ワシントン州雇用安全局の発表によれば、3月の失業率はワシントン州で5.1%、シアトル/ベルビュー/エバレット都市圏で5.5%となり、それぞれ2月の3.8%と2.6%から大きく増加した。ワシントン州で失業率が5%を上回るのは、2016年11月から約3年半ぶりになる。同局は、4月はさらなる失業率を見込んでいるとしている。
一方で、こうした事態を踏まえて、米国連邦政府や州政府から多くの労働者支援策が発動されている。万一のために知っておきたい労働者支援をまとめた。
CARES法で失業手当の対象者や給付期間などが大幅拡大
トランプ大統領が3月27日に、2兆ドルという大規模予算でCoronavirus, Aid, Relief and Economic Security (CARES) 法に署名。同法により、失業手当の対象者や内容が拡充されている。
【対象者拡大】
通常は失業手当の対象にならない自営業者、フリーランス、ギグワーカーなどの個人事業主、また年間の労働時間が680時間に満たないパートタイム勤務者も、新型コロナウィルスによって失職した場合は給付対象に。また、新型コロナウィルスに感染したり感染した家族を看るために失職した場合、重症化リスクが高いために仕事を辞めざるを得ない場合、新型コロナウィルス感染拡大防止による学校閉鎖でチャイルドケアを失ったために失職した場合なども、失業手当の対象になる。
【給付期間の延長と週600㌦の追加給付】
失業手当の給付期間も延長され、26週間に13週間が追加され、最大39週間の給付が可能に。また、失業前の収入によって計算される通常の手当金額に加えて、毎週600㌦が加算されて給付される。給付条件の詳細や申請については、ワシントン州雇用安定局ウェブサイトから確認できる。
その他、通常の失業手当では待機期間となる1週間も免除されており、申請した州からの給付が可能になっている。
詳細:ワシントン州雇用安定局 https://esd.wa.gov/
ワシントン州雇用安定局によるシェアードワークとスタンバイ・プログラム
企業が一時的に従業員の労働時間を減らしたり解雇したりする場合に、従業員が他の仕事を探すことなく失業手当の給付が受けられるための特別プログラム。シェアードワーク・プログラムは、企業側がプログラムに登録することで、労働時間が減って減収した従業員が失業手当を受けられるようになる。対象となるのは、常勤従業員として雇用されていた従業員で、1~5割の労働時間削減が範囲。企業側は、2名以上の従業員登録が必要になる。
スタンバイ・プログラムは、企業側が12週間以内の一時的な解雇として再雇用の日程を事前に設定しておくことで、失業した従業員は新しい仕事を探す活動を報告する必要なく失業手当を受けられる。
詳細:
- シェアード・ワーク: https://esd.wa.gov/SharedWork
申し込み方法についてのページ:https://esd.wa.gov/SharedWork/apply
- スタンバイ・プログラム: https://esd.wa.gov/unemployment/temporary-layoffs
失業手当申請の際に、再雇用予定がある旨を記述することでプログラムが適用される
(追加情報)
【シェアード・ワークについて、雇用者に求められる要綱の詳細】
- 手書きのサインをしたプログラムの申請書を提出すること
- 手当を受けさせる従業員は常勤従業員として雇われていること
- 役員に手当を受給させないこと
- 給付金を受ける従業員の名前、ソーシャルセキュリティナンバーの他、雇用安全局が求める情報を開示すること
- 給付金を受ける従業員には通常業務の10%~50%程度の業務のみに減らさせること
- 給付金を受ける従業員とそうでない従業員どちらにも、通常業務時と同等の健康保険、退職給付金、病欠での有給や休暇などを従業員に与え、それを証明すること
- このプログラムでレイオフを免れる従業員1人1人が、皆イーブンに労働時間を削減されていることを証明すること
- 給付金を受ける従業員が加入している労働組合(collective bargaining agent)の契約も、本手当と並行して同時に有効であること
- 季節労働者のオフシーズン中には助成をしないことに合意をすること
- 本プログラムの利用期間中、要求される従業員の情報やレポートを雇用安全局に提供することに同意すること
- このプログラムでは、会社がプログラムに申請をしなかった場合レイオフをされていたかもしれない従業員の見込み人数に対して適用させること
- 雇用安全局は、雇用者に対して通常業務より業務量を可能な限り減らすように通知を出すことができ、出来ないならば理由の説明が求める
- 雇用者は、本プログラムの加入期間中は一貫して連邦政府と州の法律に則り義務を全うすることを証明すること
【シェアード・ワーク申請に際し、雇用者が留意すべき連邦政府とワシントン州の法律】
- ワシントン州に対しビジネスとして最低180日以上登録されていること
- ESD (Employment Security) ナンバーと、UBI (Unified Business Identifier) ナンバーの両方を所有していること。
- このプログラムに加入させる常勤従業員を最低でも2名登録する
- 失業保険税(unemployment taxes)を既に支払っているか、これから支払うかし後払い契約(deferred payment contract, DPC)を最新の状態にすること。
- 「支払い能力のない雇用主」リストに4半期連続で4年間継続して載っておらず要項を満たさない雇用主として評価されていないこと
- 事業免許税(franchise tax)の支払いを滞りなく行い企業としての要件を満たしており、ワシントン州departments of Labor & IndustriesやRevenue and Licensingに定められた州法を守り義務を履行することができること
- S. Internal Revenue Serviceの求める法令順守に則って、税金を納税する
- 他の州や地域が求める納税の要求にもこたえること
- 本プログラムに関わる従業員は、勤務時間ベースでお給料が支払われる事
*上記リストは、ワシントン州雇用安定局の以下リンク資料の一部を翻訳したものです:https://esdorchardstorage.blob.core.windows.net/esdwa/Default/ESDWAGOV/about-employees/shared-work/shared-work-employer-requirements.pdf
新型コロナウィルス感染に関連する病欠への給与支払いについての特別措置
ワシントン州では2018年から、雇用者が従業員に対して、40時間労働毎に1時間のペイド・シック・リーブ(有給病欠)を加算するように義務付けている。そのため、自身や家族が新型コロナウィルスに感染して自己隔離のために仕事を休む場合は、この規定内で有給の病欠を取ることができる。
また、3月18日にトランプ大統領が署名したThe Families First Coronavirus Response(FFCR)法によって、従業員500名未満の企業が、従業員の新型コロナウィルスに関連する病欠に対して給与支払いをした場合、その金額が税金控除の対象になっている。一方で、強制措置は取られないものの、従業員50名以上の企業は最大12週間に渡って、新型コロナウィルスに関連する病欠について通常給与の3分の2以上の給与を支払わなければならないとされている。
詳細:
ワシントン州の有給病欠について:https://lni.wa.gov/workers-rights/leave/paid-sick-leave/
FFCR法による有給病欠支払いに対する企業の所得税控除について:https://www.irs.gov/newsroom/covid-19-related-tax-credits-for-required-paid-leave-provided-by-small-and-midsize-businesses-faqs