今から考える日本への永住帰国
現在はアメリカに住んでいるけれど、いつかは日本に戻りたい! そんなあなたに役立つ知識を、日本帰国支援のエキスパートが提供。
米国での現役生活を終え、老後に日本へ永住帰国を検討している人の中には、日本での身元保証人について少なからず疑問や不安を抱えていることがあるようです。今回はこの身元保証人について詳しく紹介しましょう。
身元保証人の役割
身元保証人とはその名の通り、ある人の身元を保証する人のことで、日本ではいくつかの場面で求められます。代表的なものとしては賃貸住宅を借りる(賃貸契約)、就職して雇用関係を結ぶ(雇用契約)、お金を借りる(金銭消費貸借契約※1)などの場面が挙げられます。そのほか、読者の皆さんに関連するものとして、米国籍取得者が日本へ永住帰国する場合も必要となります。対象となる場面によってその保証の範囲が決められますが、主な役割は緊急時の連絡先や債務保証です。
永住帰国の際に求められる身元保証人のケースと役割
リタイアした高齢者が日本へ帰国して生活する際、身元保証人が必要となるのは主に以下のケースが考えられます。
❶ 賃貸住宅への入居
身元保証人の主な役割は、家賃滞納時(場合によっては立替が発生)と死亡時(遺体や遺品の引き取り)の対応となります。賃貸住宅のオーナーは高齢者の入居をあまり歓迎していませんでしたが、少子高齢化により若い世代の利用者が減ってきた近年は、高齢者を受け入れる傾向にあるようです。ただし、身元保証人は引き続き求められます。身元保証人がいない場合に保証会社の利用を認めているところは多く、一般的にその物件と提携している業者が存在します。保証会社の利用を希望する場合、そのオーナーか仲介する不動産会社に問い合わせます。保証会社の利用料は月額家賃の1~1.5カ月分が相場のようです。
❷高齢者施設への入居
特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームなどに入居する際、身元保証人の主な役割は、入所(入院)・退所(退院)時の手続き(費用精算)、介護(ケア)プランの確認、死亡時の遺体・遺品引き取りとなります。引き受けてくれる人がいない場合、保証会社の利用を認めているところも多くあります。賃貸住宅同様、特定の保証会社と提携している場合がほとんどで、中には個々に希望する保証会社の利用を認める施設も見られます。
❸ 医療機関での入院
身元保証人の主な役割については、厚生労働省のガイドライン※2に規定されており、医療機関の多くは以下の内容を身元保証人に求めています。
① 緊急時の連絡先になること
② 入院計画書、治療方針を確認すること
③ 入院時に必要な物品を準備すること
④ 入院費等の支払いをすること
⑤ 退院時に引き受けること
⑥ (死亡時に)遺体・遺品を引き取ること・葬儀等を手配すること
身元保証人を引き受けてくれる人がいない場合は、民間の保証会社を利用することができます。保証会社によって保証対象、料金は異なります。
身元保証人を引き受けてくれる人がいない場合
通常は親、子、兄弟が身元保証人を引き受けるのが一般的です。ただ高齢者の場合、親や兄弟がすでに他界している、未婚者が増えつつある中で子どもがいない、またはいても海外在住のため引き受けられない、というケースが目立つようになりました。身元保証人がいない場合、一部を除き高齢者施設、医療機関を利用することはできませんが、そうした場合の選択肢のひとつとして民間の保証会社があります。
利用料は賃貸契約時、高齢者施設の入居契約時、医療機関利用時など、必要場面に応じて決めているところが多いようです。また高齢者向けの場合、死亡時の事務手続きまでカバーするプランも用意しています。
在留資格取得申請時の身元保証人(外国籍の場合)
米国籍取得者含め、外国人が在留資格を取得して日本に居住(住民登録)する際には身元保証人が必要となるので、併せて紹介します。在留資格の種類によって異なりますが、元日本人が通常、取得申請する「日本人の配偶者等」の在留資格では、日本国内に居住する親族や親しい知人が引き受けることが一般的です。
その役割は入管法で規定されていて、その外国人の日本滞在中の「滞在費用の支払い」、「帰国費用の支払い」、「法令の遵守」となっています。この記述だけを見ると、身元保証人が費用を負担しないといけないように思ってしまいますが、滞在費用、帰国費用は帰国者本人が通常負担しますので、基本的には「病気やけがをして収入がなくなるなど緊急時に身元保証人が援助してあげてください」というものです。しかも法的責任はないため、援助できなかったとしても法的に問題になることはありません。
今後、米国籍取得者が日本へ永住帰国する際に身元保証人を誰かに依頼する場合、その点をしっかりと説明することで、相手の疑問、不安解消に役立つでしょう。
※1:連帯保証人のケースが多い。連帯保証人は保証責任の内容が身元保証人とは異なる。
※2:厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」(www.mhlw.go.jp/content/000516181.pdf)