今から考える日本への永住帰国
現在はアメリカに住んでいるけれど、いつかは日本に戻りたい! そんなあなたに役立つ知識を、日本帰国支援のエキスパートが提供。
日本の健康保険制度は、アメリカの医療保険とは運用やルールが異なります。今回はその全体像が見えるように解説していきたいと思います。違いがわかりづらい方も多い介護保険制度については、次回に紹介します。
制度の概要と加入対象者
最大の特徴は国民全員が加入する「国民皆保険」であることです。もともと船員や公務員など労働者のための健康保険制度でしたが、昭和36年(1961年)に現在の国民健康保険制度が導入されました。
保険制度ですから、加入者が傷病、死亡、出産など不時の出費に備えて保険料を出し合い(会社員の場合は事業者も半額負担)、いざという時に医療サービスや金銭的サポートを受けるという保険の仕組みが適用されますが、その多くの財源を国が制度として拠出しています。医療保険は次の図のように3つの制度から構成され、年齢や職業によって適用する制度が異なります。
75歳未満の会社員やその家族は①健康保険制度、自営業者や学生、その家族は②国民健康保険制度による医療サービスを受けます。そして75歳以上の高齢者については一律に③後期高齢者医療制度による医療サービスを受けることになります。保険者(保険制度の運営者)は①が全国健康保険協会、健康保険組合、②が市区町村、国民健康保険組合、③が市区町村となっています。
医療費の一部自己負担額と保険料の支払い
皆さんが病院で受診・入院した場合、病院でかかった医療費のうち一定の額が健康保険から支払われ、残りの分を皆さん自身が支払います。この自分が負担する分を「一部負担金」と言いますが、その割合は次の表の通りです。
年齢 | 適用制度 | 一部負担金 |
75歳以上 | ③後期高齢者医療制度 | 1割※ |
70歳以上75歳未満 | ①健康保険制度 または ②国民健康保険制度 | 2割※ |
小学生以上70歳未満 | 3割 | |
小学生未満 | 2割※ |
※所得が一定以上の世帯の場合、3割負担
つまり、かかった医療費の7割から9割を国が負担します。また、大きな手術や難病のための特別治療など医療費が一部負担金でも高額となるケースでは、「高額療養費」という、通常の医療費とは別に国が医療費を負担する制度もあります。
こうした医療給付を受けるためには、毎月の保険料を支払わなければなりません。会社員向けの①健康保険制度では、給与額によって保険料が決定し、毎月の給与から保険料が天引きされる仕組みです。②国民健康保険制度や③後期高齢者医療制度では、地方自治体ごとに前年の所得によって保険料が設定されます。その支払いは、自分で納付するか、年金受給者は毎月の年金受給分から天引きにもできます。
②③の制度では、米国から日本に本帰国した場合の最初の年は、日本における前年の所得がありませんので、その保険料は低所得者扱いで安くなります。たとえば「夫:72歳、妻:68歳」のケースでは、米国から東京都内に転居した場合、夫婦2人分の合計保険料は次の通りです。2年目以降は前年の所得に応じて保険料が変わりますが、ここでは「夫:年金収入250万円/妻:年金収入75万円」と想定して算出しています。
■転入した年:約2万8,000円(月額:約2,300円)
■2年目:約17万9,000円(月額:約1万4,900円)
(備考)
・端数処理しているので目安としてください。
・支払いは月単位となります。
民間保険会社が提供する保険商品
公的医療保険ではありませんが、民間の保険会社が提供する保険商品について簡単に補足します。公的医療保険ではカバーできない一部負担金や、勤労者が病気やけがで働けず所得がなくなってしまう事態に備えて希望者が加入するものです。
「入院費5,000円/日」、「3大疾病保険」など、状況に応じて保障を行う商品が各種提供されているので、自分で必要と思うものを選びます。家族がいる方など、どうしても公的医療保険だけでは不安という場合は、民間の保険サービスに加入することでより高い保障を得ることができます。