知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
ナショナルビザセンター
ナショナルビザセンター(NVC)は、米国務省の領事局の一部で、ニューハンプシャー州にあります。その主な役割は、米国大使館での移民ビザ申請における書類審査です。
一例ですが、アメリカ人と日本人が結婚して、アメリカ人が日本人配偶者のグリーンカードをスポンサーする場合、「I-130 Petition for Alien Relative」と呼ばれる請願書を移民局に提出します。日本人配偶者が、H-1Bビザなど非移民ビザ保持者として、すでに合法的に滞在している場合は、同時に「I-485 Application to Register Permanent Residence or Adjust Status」と呼ばれる、米国内で非移民ビザのステータスから永住者のステータスに変更する申請を行えるケースもあります。その場合、申請の管轄は最初から最後まで移民局となり、ナショナルビザセンターと関わることはありません。
しかし、外国人配偶者がアメリカ国外にいる場合は、移民局がI-130請願書を認可した後、ナショナルビザセンターに申請を認可したことを報告し、米国大使館での面接までの間、ケースはナショナルビザセンターの管理下に置かれることになります。
ナショナルビザセンターでは、米国大使館用にケース番号を発行し、申請料ほか、移民ビザ申請書や扶養宣誓供述書、そしてパスポート、出生証明書、納税証明書、W-2などのサポート資料を申請者から受け取り、米国大使館での移民ビザの面接前に、書類審査を行います。なお、必要書類は、領事局電子申請センター(CESA)のウェブサイトを通してのオンライン提出となります。ナショナルビザセンターから特別な指示がない限り、郵送による書類は受け付けられません。書類審査が終わると、米国大使館での面接日の設定後、ナショナルビザセンターに提出した書類は、面接を受ける米国大使館に転送され、ケースの管轄は米国大使館に移行します。
ただし、ケースが移民局からナショナルビザセンターに移行した時点で、まだ「プライオリティー・デート」(移民ビザ申請における優先順位)が現行でない場合は、移民ビザの書類審査が可能になるまで、待ち時間が発生します。優先順位が近付くと、ナショナルビザセンターから書類の提出を開始するように連絡があります。プライオリティー・デートは毎月更新され、米国務省が発行している『ビザ・ブリテン』に最新情報が掲載されます。
また、ナショナルビザセンターにケースが移行し、その連絡を受けてから何らかの理由で1年以内に移民ビザ申請を開始しなかった場合、あるいは1度は開始したものの、ナショナルビザセンターとコンタクトを1年間取らなかった場合、ビザ申請を続ける意思があるかどうかを確認する連絡があります。これに回答しないと、登録がキャンセルされますので注意が必要です。諸事情ですぐに移民ビザ申請ができないものの、登録を維持したい場合には、1年に1度はナショナルビザセンターとコンタクトを取ることによって、このような問題は回避できます。
移民局のシアトル・オフィス最新情報グリーンカード申請のインタビューに関する方針の変更
シアトルに限らず、移民局のローカル・オフィスではパンデミックの影響もあり、審査の遅延が顕著です。シアトル・オフィスでは今年2月に予定されていたグリーンカード申請のインタビューのキャンセルが相次ぎました。その後、シアトル・オフィスは、インタビューがキャンセルされた申請の一部を、インタビューなしで認可しました。
2月の時点では、インタビュー免除がパイロット・プログラム的な扱いでなされていましたが、3月3日に公式な発表があり、シアトル・オフィスでは今後、家族関係に基づくグリーンカードの申請においては個々に判断したうえでインタビューを免除できるとしています。シアトル・オフィスは、このプログラムに参加できる移民局のローカル・オフィスのひとつに選ばれていますが、近隣のヤキマやポートランドは含まれていません。
なお、この方針変更により、移民局では健康診断書をI-485申請時に提出することを勧めています。従来であれば、健康診断書はインタビュー時に持参することも可能ですが、もし移民局がインタビューを免除し、その申請に健康診断書が提出されていない場合、RFEと呼ばれるさらなる書類の提出を要求します。そのため、健康診断書をI-485申請時に提出していないと、審査に遅延を生む可能性があるとしています。