今から考える日本への永住帰国
現在はアメリカに住んでいるけれど、いつかは日本に戻りたい! そんなあなたに役立つ知識を、日本帰国支援のエキスパートが提供。
日本へ永住帰国する際に気になることのひとつに、税金にまつわる手続きが挙げられるのではないでしょうか。居住していた米国での申告義務は継続するのか、新たに居住する日本では米国の所得について申告する必要はあるのか、そういった日米の税務における疑問について解説します。
確定申告の対象となる期間と所得
確定申告とは、前年の1月から12月までの1年間に生じた所得に対する税金(所得税)などを計算し、IRS(米税務省)や国税庁(日本の国税局・税務署)に申告することです。日米いずれにおいても所得があれば原則として確定申告は必要です※1。どちらの国の税法も居住地(対象者)や所得の範囲を細かく規定していることから、その年の帰国日までの期間は米国だけ、それ以降の期間は日本だけで確定申告というように単純に分けることはできません。
確定申告の対象者は居住地による判断
ここから、ややわかりづらい話になるのですが、日米とも申告の対象者は「居住者」となっています。ただし、この解釈が日米で異なります。
米国の税法では米国内居住者のほか、米国外に居住する米国籍の方やグリーンカードを保有する永住者が対象とされます。これらの人々は日本帰国後も日米両国を含む世界中の所得についてIRSへの申告が必要です。その点では個人を基本に考える「属人的な解釈」と言えます。
一方、日本の税法では日本で生活している人が対象となります。よく「住民登録していれば(住民票があれば)対象となりますか?」という質問を受けますが、税法上は住民票の有無ではなく「生活の拠点があるかどうか」によって判断されます。その点では生活地を基本に考える「属地的な解釈」と言えます。
上記のことから、米国籍の方や永住者は日本帰国後も日米双方での申告が必要となります。米国籍を放棄して日本へ帰化した場合や、永住資格を放棄して米国居住者でなくなった場合は、その時点から米国外で発生した所得について米国で申告する必要はありません。なお、日米両国で納税した方は、日米租税条約に基づく外国税額控除制度の下、申告内容によって重複した税金の全部または一部が免除される場合があります。
確定申告の対象となる所得は発生地に依拠
次に申告すべき所得ですが、その発生や受け取りの場所によって対象は変わります。
米国側の税務では前述の通り、米国籍の方や永住者は「米国居住者」として、日本に居住していても米国内外で発生した所得について申告が必要です。帰国後、米国籍や永住資格を放棄した場合は米国外での所得は申告しなくて済みますが、米国内で発生した所得(米国内源泉所得)については引き続き米国での申告が求められます※2。
日本側の税務ですが、前述の通り、日本では属地的に解釈しますので、帰国後は米国籍の方、永住者問わず「日本居住者」になります。申告は日米両国内で発生した所得が対象です。米国籍(外国人)の場合、帰国後5年以内は、日本居住者であっても非永住者という区分に該当し※3、米国内源泉所得として米国金融機関にて受け取った所得については申告対象から外れます。
帰国後、日米で確定申告は必要?
以上の説明をまとめたものが上の図になります。帰国後、日米どちらで確定申告すべきかについては次の通りです。
•米国籍:帰国後も日米で申告は必要。ただし、帰国後5年以 内に限り、米国内源泉所得は日本で申告の必要なし
•永住者:帰国後も日米で申告は必要。永住資格を放棄した 場合は日本の確定申告のみとなるが、米国内源泉所 得は米国での申告が必要
申告手続き期間と窓口
日米とも1年分を翌年に確定申告します。米国であれば年明け後4月15日まで、日本であれば翌年2月15日から3月15日までが申告手続き期間となります。事情があって間に合わなければ遅らせることもできます(延滞税の加算あり)。日米で電子申請や郵送での申告が可能ですが、日本は全国にある国税局窓口(いわゆる税務署)に持参・提出する人が大半です。2021年は新型コロナの影響で日米共に期限が延長されました。アメリカは今年、4月18日(月)が期限となっています。
税金制度は年々改正され、所得税以外の税金(出国税、相続税など)もあり、複雑で理解しづらいものです。実際の手続きについて詳しく知りたい方は、会計士、税理士など日米双方の専門家にご相談ください。
※1:所得が一定額以下の場合、確定申告が免除される場合があります。
※2:こうしたケースに該当する株式譲渡益や各金融商品の配当金等は金融機関からの受け取り時に源泉徴収されます。
※3:正確には「日本の国籍を有しておらず、かつ過去10年以内において国内に住所を有していた期間の合計が5年以下の個人」となります。
※4:米国籍で帰国後、日本へ帰化した場合もこのケースに該当。
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