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メイドインジャパン〜晴歌雨聴ニッポンの歌をさがしてVol.27

晴歌雨聴 ~ニッポンの歌をさがして Vol.27

日本のポピュラーカルチャー、特に1960-70年代の音楽について研究する坂元小夜さんが、日本歌謡曲の世界を案内します。

第27回 メイドインジャパン

私はロサンゼルスの大学院で70年代くらいまでの演歌、歌謡曲を研究しているせいか、日本の最新曲には少し疎い傾向も。逆に、アメリカなど日本国外のオーディエンスの評判を通して日本のアーティストの活躍を知る、ということがたまにあります。

たとえば、BAND-MAID(バンドメイド)は2013 年に結成された女性 5 人組のロックバンドですが、その海外での人気ぶりを知ったのは最近のこと。フェミニンなメイドの衣装とは裏腹に、ハードロックを全面に打ち出した重厚なパフォーマンスが高い評価を得ています。

外見とパフォーマンスのギャップが海外で注目されたパターンは、2010 年に結成されたメタルダンスユニット、BABY METAL(ベビーメタル)にも見られます。どちらもそれぞれ、メイドとKawaiiファッションという女性性を強調した衣装をまとい、そのイメージからは想像が付きにくいハードロックとメタルという音楽ジャンルを選択しています。メイドとkawaii は海外で日本特有のポップカルチャーとして知られており、そのテーマ性も海外のオーディエンスに注目されたのでしょう。

さて、BAND-MAIDに関して気になるのはやはり、なぜ「メイド」なのか、というところです。もし彼女たちがもともとは音楽性を追求していたロックバンドで、「売れるために」メイドの衣装を選んだとしたら? 音楽業界では、プロデューサーなどがアーティストのイメージを戦略的に作ることは珍しくありません。ですが、BAND-MAIDの場合は、ツインボーカルのひとりが秋葉原のメイド喫茶で実際にアルバイトをしていて、「メイド」ありきでバンド結成を発案し、ほかのメンバーを募ったとのことです。

その時点で海外への進出は想定していたようで、2014 年に発売されたデビューアルバムのタイトルは「MAID IN JAPAN(メイドインジャパン)」。そして2018 年に発売された5 枚目のアルバムのタイトルは、世界征服という意味の「WORLD DOMINATAION(ワールドドミネーション)」です。2019 年にはBAND-MAID の「公式ライバル」として、BAND-MAIKO 名義でのミニアルバムも発表。舞妓とくれば、これまた外国人も知る日本文化のひとつですね。

BAND-MAIDは約 2 年ぶりのワールド・ツアーを開始し、10月12日(水)にはシアトルのネプチューン・シアターでも公演予定です。

横浜生まれ東京育ち。大学院進学のために2015年に渡米。2020年よりロサンゼルス在住。南カリフォルニア大学大学院の博士課程にて日本の戦後ポピュラー文化を研究。歌謡曲と任侠映画をこよなく愛する。