニア職経験後渡米。 アメリカのハートランド、カンザス州のワシュバーン大学ロースクール(法科大学院)を卒業、ジュリス・ドクター(J.D.)取得。 カンザス・ワシントン両州において弁護士資格を持つ。K&I Lawyers設立以前は、 ロサンジェルスおよびシアトルにある移民法を中心とする法律事務所での勤務を通じて、多様な移民法関連のケースの経験を積む。 また、移民法以外の分野、特に家族法、遺言・検認・遺言状執行、会社設立、その他民事訴訟にも精通する。カンザス州およびワシントン州弁護士会会員、 米国移民法弁護士協会会員。移民法関連のトピックにおいて、たびたびセミナーを開催。 6100 219th St., SW, Suite 480, Mountlake Terrace, WA 98043 ☎ 206-430-5108 FAX 206-430-5118