映画史上最長のスパイアクション・シリーズ『007』の第24作目にして、ダニエル・クレイグを主演に据えたリブート・シリーズの4作目だ。
ボンドは生家スカイフォールで死亡した前任M(ジュディ・デンチ)の遺言に従い、ある男を探すためメキシコで単独行動をしていた。同じ頃ロンドンでは、国家安全保障局の新任トップ、C(アンドリュー・スコット)が膨大な監視システムを使った組織再編を始め、M16のM(レイフ・ファインズ)は、ボンドの暴走などを理由に00部門閉鎖の危機に直面していた。帰国したボンドはMから自宅待機を命じられるが、Q(ベン・ウィショー)とMの秘書マネーペニー(ナオミ・ハリス)の密かな助けを得て、ローマへと向かい、そこで探していた男スペクターのトップ、ブロフェルド(クリストフ・ヴァルツ)を見つける。
ファンならブロフェルドはお馴染み、初期の『ロシアより愛をこめて』など7作に登場した世界征服を狙う犯罪組織スペクターのトップ、ボンドの宿敵である。『オースティン・パワーズ』のDr. イーブルは彼がモデルで、パロディ化されるほど荒唐無稽な人物でもあり、ブロフェルドの登場によって新シリーズの中では最も旧作『007』に近い印象の作品になっている。
前作『スカイフォール』はイアン・フレミングの原作から離れたオリジナル脚本で作られ、ボンドの生い立ちやMとの関係などドラマとしての面白さが魅力となって大ヒットしたと思うが、本作では再びスピディーなアクションとカー(アストンマーティンDB10、ジャガーC-X75)チェイス、美女(レア・セドゥ、モニカ・ベルッチ)で見せるボンドに立ち戻っており、これが失望につながった。
どんな美女もボンドにコロリ、乱闘をしていたかと思うと次のシーンではタキシード姿、どこからともなく飛行機に乗って現れる、という無茶苦茶さはボンド映画の決まり事だが、なぜか非現実性が気になった。それは前作がボンド映画としては上出来だったから出てきた当然の不満だ。監督は前作と同じサム・メンデス、脚本も前作を書いたジョン・ローガンなので人間的ボンド像が描かれていた前作を継承する内容を期待していたのだが……。車と美女が同列であるような旧態依然としたボンド映画ならもう見なくても良いという気にさせられた。
蛇足だがネットで本作について調べていたら、ベルッチがボンドガールとしては最年長であったという記事が何度も出てきた。こういうことがニュースになるということ自体もゲンナリである。
上映時間:2時間28分 シアトルはシネコン等で上映中。
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