知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
H-1Bビザ申請
H-1Bビザは、特殊技術や知識が必要とされる専門職に就く外国人労働者に適合するビザで、専門分野での学士号、または同程度の実務経験が求められます。通常、アメリカの4年制大学を卒業した外国人に利用されることが多いビザですが、海外で学士号を取得した、 あるいは同程度の実務経験を持つ外国人労働者も対象となります。
H-1Bビザ保持者の滞在期間は3年で、3年の延長が可能なため、通算6年まで滞在可能です。最長滞在期間に達した後、米国外に1年滞在すれば再度H-1Bビザを申請できます。ただし例外として、グリーンカードを申請中のH-1Bビザ保持者の場合は、6年目以降の滞在が認められるケースもあります。
会計年度(10月1日から翌年9月30日まで)におけるH-1Bビザの新規発給数には限りがあり、これをCAPと呼びます。現在、このCAPは一般枠が6万5,000件、特別枠(アメリカの大学で修士号以上の学位を取得した人)が2万件と定められています。なお、CAPの対象となるのは、新規のビザ申請者です。更新や転職の場合、あるいはスポンサーが高等学校以上の教育機関、その関連・提携関係にある非営利団体、非営利や政府の機関のリサーチ組織に該当する場合など、CAPの対象にならないケースもあります。
H-1Bビザは職歴のない新卒者でも申請可能ですが、その職務内容が専門分野での学士号以上の学位取得を最低条件とする専門職であることを証明しなければなりません。そのため、一般教養(Liberal Arts)といった特定の分野に限らない学位は認められません。また、日本語が話せるということだけでは専門職と言えず、条件を満たすことができません。申請が可能な職種に制限はありませんが、あえて例を挙げるならば、エンジニア、会計士、教員、財務アナリスト、建築士、薬剤師、IT・コンピューター関連の技術職、カウンセラーなどがH-1Bビザ対象と考えられます。
H-1B保持者の扶養家族(配偶者と未婚で21歳未満の子ども)は、H-4ビザを取得することによって、H-1Bビザ保持者と共にアメリカで生活することができます。また、H-4ビザ保持者の配偶者は、一定の基準を満たすことによって就労許可の取得も可能です。
次に、新規H-1Bビザ申請のプロセスについてですが、まず、H-1B ビザのスポンサー企業は電子登録システムに申請を希望する外国人労働者を事前登録し、当選した場合にのみ申請を提出できることになっています。2023年会計年度(2022年10月1日〜2023年9月30日)に H-1B ビザをスポンサーする予定の企業は、2月21日の東部時間正午からアカウントを作成でき、実際の登録は3月1日の東部時間正午から3月18日の東部時間正午までの間に行います。これ以降の登録は受け付けられません。登録料は受益者1人につき10ドルです。登録の仕方に関しては、移民局のサイト(www.uscis.gov/working-in-the-united-states/temporary-workers/h-1b-specialty-occupations-and-fashion-models/h-1b-electronic-registration-process)で確認できます。
スポンサー企業は、複数の外国人労働者の登録が可能ですが、1人につき登録は1回に限られています。もし誤って外国人労働者1人に対して複数の登録を行ってしまった場合、まだ登録期間内であれば、余分な登録を削除できますが、登録期間終了後に発覚した場合には、その外国人労働者の全ての登録がキャンセルされます。いずれの場合も10ドルの登録料は返金されません。また、抽選に外れた場合でも登録料の返金はありません。
登録期間終了日までにH-1Bビザの年間発給数を超える登録があった場合、移民局は抽選を行い、当選結果を通知します。当選者は、申請受け付け期間に、H-1Bビザ申請を提出し、審査結果を待ちます。申請が認可された場合、H-1Bビザ保持者として就労が開始できるのが、最短で新会計年度となる2022年10月1日からです。海外で審査の結果を待っていた方、あるいは米国内に滞在しているもののステータス変更を申請しなかった方は、一度出国して、米国大使館・領事館にてH-1B ビザを取得することになり、アメリカ入国後に就労が可能です。