今から考える日本への永住帰国
現在はアメリカに住んでいるけれど、いつかは日本に戻りたい! そんなあなたに役立つ知識を、日本帰国支援のエキスパートが提供。
読者の皆さんの多くは、日本がハンコ社会であることをご存じだと思います。実は2年ほど前から日本で脱ハンコ化が進んでいます。これは現在の河野太郎自民党広報本部長(当時は行政改革担当相)が、改革推進策として「脱ハンコ」の方針を打ち出したことによります。
かねてより日本文化の特徴のひとつであった印鑑制度は、その必要性について取り沙汰されていても、結局は大きな進展もなくそのままとなっていました。しかし、実行力のある河野氏が明言したことで脱ハンコへの動きが加速しました。
印鑑制度は、本帰国する人にもそうでない人にも、日本にある自分や親の資産管理、相続など将来発生するであろう場面で大きく関わってきます。ぜひ今回の記事を参考にしてください。
印鑑の種類
個人の場合、印鑑は以下の3つに分類できます。※1
1 実印
市区町村役場に登録した公的に認められる印鑑のことを言います。住民票のある市区町村役場に印鑑を登録することを印鑑登録と呼び、1人1個のみ可。この登録された印鑑が「実印」となります。登録により「印鑑証明書」を発行でき、この証明書があることで「間違いなく本人が実印を押印した書類」だと認められます。実際に使用されるケースとしては、金銭的な取り引きのある契約書などが挙げられ、下記はその具体例です。
•不動産の購入・売却・賃貸契約締結
•各種ローン契約締結
•自動車の購入・売却・譲渡
•遺産相続
•生命保険や損害保険などへの加入、保険金の受け取り
こうした場面では、実印と印鑑証明書によって本人確認を行うことになります。
2 銀行印
実印が市区町村役場で登録するのに対し、金融機関に届け出るのが「銀行印」です。銀行に預けたお金を下ろす人が預金者本人かどうかを銀行側が確認するためのもので、利用する金融機関にあらかじめ印鑑を届け出ておきます。口座(通帳)ごとに届出印を変えることもでき、1人複数個可となっています。なお、銀行のキャッシュカードによる一定額までの現金引き出し、オンラインバンキングでの取り引きは、届出印がなくても行えます。
3 認印
実印や銀行印が必要なとき以外に使用するのが、「認印」です。主に役所での手続きに利用されます。下記は一般的なケースです。
•出生届 •婚姻届・離婚届
•公的な届出書(転入届や転出届など) •住民票の申請
•国民健康保険、介護保険の手続き •戸籍謄抄本の請求
•各種社会保障関連の手続き •国民年金の手続き
•会社提出書類(扶養控除等申告書・雇用契約書・入社誓約書 など)
認印は1人複数個可。また、認印には「シャチハタ印」と呼ばれるものがありますが、これはインク補充タイプの印鑑で、シャチハタというのは実際の製造会社名から取ったものです。シャチハタ印は、社内の回覧印や郵便、宅配便などの受領印としての利用が一般的です。
脱ハンコ化が実現
日本の社会活動において、実印、銀行印はお金に関わる手続きや契約時の本人確認に欠かせないもので、引き続き使用されています。一方、認印は多くの場面で不要となりました。役所での手続きでもハンコが省略されるようになり、最初は半信半疑だった筆者も正直驚いています。
ただ、全てのケースに当てはまるわけではなく、一部の手続きや、本人ではなく代理人が手続きをする場合の委任状には認印が必要です。また、提出書類については(手書きによる)記名が求められることがあります。
海外在住者は?
前述の通り、実印は市区町村役場に登録するものですから、日本国内に住民票のない海外在住者は当然、印鑑登録、証明書の発行はできません。ただし、日本居住時に印鑑登録し、現在も住民票を日本に残していれば利用は可能です。
日本に住民票のない海外在住者が実印を必要とする取り引き(たとえば日本国内でのマンション購入など)を行う場合、サイン証明書(署名証明書=Signature Certificate)を利用します。サイン証明書は現地の日本領事館で発行してもらえますが、取り引きによっては公証人(Notary Public)発行のものでも対応可能となるケースがあります。
海外移住後も日本の銀行口座を保有している人は少なくないでしょう。日本の銀行では、通帳と銀行印が重要です。海外移住後は使用する機会がなくなるため、うっかり保管場所を忘れがちですが、加齢による認知症発症や不慮の事故で亡くなったケースでは、通帳、銀行印がないと家族が管理する際に手続きが面倒になるので、きちんと把握しておきましょう。※2
※1:法人の場合、会社印、代表社印、銀行印などがあります。
※2:通帳、銀行印を紛失した場合の対応については各金融機関へ個別に問い合せてください。
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