伊勢のおばちゃん あなたのお役割は?
「伊勢のおばちゃん」ことみやざきみわさんが、マヤのツォルキンと神道を融合した統計学である「十三導」を元に、人間関係、子育てから経営まで、様々なお悩みを解決します。
おいしく食べられる理由
農場にストレスは大敵。人が喜んでいると、家畜も作物も喜んで育つ。人の心も言葉も、全て関わりがあるもの。この世が美しく輪廻転生していくためにも、細やかな心を大切にしたいですね。
シアトルの皆さま、こんにちは。私はおいしい食べ物に目がなく、そうなると嗅覚が発達するのか、頭にある食いしん坊電波塔で引き寄せているのか、なかなかの逸品に出合うことが多いのです。そして、おいしい食べ物にはストーリーがあります。今回は、そんな中の「ブヒブヒ」話をしたいと思います。ブヒブヒ豚ちゃん。私のコトではありませんよ、コロナデブではありますが(このネタしつこい! 笑)。
あるコンペのアフターで食べた、おいしくて思わず雄叫びを上げたほどの豚しゃぶちゃん! それはコンペに参加していた佐々木農場の豚さんでした。オーナーの佐々木浩二さんにおいしさの秘訣を尋ねてみたのですが、ほかの農場と餌も変わらないし、大差はないと思うとの回答……。しかし、話に加わったJA全農の方が、こんな話をしてくれました。「仕事柄いろんな農場に行きますが、豚は人間が来ると騒いだり嫌がったりするものです。けれど、佐々木さんとこの豚ちゃんは、みんな喜んでブヒブヒ♡って寄って来るほどで、ストレスが全然ない育て方なのですよ」
なるほど、ノンストレスで健康な豚のお肉は、品質にまで差が出るらしい。そう聞くと確かに、佐々木さん自身、穏やかな顔相で人柄がにじみ出ています。その話を裏付けるかのように、その場でこんな話も出ました。「あぜ道1本を隔てただけの同じ地場の畑なのに、野菜のおいしさが右と左で異なっている農家は、実は違いがあって、おいしい野菜畑のほうは夫婦仲が良く、そうでないほうは夫婦で喧嘩ばかりしている」。野菜が会話を聞いて育っているから、というのが理由なのだとか。妙に納得した私でした。
千葉県に立地する佐々木農場ですが、もともと昭和の農家は肥料作りに豚を飼っていたという、驚きの時代背景があってのスタートだったそう。昭和46(1971)年にSPF(Specific Pathogen Free)認可を第1号に受けた農場で、農林省(現・農林水産省)からSPF実用化に向けた畜産試験場の研究を任された豚のブリーダーでした。SPFとは、簡単に言うと、衛生レベルの高い農場環境で飼育される「健康豚」のこと。野菜だって米だって健康なほうがおいしいに決まっている。ストレスがないと言うのも、もっともな理由だと思います。佐々木さんのように「タネ豚」を育てるブリーダーは、今やほとんどが商社のビジネスとなり、家族経営をする農場はここだけだそう。量産はできないけれど、だからこそ細やかな部分で応えられる。ストレスがないコトにおいては、これが大きい気がします。私たちは食の恵みとして豚をいただくわけですが、それまでに愛情深く育てられるコトは大切なのかもしれません。人間だっていつかは土に還るのと同じで、言葉も心も全てが循環し、未来につながっていく。
おいしい豚を育てる佐々木さんは、私の提唱する人間学「十三導」では9番の「風を起こす人」。人に元気を与え、応援旗を常に掲げている人らしく、「喜んでもらえないと意味がない」と、佐々木さんは言います。そこには、この豚を求めてわざわざ遠方から足を運ぶ人、おいしいと言ってくれる人を大切にしたいという熱い思いと誇りがあります。そう、まさに「ブリーダー・オタク」! これからもぜひ家族経営を守っていってください。