韓国系の友人、ジェームズの帰郷を知り、私も日本に行きがてら、韓国旅行へ出かけることにした。カナダで彼と知り合ったことがきっかけで、韓国に対する印象がどんどん良くなっており、この訪問を機に、認識を検証できればと考えた。
宿は、金浦(キンポ)国際空港から地下鉄で1時間弱、ソウルのダウンタウンに程近い仁寺洞エリアに取った。付近には商店・食堂街が広がり、地下鉄で東南両大門付近を回れるので、観光に便利な場所だ。宿の近くのタプコル公園は、1919年3月1日、日本統治時代に起こった日本からの朝鮮独立運動「三・一運動」の発祥地。李氏朝鮮王朝の王室の護寺だった円覚寺址十層石塔が巨大なガラス越しに保存展示され、パゴダ公園とも呼ばれる。各種の反対運動は今でもソウルで日常的に見られるとのことだ。早速、日韓関係の悲しい過去の残骸に接することになった。街に出ると、多くの土産物屋が並び、伝統的な青磁の中にモダンな紅色の磁器が新たに目に入る。何度も買って帰りたい衝動に駆られるも、荷物を考えて思いとどまる。
ソウルで3泊後、新幹線で移動し、かつて新羅王国の都だった慶州へ。観光バスの1日ツアーに参加したが、ガイド女史が韓国語で楽しげに話す説明がわからない。ジェームズが言うには「この寺の像は日本兵が盗んだ。ここにあった青磁も日本兵が持って行った」など、寓話を交えて何度も説明していたそうだ。これが真実かはわからないが、統治下にあった韓国から日本人が歴史的文化財を持ち去ったことはおそらくあるのだろう。ジェームズに「韓国人は日本の統治を永遠に責め続けるのか」と問うと、「若い人は徐々に関心がなくなっている。歴史の本には残っても、反日感情は時と共に薄れていくだろう」との返答を得た。韓国に来て日本人としての罪悪感がふくらんでいたが、これを聞いて両国の前向きな歩みを期待できると感じた。
今度は慶州からバスで1時間走り、漁港の釜山に着く。ここは気候が温暖で海水浴場も有名。ソウルに次ぐ大都会ではあるが、人々の生活はもっとゆっくりだ。あちこちに魚市場があり、最大のチャガルチ市場には大きなカニやアワビなど、ぜいたくな海産物ほか、見たこともない魚がずらりと並び、その豊富さに驚く。豪勢にタラバガニを買い、市場内のレストランで賞味した。
韓国旅行中は日本と似たものに出くわすたびに、ジェー ムズと、「コリア・ファースト」、「ジャパン・ファースト」と冗談がてらにその発祥地について論じ合った。古代の寺の建築様式を見ても、レストランで出される黄色いたくわんの漬物を見ても、日韓両国の歴史・文化が酷似していることは間違いない。昔からお互いに影響され合ってきたのは明白である。
釜山では有名な大浴場に行って、おいしいケーキも食べた。悲しい過去を知る場面が多々あって心が痛んだが、そんな中でも、ジェームズのおかげで楽しい1週間を過ごすことができた。
正解:(1)京都清水寺仁王門(室町時代後期建立)(2)慶州国立公園内に再建された新羅時代のパビリオン(3)成田山新勝寺三重塔(1712年建立)
[カナダで再出発]