「花衣」とはお花見に行く時に女性が着る晴れ着である。古くは「桜がさね」という襲(かさね)の色目を「花衣」の意で用いた。また元禄の頃、豪華な花見小袖が流行した。現在では花時に着る美服をさすが、「花衣」には往時の華やかな風情を思わせる風情がある。では例句を見てみよう。
花見から帰って疲れが残るなか、帯を一本一本解きながら着物をぬいでゆく。楽しかった時間、倦怠感、着物の絢爛さなど色々な情景がまつわる紐のように浮かんでくる名句である。
杉田久女(一八九〇〜一九六四)
鹿児島県出身の俳人。高浜虚子に師事。近代俳句における最初期の女性俳人。(参照:角川俳句大歳時記)
レニア吟社幹事 ひさを