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Deadpool & Wolverine(邦題『デッドプール&ウルヴァリン』)〜注目の新作ムービー

注目の新作ムービー

真逆キャラで大ヒット


Deadpool & Wolverine
(邦題『デッドプール&ウルヴァリン』)

2024年、全米の映画ファンが最も期待する作品第1位がこの『デッドプール』シリーズの第3作目だ。R指定のスーパーヒーロー映画として大ヒットを記録したシリーズが、ついにX-MENシリーズで絶大な人気を誇る「ウルヴァリン」とのコラボレーションを果たした。別シリーズで活躍してきた二人のキャラクターが同じ画面に登場するという設定には、まずマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の独特な世界観を理解する必要があるかもしれない。2018年の『デッドプール2』から6年、しかも死んだはずのウルヴァリンの復活はファン待望の展開。加えておしゃべりなデッドプールと寡黙なウルヴァリンという真逆のキャラクター同士が繰り広げるミスマッチの妙で大ヒットを続けている。

前作で時間軸を移動して最愛のヴァネッサの命を救ったものの、結局フラれてしまったウェイド/デッドプール(ライアン・レイノルズ)。現在は、アース10005のタイムラインで中古車販売をしていた。そんな彼が、誕生日の夜、突如、時間変異取締局(TVA)のエージェントに連れ去られる。エージェントのパラドックス(マシュー・マクファディン)によれば、ローガン/ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)の死以来、アース10005が消滅の危機に瀕しているという。ウェイドは、パラドックスの持つタイム・パッドを奪い、マルチバース(別のタイムライン)でまだ生きているローガンを探し始める。アルコール依存症のローガンを説得しTVAに連れ帰るが、二人ともパラドックスの陰謀により虚無の世界(ヴォイド)に送られしまう。ヴォイドはX-MENのリーダーだったエグゼビアの双子の妹カサンドラ(エマ・コリン)によって支配され、彼女はマルチバース全体を消滅させ、ヴォイドだけの世界に統一するという野望を抱いていた。

その後も、性格の異なる主人公二人が渋々協力しあって、アース10005を救うアクション重視の展開が続く。下品なジョークやおしゃべりを連発するデッドプールと彼に辟易しながらも協力する渋い男ウルヴァリンとの対比が実におかしい。冒頭から、ウェイドが時間軸を移動してアベンジャーズに参加しようと面接を受けるが断られたり、ヴォイドがマッドマックスのパクリだったりと笑いのツボが満載。さらに、ヴォイドに閉じ込められたスーパーヒーローたちのカメオ出演も数えきれないほどで、デッドプールらしい畳み込むような笑いの嵐が観客を沸かせた。

前作までは20世紀フォックス映画によって製作されていたが、2019年にウォルト・ディズニー・カンパニーに買収され、今作からはディズニー製作となっており、異端児デッドプールもMCUに組み込まれた。

冒頭シーンでは、20世紀フォックスのロゴが砂に埋もれているという『猿の惑星』のパロディシーンもあり、何でもかんでも笑いのネタにしてしまう軽妙なデッドプールらしさが際立っている。これは主演のライアン・レイノルズが製作・脚本にも関わっているからかもしれない。

スーパーヒーローものが飽きられている今、主人公自身がスーパーヒーローのあり得ないばかばかしさを揶揄したり、映画という架空の世界にシビアな現実を取り込んで笑いにする旺盛さが、観客目線に合致した。そういう意味では、デッドプールがスーパーヒーローものを消滅させるかもしれない? と思ってしまった。

Deadpool & Wolverine
(邦題『デッドプール&
ウルヴァリン』)

写真クレジット:ウォルト・ディズニー・
スタジオ・モーション・ピクチャーズ上映時間:2時間7分シアトル周辺ではシネコン
などで、標準、3Dにて上映中。

土井 ゆみ
映画ライター。2013年にハワイに移住。映画館が2つしかない田舎暮らしなので、映画はオンライン視聴が多く、ありがたいような、寂しいような心境。写生グループに参加し、うねる波や大きな空と雲、雄大な山をスケッチする日々にハワイの醍醐味を味わっている。