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バイト・オブ・シアトル限定! 青森県八戸市グルメをシアトルで堪能〜特別レポート

バイト・オブ・シアトル限定!
青森県八戸はちのへ 市グルメをシアトルで堪能

取材・文:加藤良子
地元ベンダー250店舗が出店し、開催3日間で約45万人が訪れる毎年恒例の「食」の一大イベント、バイト・オブ・シアトル。今年は、ウォーリングフォードの串料理店、シークレット・フォートと青森県八戸市が初コラボで大盛況となりました。当日の様子をレポートします。
©photo by Emilie Sheng

2016年と2017年に、全米でベスト・フード・フェスティバルとして選ばれたことも

八戸の特別メニューを販売
イベント会場となったシアトル・センターは、東京ドームおよそ6.4個分の広大な敷地にもかかわらず、取材当日は屋台がずらりと並び、来場者で道が埋め尽くされるほどの賑わいだった。八戸市とシークレット・フォートがコラボしたブースには赤い提灯が連なり、スタッフが着ていた黄緑のはっぴがひときわ目を引いた。大きくプリントされたバナーには「八戸、青森、日本」の文字が際立ち、昨今の日本ブームもあり思わず立ち止まる人が多くみられた。
©photo by Emilie Sheng
注文をする列と、商品を受け取る列。ブースには絶えず人が訪れていた
人気ラーメン店ヨロシクの姉妹店シークレット・フォートは、炭火焼ロースターでじっくり焼き上げた焼き鳥を提供する評判の日本食レストランだ。
当日は、青森県八戸市とのコラボから生まれた4種類の特別メニュー、お弁当とヨーグルトドリンク、チーズケーキ、チュロスが販売された。
©photo by Emilie Sheng
シアトルはシーフードが好きな人が多く、ホタテの試食も人気だった
八戸の洋菓子店アルパジョンが販売するチーズケーキ「朝の八甲田はっこうだ 」は人気が高く、取材に訪れたイベント2日目の正午にはすでに完売! 濃厚な味わいが楽しめる新郷しんごう 村ふるさと活性化公社の「飲むヨーグルト」も購入者が続出。チュロスは八戸の老舗あんこ屋のかねご製餡のあんこがトッピングされた贅沢な一品で、ほかのスイーツ同様に多くの人から注目を集め、取材中にも次々と購入されていた。お弁当には、八戸の水産加工会社から取り寄せたホタテとサバをふんだんに使用し、およそ350食用意していところ、3日間で完売したほどの人気ぶりだった。
イベント期間中、ブースにいたスタッフは当日の様子を見ながらより多くの人に喜んでもらえるよう工夫を重ねていったという。シーフードが苦手な人や、ホタテだけを希望する声があればその都度リクエストに応じたり、揚げたてのチュロスを提供するため、2日目以降はシークレット・フォートの協力のもと揚げる頻度を増やしたりするなど、臨機応変なもてなしは、3日間限定の催しとは思えないチームワークだった。
青森県八戸市について
県の南東部に位置する八戸市は、太平洋に面した人口約22万人の都市で、東京から東北新幹線で約2時間45分、バスと飛行機を乗り継げば三沢空港を利用して約2時間20分で行くことができる。雪深いイメージだが降雪量は比較的少なく、市街地に10cm以上積もる日は珍しいといわれる。サバやイワシの漁獲量が多く、イカの水揚げ量は日本一を誇る。百貨店やショッピングモールのある市街地から車で1時間以内の場所に天然芝生を有する種差たねさし 海岸などがあり、美しい自然に触れられるところが魅力だ。近年、移住先として注目を集めており、ニュース週刊誌の「AERA」やオンライン不動産「イエプラ」が発信する情報メディア「Rooch(ルーチ)」でも都会と田舎が融合する街として紹介された。

当日の体験談を聞きました

出店を手がけたエンコンパス・ジャパン株式会社の松本康樹社長と、バイト・オブ・シアトルに訪れていた青森県八戸市の老舗店、かねご製餡株式会社の中居林達也代表のお2人に話を伺いました。

▪️エンコンパス・ジャパン株式会社 松本康樹社長

©photo by Emilie Sheng

2021年にカークランドで設立、営業や試食などのテストマーケティングを通し、日本の食や雑貨をアメリカに進出させる事業支援を行うエンコンパス・ジャパン株式会社。

青森県と書かれたはっぴを着て、自らメニューの説明をする松本社長 ▶︎

社長の松本さんは、長年、アメリカのスタートアップ企業のソフトウェアを日本で販売する事業支援に携わってきた。パソコンの歴史の黎明期には米国マイクロソフト社の社員として日本と韓国支社の立ち上げを牽引。山田平安堂の漆食器や五島列島の鮮魚を卸すほか、対馬のプロモーションのため、ワシントン州にあるゲーム製作会社との交渉を担うなど日本とアメリカの架け橋となるさまざまなプロジェクトを行なっている。

事業支援をする上で何よりも大切なのは「お客さまの声や意見に耳を傾け常に変化を生むこと。バイト・オブ・シアトルではお客さまのリアクションが見え、発見と学びが多く、日本食のテスト販売を行う最適な場だった」と話す。本イベントに向け、マーケティングだけではなく食材の輸入手配からブースのセッティング、接客まで幅広く対応した。初めての参加で挑戦が求められる場面もあったが、八戸市とシークレット・フォートの出展が無事に成功しホッとしたという。

「シアトルは大手IT企業が多数あることで全米や全世界から人が集まり、飲食店でお金を使ってくれる人が多い。日本食の人気も高く、テストマーケティングに恵まれた条件がそろっている。これからも日本の良いものをもっとアメリカに広められるように支援ができれば」と語ってくれた。

▪️かねご製餡株式会社 中居林達也代表

かねご製餡株式会社は1968年に創業し、幅広い顧客を対象にあん類の製造、菓子の販売を行っている。取り扱う小豆の産地はさまざまだが、豆の風味がしっかりと感じられるカナダ産は北海道産に次いで使用することが多く、軟水で柔らかく炊き、優しい味わいのあん製品を製造している。オリジナルブランドの「匠あんこ堂」では「ショコラ羊羹・フロマージュ羊羹」というドライフルーツやナッツ、オレンジピールや桜葉入りの目新しい一口サイズの羊羹を6種類販売。ほかにも子どもと一緒に和菓子を作れる「子どもねりきり」セットなど多様な商品を取り扱う。

©photo by Emilie Sheng

◀︎ イベント当日は、中居林代表も自ら販売を行った

日本とは味の好みや認識が異なるアメリカでは、どのようなアプローチができるか探りたいと話す中居林さん。イベント当日は、ブースに訪れた客にあんこの説明をすると「小豆でできているならヘルシーだね!」と言われることが多く、健康志向の高さを感じたと話す。そこで、岩手大学と共同研究で開発・特許を取得した砂糖を使わないあんこが使えないかと考えた。また白餡がベースのお菓子であれば淡白で主張が少なく、アメリカでも受け入れられやすいだろう。

「あんこの扱い方は、必ずしも日本と同じでなくても良いと思います。アメリカならではのあんこがあればいい。いつか小豆のことをもっと知ってもらい、生活の中にあんこが登場するようになったら、ちょっとかっこいいかな」と今後のビジョンを語る。実際に現地の空気を感じいろいろな人と出会うと、新たな商売の発想が生まれてくると言う。「もっとシアトルのことを知り、情報を集めながら、どのような商品を供給できるか考えていきたい」とも話してくれた。