6月27日、関東地方はそれまで2週間ほど雨もほとんど降らずに梅雨が明けてしまった。暑い。東京都心は1週間以上連続の猛暑日。朝8時前から華氏98度(摂氏37度)。節電の要請もあり、クーラーは控えている。45年ぶりの「日本の真夏、懐かしい!」というノリで、どうせ暑いのなら、汗だくで庭仕事をしてしまおう! 去年全滅させたと思っていた竹が出てきているので、ほじくり返して、朝から冷水シャワーの気持ちのいいこと! 扇風機の前に座ると、子どもの頃、姉妹で風の取りっこしたことを思い出す。扇風機に向かって、「ああーっ」と大声で叫びっこ。姉妹3人で誰の声がいちばん響くかとか、たわいもない遊びが懐かしい。
昭和中期はクーラーなんて一般家庭には存在しなかった。冷蔵庫も木でできたドアが2つ、上の冷凍用と下の冷蔵用に分かれていて、リヤカーで大きな氷を積んだおじさんが、日本橋の家の前を通り届けてくれた。大きなのこぎりでジャリジャリ言わせながら、冷凍庫のサイズに切ってくれるのを傍で見ている子どもの私たち。たまに飛んでくる氷の飛沫。傍にいるだけでも涼しい。家は窓だらけで、冬は寒いけれど、夏は風が入ってくる。
「ああ、いい風だぁ!」
と、デカパンに上は裸、首には白い濡らしたタオルをかけて微笑む若き父。懐かしい昭和の夏。中学生になると、
「暑い!」
と文句を言い、
「夏が暑いのは当たり前だ!」
と反論を許されず、しょうがなく受け入れていた。小学校と違い中学からは夏の制服が白の長袖。暑いんだわ。
その頃引っ越した目黒の家も窓だらけ。45年ぶりの日本の夏に亡き父の思い出を重ねて、しのんでいる。
と、目黒区役所からのアナウンスが入る。「光化学スモッグが発生しました。窓を閉めて外出を避けてください!」
外は37度。冷房なしにはきついなぁ。いつまで? 解除のアナウンスが入るのかしら?
夕方になり、外には少し青空も見え、庭の木々がそよ風にサワサワ揺れている。5時前に区役所に電話してみた。
「普通は解除の連絡をするのですが、じきに閉館になってしまいますので、今日はしないと思います」
「クーラーのない高齢者はどうするんでしょうね?」
「あ、それなら窓を開けてください。熱中症のほうが心配ですから」
そろそろジーンジーンと、アブラゼミが一斉に鳴き出してくる頃である。