マイケルが舞台でよみがえる「MJ ザ・ミュージカル」
シアトル公演
取材・文:本田絢乃
史上最高のエンターテイナーと称された歌手、マイケル・ジャクソンさんの半生を描いた、ブロードウェイ話題の新作が初の全国ツアーで北米を巡回中。シアトルでは、12月7日から17日まで、パラマウント・シアターで上演されました。
2022年に初演を迎え、現在もニューヨークのニール・サイモン劇場で大ヒット上演中の「MJ ザ・ミュージカル」全国ツアーが2023年夏、シカゴで開幕。「トニー賞4冠に輝いた名作をぜひとも見ておきたい!」とチケットを確保し、シアトルでのオープニング・ナイトに臨んだ。
2009年に50歳の若さでこの世を去ったマイケルの40曲で構成される作品は、まさにジュークボックス・ミュージカル。1992年の「デンジャラス・ワールド・ツアー」のリハーサルから当日までの舞台裏を、架空の撮影クルーが密着取材するという設定だ。マイケルが昔を回想しながらアーティストとしての葛藤を語る様子や、リハーサル風景、過去の回想シーンがシームレスに織り交ぜられている。
回想シーンの幼少期、青年期を含め、3名の俳優がマイケル役を担う。メインとなる成人期を演じたのは、BIPOC俳優として初めてエヴァン・ハンセン役に起用され、歴史にその名を刻んだローマン・バンクスさんだ。声の抑揚や、話すスピード、仕草までを完コピし、マイケルのトレードマークだったムーンウォークやゼロ・グラビティが披露される場面では、あちこちから歓喜の声が上がる。
ショーの冒頭でいきなり始まるのは、「ビート・イット」。そして、ジャクソン5時代の「ABC」、白Tにスパンコール・ジャケットと手袋のお決まりコーデで登場する「ビリー・ジーン」、ダンサーを従え圧巻のパフォーマンスで魅了する「スムーズ・クリミナル」など、ヒット曲が流れるたび、客席は大喝采。中でも父親との複雑な関係が名曲「スリラー」によって表現されている終盤のシーンは、観客を引き込む秀逸な演出だった。
最後はカーテン・コールで終わりかと思いきや、キャスト全員で「ホワイト・オア・ブラック」を熱唱するサプライズ。観客も一緒になって歌い、踊り、盛り上がる熱い夜となった。