ベルビュー美術館で開催中
Inspiring Beauty: 50 Years of Ebony Fashion Fair
〜インスパイアする美 エボニーのファッションフェア50年〜
取材・文・写真:大野真以
エボニーファッションフェア50年の歴史
Ebony(以下、エボニー)の過去50年間のファッションフェアの歴史を辿る回顧展『Inspiring Beauty: 50 Years of Ebony Fashion Fair(インスパイアする美、エボニーの50年間のファッションフェア)』がベルビュー美術館で開催されている。
エボニーは1945年にジョン・H・ジョンソン(John H. Johnson)によって創刊された、アフリカ系アメリカ人のためのファッション雑誌。創刊されてからから今まで、エボニーは世界の高級ファッションを黒人読者に発信し続けている。「エボニーファッションフェアは単なるファッションショーを超えるものである。(Ebony fashion fair was always more than a fashion show)」とまで言われ、それまでファッションと縁のなかったアフリカ系アメリカ人を、高級ファッションの世界へ導いたのだ。
5月19日、一般公開に先駆けてメディアツアーが行われた。作品の解説を務めたのは、同美術館のアート・クラフト・デザインディレクターのステファノ・カタラニ(Stefano Catalani)さんと、1960年頃の初期エボニーのトップモデルだったテリー・スプリンガー・ウォーカー(Terri Springer Walker)さん。ウォーカーさんの年齢を感じさせないオーラから、いかにエボニーファッションフェアが華やかな50年間を送ってきたのか感じ取ることができた。
初の黒人向けファッション
今回の展示は「50年間のアフリカ系アメリカ人の美、スタイル、権力の概念を覆したファッションの歴史の探求」というテーマに基づき、40着のアンサンブル、アクセサリー、写真、ビデオ、ポスターなどが展示された。その中で、多くのヨーロッパの高級ファッション店との取引を可能にすると同時に、ジョンソンが人種差別に打ち勝った話が伝えられている。
それまで黒人が着る服の色はバリエーションが少なく限られたものだったが、様々なカラフルな服を着ることができるようになったのもエボニーの影響だった。
会場には、エボニーファッションフェアで用いられたコレクションが展示されており、クリスチャン・ディオール、ジヴァンシー、イブサンローラン、クリスチャン・ラクロアなど海外の有名ブランドに加え、日本のモリハナエがデザインした、鶴が描かれた着物がモチーフの豪華なドレスも含まれている。ヴィヴィアン・ウエストウッドがデザインしたシルクのドレスは、彼女の特徴でもあるアヴァンギャルドな色使いが黒人モデルの肌の色を引き立て、ひときわ存在感を放っていた。これらの美しいコレクションの数々に記者陣は感嘆の声を上げていた。
黒人へ開かれたファッション界の扉
ファッションフェアの成功は、ディレクターを務めたユニス・ジョンソン(Eunice Johnson)の、黒人に焦点を当てた高級ファッションデザインを導入するという画期的な発想によってもたらされ、それは人種を超えて一般市民へと広がっていった。ユニス・ジョンソンは黒人モデル、デザイナー、消費者、全ての黒人へファッションの自由の扉を開いたのだった。
アフリカ系アメリカ人の社会進出に大きな革命を起こしたエボニー。同展を通してファッションのデザイン性、美しさだけでなく、それらが社会へどう影響をもたらしてきたのかを学べる。ファッションと聞くと、着て楽しむもの、見て楽しむものというイメージがあるが、それだけではなく人種問題の提起や社会を変化させる影響力もあると知り、ファッションの奥深さを実感。ファッションに興味がある人はもちろんだが、老若男女問わず多くの人に訪れてファッションのパワーを感じて欲しい。
同館では、2年ごとに行われるベルビュー美術館主催のコンテストで2014年度受賞者の工芸家セス・ローランド(Seth Rolland)の個展『Balance and Tension』も。
Ebony50周年記念展
『Inspiring Beauty: 50 Years of Ebony Fashion Fair 』
期間: ~8月14日
料金: 大人$12、学生・軍人・シニア$10、6歳以下無料
場所: Bellevue Arts Museum
510 Bellevue Way NE, Bellevue, WA 98004
詳細: www.bellevuearts.org