アカデミー賞外国語映画賞を受賞した2009年の同名アルゼンチン映画のリメイクで、ジュリア・ロバーツとニコール・キッドマンの初共演で注目を集めている犯罪スリラーだ。
FBI捜査官のジェス(ロバーツ)の最愛の娘が無残な遺体で発見された。ショックで呆然となるジェスに対して、犯人逮捕を約束する同僚レイ(キウェテル・イジョフォー)。彼は恋愛感情を抱くエリートの地方検事クレア(ニコール・キッドマン)と共に容疑者を特定するが、逮捕には至らなかった。そして13年後、FBIを辞めたレイが犯人を見つけたと言って、クレアとジェスの前に現れる。
主人公は執念の男レイで、彼は13年後もクレアへの感情を色あせずに持ち続けている。友への信義と恋愛という二つの強い感情に突き動かされる男の物語で、大枠ではオリジナルに近いが、本作では被害者家族でもあるジェスの物語が膨らんでいる。そのためオリジナルで貫かれていた犯罪捜査とロマンスの分けがたい緊張感と悲しみが希薄になってしまい散漫な印象。やはりハリウッドのリメイクはダメだな、と再確認した次第だ。
脚本/監督は『ニュースの天才』や『消されたヘッドライン』など政治スリラーの脚本/監督を手がけてきたビリー・レイ。ハリウッドの脚本家として第一線で書いてきた人だが、この脚本には首を捻ってしまった。犯人が釈放された理由があまりに不合理なのだ。たとえ時代設定が911直後で、テロの脅威が吹き荒れていた(現在もまた似たような状況になっているが)とは言え、ご都合主義感は否めない。現実感のある物語なのでこの小さな綻びは致命的で、衝撃的なエンディングの説得力にも影響が出ていたように思う。これはオリジナルにはなかったことだ。
とは言え見どころがないわけではない。共演場面は多くはないが、ロバーツとキッドマンが登場する場面には、互いに一歩も引けを取りたくないというライバル意識が感じられ、それが画面にしっかり映し出されている。美貌や親しみやすさで知られる二人だが、ベテラン俳優としての自負と本領を発揮する競演として見応えがあった。ちなみにキッドマンに共演の声をかけたのはロバーツ。好敵手こそが自分を高めてくれるということなのだろう。
上映時間:1時間51分。全米のシネコンで上映中。
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