久しぶりの本格的なSF映画の登場だ。監督は、「エクス・マキナ」(2015)のオリジナル脚本と初監督で一躍注目を浴びたアレックス・ガーランド。彼の監督2作目で、原作はジェフ・ヴァンダミア著『サザーン・リーチ』3部作の1作目『全滅領域』だ。
元陸軍兵士で、大学で生物学を教えるレナ(ナタリー・ポートマン)の元に、任務で出征以来、1年も行方不明だった夫のケイン(オスカー・アイザック)が帰って来る。だが様子が変な上に血を吐いて倒れ、その後ふたりは拉致される。未知の施設で目を覚ましたレナは、そこが軍の監視施設、サザーン・リーチであることを知る。軍が監視するのは、宇宙からの飛行物が衝突して出現した謎の領域<エリアX>。「シマ―」と呼ばれる光に包まれた領域で、ケインは内部に探索に行き全滅した隊の、唯一の生き残りだったのだ。
ここまではほんの出だしで、この後、レナと4人の学者らが武装して<エリアX>を探索する方向へと物語が発展していく。異様な美しさを持つエリアの様子と想定外の出来事の数々が、サスペンスフルに、ときにホラー風に描かれていく。
探索隊5人は全て女性だが、女性であることに大きな意味はない。昨今のSF映画では女性や非白人俳優が主要な役割を演じて、性と人種の多様性を意識していることが感じられるが、本作はさらに未来的で、たまたま専門家を集めたら全て女性だったという設定。それぞれに、この探索に参加する理由を持ち、とりわけレナは夫の不在中に不倫したことを悔いながら、意識の戻らない夫に何が起きたのかを探ろうと学者・兵士としての能力をフル回転させる。しかし、「シマ―」はあらゆる生態系を変容させる。その影響が隊員にも現れ始めて、物語はさらにSF的な謎を深めていく。
<エリアX>内の描写が秀逸だ。鹿の角に花が咲く幻想性と突然変異した動物たちの凶暴性との対比が「シマ―」の得体の知れなさを際立たせている。果たして、宇宙からのメッセージは何なのか、何が目的なのか。最後まで目が離せない緊張感が続いた。配給権を持つParamount Picturesは、本作がやや難解なので変更を求めたが、監督らはこれに応じなかったために、
配給権をNetflixに売却。米国内では映画館上映があるものの、他国ではNetflixでの視聴のみとなる。アメリカにいる筆者は映画館の大画面で本作を鑑賞でき、その幸運を思った。こういう映画こそ、映画館で見るべきなのだ。
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