みんなの広場
ソイソース読者からの寄稿コーナー
地獄で仏
土曜日の早朝。ハイウェイを走っていた時、途中から車の調子がおかしくなった。アクセルを踏んでも踏んでも加速が悪い。止まるんじゃないかとヒヤヒヤしながら何とか出口まで行きついた。信号で停止し、青になって発進し始めてすぐ、どんなにアクセルを踏んでも動かなくなった。後続車からクラクションは鳴らされるし、頭の中は真っ白。取りあえずハザードランプを点けると不意に腹が据わった。シフトレバーをニュートラルにし、ハンドブレーキを下して車を降り、車を手で押して路肩に寄せることにした。幸い一番右のレーンにいたので、路肩までは近い。しかし、車を押しながら進行方向を調整するのは難しい。四苦八苦しながら車を押していると、後から来た車に乗っていた私と同じくらいの年頃の女性が車を降りてきて、「私が車押してあげるから、ハンドルを取りなさい」と言って助けてくれた。土曜日の早朝、30代の女性が2人でうんうん車を押している様子を思い出すと、今でも笑いがこみあげてくるが、それにしても、見ず知らずの他人のために手を貸してくれた彼女には心から感謝している。(ともこ/カークランド)
映画『20 once again (重返20岁)』を見て
もう一度20歳に戻って青春をやり直すことができるとしたら……? 韓国で800万人を動員した『怪しい彼女』の中国リメイク版『20 once again (重返20岁)』がシアトルで公開された。主演は日本でも人気の台湾人俳優、チェン・ボーリン。さらに世界で活躍するアジア人アイドルグループEXOの元メンバー、ルハンが出演することで、公開前からファン達の間でかなり話題になっていた。実は、私もEXOファンの一人で、ずっと気になっていた作品だ。日本での公開は未定ということで半ば諦めかけていたのだが、幸運なことにシアトルで見られると知り、さっそく足を運んだ。
中国映画はほとんど見たことがなく、どんなものなのか想像がつかなかったのだが、「20歳のお婆さん」を演じるヤン・ズーシャンのコミカルな演技が笑いを誘い、スタントなしで挑んだというルハンの、自転車に乗って車の間を走り抜けるシーンは思わず手に汗を握らせられた。中国・天津で撮影された、どこか懐かしい街並みたち。テレサ・テンをお手本にした主人公(沈梦君)の可愛らしいレトロなファッションスタイル。ストーリーもさることながら、ノスタルジックな演出が美しい。観る側に、もう戻ることが出来ない青春時代を思い出させて、涙を誘われた。あまり期待していなかったのだが、文句なしに満足のいく作品だった。
先日、大学の「マスメディア」の授業で、アメリカの視点から見る中国映画という講義を受けた。近年、中国の映画市場は世界第2位の日本を抜いて急速に拡大しているそうだ。それに比例するようにハリウッド映画でのアジア人俳優の活躍が目立つようになった。もはやアメリカ国内でも中国産業の拡大の影響は避けられない。昨年、EXOが米ビルボード誌に「2014年注目アーティスト」として選出された件も然り、これからアジア・サブカルチャーに対する欧米圏の関心が高まっていくかもしれないと期待している。中国語と英語の字幕付き。AMCパシフィックシアター11にて公開中。(千穂/シアトル)